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精霊と魔法の在る生活  作者: 桐無
幼少期
17/47

17話 魔法と魔術の共演

 ラザル様の来訪があった事で、俺は魔術を使えるということが公認となった。今後は誰から隠れる事もなく、堂々と魔法や魔術の練習が出来そうだ。

とは言っても、両親には既に話してあるし、兄は多分あまり理解出来ていないと思う。タニアさんには意図して隠していたわけではないのだが、言い出すタイミングも無かったので、つい今までは隠しているような状態になっていた。


 しかし、一度明かしてしまうと人は──というより俺は──現金なもので、色々と試したくなってきた。

俺は、魔術の実験をするために庭に行くことにした。長い杖をズルズルと引き摺っていると、もう少し短い杖だったら持ち運びが楽なのになぁ……と恩知らずなことを思ってしまったが、それも仕方のない事だろう。なんせ、大柄なラザル様が使うように合わせて作られているのだろうこの杖は、俺の身長と比較すると1.5倍以上の長さがある。


 まずは庭に出て、杖を動かした範囲では障害物に当たらない場所に陣取った。洗濯物や遊具にぶつけて、汚したり壊したりしないよう用心に越したことはない。

まず始めに昨日も試してみた灯火を、素手と杖で順番に発動させてみた。

杖を使わずとも魔術の発動は出来るけれど、杖を経由した方が魔力の効果が大きいようだ。素手で発動した際には、1目も効果の無かった灯火が、杖を用いて発動することで、約3目は持続していた。

流す魔力を半分くらいに抑えても、素手より長い時間、持続させられるようだ。

しかし、魔術陣を経由することのない魔法には、杖の効果がないらしい。直接精霊様に魔力を渡すので、考えてみれば当然かもしれないが。


 杖の有用性を確認出来たので、ラザル様から貰った本を広げて内容を吟味していく。


 最初の方に書かれているのは、魔術の知識についてのようだ。少しだけ内容を見て、とりあえず理解したのはこんなところだ。

基本魔術は主に、4つの言葉の組み合わせで構成されている。"規模"、"種類"、"対象"、"効果"の4つである。

灯火を例に取れば、"小さき""灯火"よ、"我が道"を"照らし出せ"となるようだ。

少し明るくした場合は、"小さき"を指定せず以降を同様にする。更に明るくする場合は、"大いなる"と指定するようだ。


持続時間に関しては先程の実験からも分かるように、込める魔力の量で決められる。持続している魔術を中断したい場合は、そう意識するだけでいいが、消費された魔力は戻ってこない。


 魔術の知識に関するページが終わると、基礎的な魔術の一覧が載っている。

攻撃系の魔術は、別に戦闘したいわけでもないので当面は必要ないと思う。なのでとりあえず実験するのは後回しにしよう。まずは補助系の魔法を見てみる事にした。

探知結界の作成や身体能力の強化等、種類は沢山あるようだ。しかし今回はまず、明確な実験目標があるので、ある1つの魔術がないかを探してページをめくり続ける。


 しばらくページをめくっていると、目的に合致しそうな魔術を見つけた。

まずは実験のために、手頃な大きさと重さを持つものを探す必要がある。砂場の辺りまで行って、手頃な物が落ちてないか探してみることにしよう。


「お嬢様、何かお探しですか?」

「ちょっと魔術の実験をしてみようと思って、手頃な大きさと重さの物がないかなと、探してたんです」

辺りを見回しながら歩いていたら、タニアさんに声を掛けられた。

「手頃な大きさと重さ……水桶とか、いかがでしょうか」

「うーん、落として壊しちゃうかもしれませんので、他の物を探してみますね」

タニアさんの所を通り過ぎて再度歩き回っていると、砂場の隅に手のひら大くらいの石が目に付いたので、これを使って実験をすることにした。

俺は片手で本を持ち、目の前に置いた石に杖を向けて詠唱をした。

「小さき見えざる力よ、眼前の荷から重さを解き放て」

杖の先端に魔術陣が発生したが、魔術陣からは何も出てこない。魔力を使った脱力感はあったのに、失敗したのだろうか?

確認のために、石に近づき持ち上げてみた。

「うわっと」

石からは重さがほとんど無くなっていた。思っていたよりも軽かったので、危うく取り落とすところだった。軽量化の魔術は、無事に成功したようだ。


 この重さであれば、僅かな風の力でも石を浮かせられるはずだ。俺は慎重に、石の周りに少しずつ風を起こしていく。すると、徐々に石が空中に浮かんでいき、風の力と重さの均衡が取れる場所で漂い続けている。

ドライヤーでピンポン玉を浮かせてみた事はないだろうか。あれと同じ事を、重さを軽くした石と風の魔法で再現したつもりだ。

勿論、ここまでの実験は大成功と言えた。この確認が出来れば、次の実験に移れそうだ。


 今度は軽量化の効果を上げて、対象を石ではなく自分にして発動させる。

「見えざる力よ、我が身から重さを解き放て」

体重計なんて便利な物は無いので正確には分からないが、体感でもかなり軽くなっているのは実感できる。

先ほど石を持ち上げたのと同様に、今度は俺の周りに風を起こして体を持ち上げてみた。

重さをほぼ持たない俺の体は、風に吹き上げられて空中に漂っている。既に家の屋根と同じくらいの高さまで上昇した。

このまま風向きを制御して、横方向への移動をしてみる。高さが高さなので、ゆっくりと慎重に風向きを変えて、無事に家の屋根まで辿り着くことが出来た。


 この実験は魔術を知らない時にもやってみたのだが、風の力だけでは石を浮かせるのにも相当の風速を必要とした。

布や紙のように、薄くて軽いものであれば問題はなかったが、そうでなければ強風で巻き上げられて、とても浮遊なんて言える状態ではなかった。

自分を浮かせようとした時なんて、期待外れもいいところだった。全く浮かばない内から、暴風ともいえる勢いになったため、それを敢行してまで自分を飛ばしてみようとは、到底思えなかった。

しかし今回は魔法と魔術の併用により、俺はついに飛行能力を得る事が出来た。

7/17 魔法陣→魔術陣に修正。

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