表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊と魔法の在る生活  作者: 桐無
少年期
24/47

24話 手荷物と空の帰路

 冷蔵庫の作成依頼をした日から2日が経過した。この2日間は、完成した冷蔵庫の可能性を考えて過ごしていた気がする。

冷たい飲み物がいつでも飲めるようになるし、氷も作る事が出来るので、簡易なシャーベットくらいなら作り方も分かるし、きっと他にも色々なことに使えるだろう。


 なにはともあれ、このままでは取らぬ狸のなんとやらなので、まずは冷蔵庫を受け取りに行く必要がある。そのために今日もまた俺は、馬上で揺られている。

「今日は、完成した魔具を受け取りに行くんだよね」

「えぇ、今日は受け取りだけです。想像通りの物が出来ているといいんですけど」

「妙に熱心だったみたいだけど、何を作っていたんだい?」

ちょっとしたサプライズの意図もあって、まだ今のところは家族の誰にも詳細を話していない。

「ふふふ、それは帰ってからのお楽しみです。それでは、今日は魔具の受け取りのみですから、用事が済んだら先に帰っていますね」

「リーサの事だから心配はないと思うけれど、本当に1人でも帰れる? 必要なら馬車を使ってもいいからね」

「えぇ、荷物が多くなるようなら、馬車で帰るつもりです」

今回も魔具細工屋を初回に訪れた時と同様に、店の前まで送って貰い、そこで父と別れた。


「おはようございまーす」

もう3度目の訪問になるので、知り合いの家に来たように挨拶をしつつ店内に足を踏み入れる。あまり大きくはない部屋の中を見渡しても、人影は全くなかった。しかし、営業中の看板は掛かっていたので、お爺さんは別の部屋にいるのだろう。

「おはよう、お嬢ちゃん。待っておったよ」

店の奥からお爺さんの声が聞こえてきたので、そちらに目を向けた。手には果実酒の瓶が4本くらい収まりそうなサイズの箱を持っている。

「ほら、これが依頼の品じゃよ」

「ありがとうございます、ちょっと確認してみてもいいですか?」

「あぁ、そうするといい。お嬢ちゃんのイメージと違ったら困るからの」


 お爺さんは、俺の前に箱を置いてくれた。材質は石だろうか、よく磨かれており、表面は光沢を放っている。俺の腰あたりまでの高さがあり、持ち上げようとしてみると手にズシリときた。しかし中が空洞になっているのか、このままでも持ち上げられない重さではなかった。それでも、あまり長時間これを持って歩くことは出来ないだろう。

今回は試作のため小型の物を依頼しているが、それでも中に物を入れることを考えると、そんなにサイズを小さくは出来ない。今後本格的な物を作るとしたら、こんなサイズでは済まなくなる。


 箱の表面を見ると左側に取っ手があり、中央部分は俺の拳より少し大きいくらいに窪んだ箇所がある。そこには畜魔石が横並びに2個はめ込んであり、その石の間から少し下の場所に、L字の棒が取り付けられていた。棒の短い1辺が箱の表面に差し込まれており、引っ張っても抜けないようになっており、現在は右の石にもたれ掛かっていた。

「この棒を反対の石に当たるようにしてやれば、冷気の温度を変えられるようにしてある」

お爺さんが、表面に取り付けられた棒を指差し、そう説明してくれた。なるほど、箱の外から温度が変更出来る仕組みになっているのか。

 表面の観察を終えたので、今度は取っ手を掴んで開いてみると、中から冷たい空気が溢れ出てきた。これは、確かに俺の記憶の中にある冷蔵庫を開けた時と同じ感覚だ。

1つ目の石は水が凍らない程度の冷気魔術、2つ目のものは水が凍る温度の魔術を指定しているので、棒の傾きを変えることで冷凍庫に早変わりすることになる。

「ただ1つ難点があっての、温度が低い方の石は消費が激しくて、使い続けると半日くらいで魔力切れになってしまうんじゃ」

「なるほど……やっぱり、魔力の消費が多すぎるんですね。今回は私が自分で充填しますので大丈夫ですけれど」

毎回充填する必要があるというのは、ちょっと不便な気がする。いずれは石の取り替えではなく、両方とも付けた物を置きっぱなしにしたい。

「ふむ、どうやら完全に満足というわけでもなさそうじゃな」

考えていることを見抜かれたのか、お爺さんがそんな事を言ってきたので、俺は素直に今後の予定を伝えることにした。

「今はもちろん、これで満足はしています。ですけど、ゆくゆくはもう少し大型にして、温度の低い方も常時使い続けられるように出来ないかなぁと考えてますが、難しいですよね?」

「この前の緑ウツワ草はまだ十分にあるし、改良の余地はありそうじゃから考えておくよ。お嬢ちゃんの事だから、形状は想像できているんじゃろ?」

また記石を借りて、前回のように形や要望を書き込んだ。今回の形状はまさに前世の冷蔵庫という感じにした。上に冷凍庫があって、下に冷蔵庫の存在する定番の形だ。試作段階のは、前世的に言えばミニ冷蔵庫かな。

「ふむ、なかなか難しそうではあるが、試してみるよ。また気が向いたら訪ねてくるといい」

「次に来るときは、また緑ウツワ草をお持ちしますね」




 後は持って歩くだけだが、重さは考慮しなくて良いとしても俺の身長の半分弱はある箱を持つのは結構大変だ。事前に家から袋を用意していたので、鞄から取り出して箱を入れてみた。背負える形で大きめの袋を選んで持ってきたので余裕を持って入れることが出来たが、窓に映る俺の姿はちょっと……いや、かなり大きなランドセルを背負った子供みたいなことになっている。


箱を背負って商店街に行き、リンプの果実ジュースを瓶に1本買ったので、今夜使うには十分な物が得られた。


 この場所から飛んで移動すると目立つ可能性があるので、門の外までは歩いていこう。

「こんにちはー」

朝と同じ衛兵さんが門の前に立っていたので挨拶をしたら、すぐに俺のことを分かってくれたようだ。

「リーシアちゃん、1人でどうしたんだい?」

「今日は街での用事が済みましたので、これから帰るところです」

「それなら、こっちで馬車を手配しようか?」

「ありがとうございます。でも歩いて帰れますので、大丈夫ですよー」

「そうか、じゃあ気を付けて帰るんだよ」

「はい、それでは失礼します」


 荷物を背負って歩くこと約1目、門も見えなくなったので、そろそろ良いだろう。

俺は大分前から飛行練習をしていたので、今では自由に空を飛ぶことが出来るようになっている。自分の身だけであれば、馬や馬車を使うよりも早く移動できるだろう。

最初は魔力の配分を何も考えずに使っていたせいで、何度か魔力切れを起こしたりもしたが、その甲斐もあって今では体感で魔力残量が分かるようになっている。

夜の庭で練習して魔力切れを起こした時は、気が付いたらベッドの上で寝間着を着ていた。もちろん自力で戻って着替えた訳ではなく、なかなか部屋に戻らない俺を気にして庭にきたタニアさんが、そこに倒れ込んでいる俺を見てベッドまで運んでくれたということだった。

目が覚めた後は、両親だけではなくタニアさんにまでこってり絞られたものだ。その後はしばらくの間、監視付きでないと練習させてくれなかったなぁ……。


 そんな練習の成果もあり、荷物を少し背負っている程度なら支障もなく帰宅するくらいは出来る。そして、この世界には電柱も電線もないので、木の上に出てしまえば遮る物は何も無い。

遮る物がないと言うことは他人に見られる可能性も高いと言うことで、念のために人から見つかり難くなるように周囲の大気を操作して光学迷彩の様なものだけは施している。これでもし見られたとしても、小さな影が見えた程度にしか思われないはずだ。しかし、体に光があまり当たらないように調整しているため、俺からも周囲が見辛くなるのが難点ではあるが、遮蔽物は何もないので移動するだけなら問題はない。

そして、そこまで高度を上げたら後は真っ直ぐに家まで──文字通りに──飛んで帰るだけである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ