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精霊と魔法の在る生活  作者: 桐無
少年期
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23話 再依頼と錬金術未遂

 昨日に引き続いて、俺は馬の上で揺られている。今回の外出は前回のように調査が目的ではない。昨夜の実験が上手く行き、依頼に必要のある物が把握できているので、今度こそ依頼が出来るはずだ。

やることは2点、沢山のウツワ草を買い込んで風精霊様に変換をして貰うこと、次に魔具細工屋のお爺さんに渡して再依頼だ。材料さえあれば、きっと依頼を受けてくれるだろう。

「続けて街に来るってことは、実験は成功したんだね」

「はい、これで魔具細工屋さんへの依頼は問題無さそうです」

材料不足が解消されれば、支障はなくなるはずだ。

「そうか、色々と調べた成果は出ているみたいだね。僕にも何か出来ることがあったら、手伝うよ」

とりあえず、今のところは連日街まで連れてきてくれるだけで十分に助かっている。まだ自力で馬には乗れないので、あまり目立たず街に来るのはなかなか大変だろうから。


今回は、ウツワ草を購入するために花屋の前で降ろして貰った。

「今日も、ありがとうございます」

「それじゃあ、今日もまた夕方に門の前でね」

「はい、分かりました。行ってらっしゃいませ、お父様」


 昨日は実験のために数本のウツワ草を買ったのみだったが、今日は色の変換が出来ると確証があるため、10本1束の物を3束購入した。


「30本の束となると、結構多いなぁ……」

人目に付かない路地を探しながら、つい独り言が口から漏れる。両手でないと持てない位の量があるので、重くなくともかさばるのはどうにも出来ない。

周囲に誰もいない路地裏を見つけたので、目立たないように──大量のウツワ草を抱えて、目立たないも何もあったものではないが──そこまで行き、昨日と同様に風精霊様に魔力を込めて貰った。ウツワ草は1本残らず、全てが緑色に発光している。これで、30本の緑に発光するウツワ草が完成した。冒険者ギルドに出ていた依頼の3倍に当たる量だ、きっとこれだけあれば今回の依頼で必要な分には達しているだろう。


 念には念を入れて人目に付かない場所を選んだが、仮にこの光景を誰かに見られたとしても、魔術を使ったと思われるだけだろう。

魔法と魔術の違いなんて、魔術師でもなければ分からないだろうから、そう言って誤魔化せば何も支障はないんだろうと理解出来てはいる。しかしそれでも、魔法を使うときは何となく人目を避けてしまう。


 そして、適当に目立たない場所を探して歩いたせいで、自分の現在地が少し分からなくなってしまった。方角さえ合っていれば問題はないだろうから、目印になりそうな建物を探して進むことにしよう。


 見慣れぬ道から魔具細工屋を目指して向かう道中で、ふとガラスに映り込んだ自分の姿を見ると、淡く発光する幻想的な花束──ではなく草束と言えばよいのだろうか──を抱えた少女がそこにいた。絵画にでもありそうな光景だなー……などと自分のことながら思ってしまう。実際にこれが自分じゃなければ、写真にでも収めたくなる絵面ではあるのだが……。


・・・・・・


「ほう、これだけあれば十分じゃな」

早速、さっき作った緑に発光するウツワ草を魔具細工屋のおじいさんに渡した。

「それにしても、昨日の今日では時間が合わんし、それにこの量。お嬢ちゃんが採ってきたとも考え難いが……これをどうやって?」

確かに、馬車を使って取りに行っても片道で1日掛かるのだから、訝しむのも仕方がないだろう。精霊様に作って貰いましたなんて信じてくれるとは思えないし、それ以前に魔法を使えることは秘密にしているのだから言えるはずがない。

「えーっと、そこら辺はその、大人の事情という事で?」

「ほぅ……儂には子供しか見えんが? しかもどう見積ったところで、4・5歳程度のな」

自分でも成長が遅いのは自覚しているけれど、他人からもやっぱり年相応には見えていないのか、もうすぐ7歳になるというのに。

「じゃ……じゃあ、乙女の秘密と言うことで」

ほら、中身はともかく外見はうら若き乙女……ではなく、子供だけど秘密くらい持ってもいいだろう。

「まぁ、これでお嬢ちゃんの依頼は受けられるのだから、良しとしておくかの」

入手経路を聞いてきたのは単に興味本位だったのか、これ以上の追求をされることはなかった。

「それでは、作って頂けるんですか?」

「うむ、任せておけ」

あ……無事に作れるという段階まで来て今更気付いてしまった。代金、どうしようか? いざとなったら、父に頼んでみよう。あの父ならば、よほど高価でもない限りは、愛娘のおねだりの前にあっさり屈服しそうな気がする。

「あのー、すっかり忘れていたのですが、この依頼の代金って大体お幾らになるでしょうか?」

「そうじゃな、構造自体は難しいものでもないし、10,000Eエイン相当じゃが、この緑ウツワ草の量を考えれば、十分帳消しになろう」

あれ? ウツワ草って、そんなに高いの?

「お嬢ちゃん、依頼を見に行ったと言っとらんかったか?」

俺が疑問に思っていると、不思議そうに聞かれてしまった。

「見ましたよ? ランク不問で馬車で片道1日くらいって……」

「ならば、報酬は?」

「……内容のことしか気にしてなかったので、見てません」

「それじゃ説明するが、1本で300Eにしとるので、ここにあるので大体足りとるじゃろ。そして、お嬢ちゃんがこれを冒険者としてギルドに提出しておれば、それだけの報酬は得られたわけじゃしな」

確かに、冒険者になるのに年齢制限はないので、俺が冒険者として登録して提出することも出来るといえば出来る。他に依頼を受ける気がないのに、わざわざそんな回り道をするつもりはないが。

そして、俺が買ったのは茶に光るウツワ草で、10本束が50Eだった。1本辺りの価格は5Eだろう。それが緑に光るウツワ草だと1本300Eって、色によってそんなに違うのか。

「それでも、1,000Eほど差額はあるようですが?」

「いや、ギルドへの手数料を考えたら、そこまで大きな差にはならんよ」

そうか、依頼を出すにも手数料が掛かるんだな。慈善事業じゃないので、考えてみれば当然か。

「まぁ、そんなわけじゃから代金は気にせんでよい。2日もあれば完成すると思うから、その頃にまた来ておくれ」


 なんというか、ウツワ草の色を変えて転売するだけで、生計が立ちそうだな。改めて魔法──というよりは精霊様──のすごさを思い知らされた気がする。

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