02話 家族と朝食
さて、そんなわけで着替えも終わり、朝食を採るために食堂に向かった。ここまでに分かったことは、あの男の子の名前はレイルス、俺の兄だ。身長は俺よりも頭半分くらい大きい。
俺の名前はリーシア・ファイアル。外見はすごく可愛い。これが自分じゃなければ思わず見とれてしまうだろう程には。髪の毛はシルバーで胸辺りまでの長さ、瞳は淡紅色、やっぱり西洋系の顔立ちだった……紫外線対策とかしてないけど、大丈夫なんだろうか?
原因は不明だが、なぜか前世?の記憶を持ったまま転生してしまった、ということだろうか。
それならそれで、なぜ兄の方じゃないんだ……!
「お嬢様が先に起きていらっしゃるなんて、珍しい事もあるのですね」
そう言うのは使用人のタニアさん。
髪は黒に近いブラウンで長さは肩辺りで切り揃えられている。
仕事の邪魔にならないようにしているんだろうか。
まだどちらかと言えば子供に見える。多分12・3歳くらいだろうか。
「リーサちゃん、おねぼーさんー」
兄にまで言われた。そこまで言われるほど、今までは寝起きが悪かったのだろうか。
子供の体から見て結構大きな廊下を通り抜けて食堂につくと、既に二人の男女が着席していた。俺達兄妹の両親だ。
男性の方はカルセス・ファイアル、ダークブラウンでややウェーブ掛かった髪を縛り、丁寧に撫でつけている。
女性の方はエルザ・ファイアル、シルバーブロンドの髪で、頭上で綺麗に結い上げられている。
なお両親の名前に関しては、この段階では思い出せていなかったが、後で思い出したので付け加えている。
「おとーさま、おかーさま、おはようございます」
「おはよう、レイ」
「おはよう、レイ君」
と、兄が元気よく挨拶をした。
両親も優しそうな笑み浮かべ、挨拶を返していた。
俺も黙ったままではまずいだろうから、椅子に座っている2人に向かい挨拶をした。
「おはようございます」
「おはよう、今日は早かったね」
「リーサちゃん、今日はちゃんと起きられたのね」
まさか会う人全員から言われるとは、どうやら今日に至るまでの俺は相当寝起きが悪かったらしい。
「はい、今日は早起きできました」
黙ったままというのも変だろうから返事をしておいたが……怪しまれはしないかな?
「そう、偉いわね。これからも頑張りましょうねー」
何ともふわふわとした笑顔で誉められた。問題はなかったようだ。
父親の方も、俺に対する褒め言葉こそ無くとも、「よくできたね」と言わんばかりの笑顔で頷いている。
早起きしたくらいでここまで誉められるのは、どうなんだろうか。
俺も兄もこの体では椅子に座るのも結構大変だったけど、よじ登るようにして何とか席に着くことが出来た。
テーブルの上には、ロールパンのようなものとココアに似た飲み物がある。
パンは焼きたて特有の美味しそうな匂いがして、食欲を刺激する。
「空と大地の恵みを精霊様に感謝します。また今日が良い1日でありますように」
父が食前の挨拶を終えると、全員それに倣い、最後の一文を繰り返す。
パンは微かな甘みがあり、かじり付くとその甘みが口の中に広がる。単体でも十分に美味しいのだが、ハチミツのようなものを塗って食べると、また別の甘さによりパンの美味しさが引き立つ。バターっぽい物は、これもまた程良く塩分があり美味しい。
(……色々な物に、「のようなもの」と付けるのも面倒なので、今後は省略することにしよう。)
一通り食べ終わり、ココアを飲む。決して甘すぎず、食後の一杯に丁度良い。
「ごちそうさまでした」
子供の体では。大した量は食べられないようだ。
折角の美味しい朝食なので心残りではあるが、食べ過ぎは良くないから諦めることにしよう。