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精霊と魔法の在る生活  作者: 桐無
少年期
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22話 自由自在な草の色

 ウツワ草は、どこに行けば売っているのだろうか。さっき調べた限りだと薬として用いられてはいないようだから、道具屋よりは花屋だろうか?

まずは商店街まで戻って、花屋で扱っているかを確認してみよう。


 店の中に入ると、家の近所で生えている花から見たことの無い花まで、所狭しと咲き誇っている。

入ってすぐの所に、茶色く発光したウツワ草が並んでいた。実物を見たことのない俺でも、名前の書かれたプレートがあったのですぐにそれと分かった。今回は、とりあえず実験をしたいだけなので、数本購入することにした。


 ウツワ草を買い終わって店外に出ると、辺りは茜色に染めあげられていた。そろそろ父と待ち合わせた時間になりそうなので、急いで門に向かうことにしよう。初めての私的な外出で、遅くなって心配を掛けてしまっては、今後の活動に影響がありそうだし、そうでなくとも心配性なきらいがあるのだから余計な心配をさせる必要もないだろう。


 小走りに門の所まで来たが、まだ父は来ていなかった。先に着けたので一安心だが、少し息が上がっているので、城壁に寄りかかって涼むことにした。


一息ついて門の付近をうろうろしていると、1人の若い衛兵さんが俺の方に近づいてきた──不審者に見えたのだろうか?

「こんな時間に、何をしているんだい?」

「父と待ち合わせをしているのです。多分、もうすぐ来ると思いますけど」

まぁ、何もせずに歩き回っていれば、不審に思われても仕方がないか。

「この街は平和な方だけど、だからって子供の1人歩きは危ないから、あっちで一緒に待とうか」

不審に思うというよりは、身を案じてくれていたようだ。好意を無碍にすることもないので、門の方へと一緒に歩いていく。

「街にはお父さんと一緒に来たの?」

「えぇ、そうです。ちょっと図書館で調べ物をするために、連れてきてもらいました」

「そうか、まだ小さいのに字が読めるなんて、随分と勉強熱心なんだね」

この世界の識字率はそこまで高くない。貴族や商家であれば、嗜みや将来の家業のためとして、子供の頃から教育する事もあるようだ。しかし、小学校のような専門の教育機関があるわけでもないので、一般的な子供は読み書きが出来ない事も珍しくはない。大人でも、文字があまり必要ない環境で育った場合は読み書きできない事も珍しくはない。

「俺が君くらいの頃なんて、そこら辺を走り回ったり、遊びに明け暮れてたなぁ」

兄を見ていると確かにそんな感じなので、ある程度は想像が付く気がしないでもない。


 衛兵さんと話をしていると、馬の蹄が地面を打つ音が聞こえてきた。音の聞こえた方角に振り向くと、馬の手綱を握って歩く父の姿があった。

「やあ、今日もご苦労様」

「カルセス様、お疲れ様でした」

やはり、父の顔は結構知られているようだ。門の前にいる衛兵さん達は、父を知っている人の方が多いくらいである。

「お父様、お仕事お疲れ様です」

「リーサ、お待たせ。先に着いていたんだね」

衛兵さんが父と俺を見比べている。

「娘の面倒を見てくれていたみたいだね、ありがとう」

「いえ、通りに1人でおられたので、こちらにお呼びしただけです。礼を言われるような事じゃありませんよ」

「衛兵さん、ありがとうございました」

保護してくれていたのは確かだし、俺からもお礼を言った。


 帰りの道すがら、父には今日の収穫については一通り話した。

「諦めたわけじゃなさそうだし、明日以降も街に用事はあるんだね?」

「はい。帰ってからの実験次第になりますけどね」

まずは、ウツワ草の実験結果だけを考えよう。これが成功さえすれば、後は依頼するのみなのだから。


・・・・・・


 結論だけ言ってしまえば、実験結果は大成功だった。

ウツワ草の群生地から考えると、本の推測通りに各精霊の力が強い場所ではその魔力に影響されて色が変わっている感じだった。人が魔力を流せば白く発光するというのも、人の魔力が精霊様の魔力と異なるからということだろう。

なので、実験と言っても単純な話である。精霊様と会話が出来るのだから、精霊様に魔力を込めてくれるようにお願いするだけだ。


 今回は、緑に発光するウツワ草が必要ということなので、風精霊様にお願いをした。

『風精霊様、風精霊様、どうか私の願いを叶えて下さいませー』

若干棒読みな感じに、風精霊様を呼んでみた。

『あら何かしら、その他人行儀なのは?』

最近では、精霊様に対する畏敬の念とか何それ?といった仲である。物心付いて以来の付き合いな上に、どの精霊様も気軽に話しかけてくれるため、どうにも威厳とかそう言ったものが感じられない。見た目で判断するのは良くないのだが、それでも蝶々やトカゲが傍をふわふわ漂っている姿に、畏れの感情は抱けない。もちろん敬いや感謝は欠かさないのだが。

『いえ、何となく? お願いがあるのは本当ですけども』

『まぁ、いいけど。それで、お願いって何かしら?』

ウツワ草に関する話を一通りして、それが可能なことか確認をした。

『魔力を込めるだけで良いのなら、お安いご用よ』

俺はウツワ草を風精霊様の前に差し出した。風精霊様の魔力が込められるのに従って、葉の表面にある縞が緑に変わっていく。

『これでいいかしら?』

『ある程度は予想通りでしたけど……あっさりと出来ちゃうんですね』

『元々魔力に感化されやすい植物なのよ、これは。身近な魔力に影響されて色が変わるから、ちょっと魔力を流すだけね』

人の魔力だと白く発光するように、それ以外は各精霊様が宿している属性の色なのだろう。

とりあえず、これで4色のウツワ草はどれでも用意できることは分かったので、明日は魔具細工屋のお爺さんに渡してみよう。

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