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精霊と魔法の在る生活  作者: 桐無
幼少期
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15話 子供達の遊び

 裏庭の方に歩いていくと、ティム君やイサナちゃんと仲良く遊ぶ兄の姿が見えてきた。

子供の適応力ってすごいな……まだ短い時間なのにすっかり打ち解けているようだ。

折角仲良く遊んでいるのだから、少し3人の様子を遠くから見守っていようと思う。


 遊びを眺めていると、最初はかけっこをしていたようだ。スタートラインから一斉に真っ直ぐ駆け出し、一本の木を折り返して最初の位置まで戻っていく。

やはりこの年齢だと1年の差というものが大きいのか、ティム君が一番早くスタートラインまで戻っている事が多い。

子供の頃は、女の子の方が成長も早いというが、それでもイサナちゃんが一番になる事は2割くらいだろうか。

「やっぱり、ティム兄ちゃんは早いね。全然勝てないや」

「イサナもだいぶ早くなったよな」

「ふたりとも、はやいねー」

 時々、二人とも手加減して上げているのだろうけれど、兄が一番になることがある。兄は2人の手加減に気付いていないのだろう、楽しそうにハシャいでいる。

ティム君もイサナちゃんも、そのたびにちょっと悔しそうな演技をしている辺り、とても面倒見の良い子達のようだ。


 この後にも、設置された遊具で遊んだりごっこ遊びをしていたりと、世界が違っても子供の遊びというのはあまり変わらないようだ──ごっこ遊びで出てくる職業が、騎士や魔術師に冒険者と、何ともファンタジー感の溢れるラインナップになっているのは、やっぱり異世界なんだなぁと感じたけれど。

どこから持ってきたのか、各々が手に枝を持ち、立派なパーティが誕生している。

設定は、魔物と戦うパーティというところだったのだろう。子供がヒーローに憧れるというのはよくある事だが、本能的なものなんだろうか?

「いつか本物の冒険者になって、世界中を探検してみたいよなー」

「魔物ってなんだか怖いし、私は街で暮らしてる方がいいな」


 冒険者が職業として存在しているというのは、本で読んだから知っている。

ギルドを運営していて、村や街の周辺に現れる魔物を退治したり、隊商の護衛をしたりと便利屋のように色々な事を請け負う組織だ。

危険な分だけ実入りは良く、各種施設でも相応の特典を受けられるとか、そんな感じだ。


やっぱり男の子は冒険に憧れるものなんだな。危険も多く、生存率の高い仕事でもないということも書いてあったが、それでも憧れる気持ちは分からないでもない。


俺がもっと若ければ、危険な冒険と聞いて心を躍らせたかもしれないが、今は平和な生活の方が好みだ。危険な場所に足を運ばずとも、真新しいことばかりの世界なのだから、それをのんびりと満喫したい。肉体年齢はかなり若いんだが……精神の方はそうでもない。


 しばらく様子を見ていると、別の遊びに移行したようだ。

何やら捜し物をするように、キョロキョロと周囲を見回したり、しゃがみ込んだりしている。

地面にある石を持ち上げて、そこを眺めたりもしているようだ。何をしているのか気になったので、3人に近づいて行った。


 丁度ティム君のところに俺が近づいたときに、声が聞こえた。

「よし、捕まえた!」

何だろうと思って手に持っているものを眺めてみると、体が少し強ばってしまった。ティム君の手には小さなカマキリのような虫が掴まれていた。


 俺も子供の頃は結構虫取りとかして遊んだなー、と懐かしさを覚えたがその反面、大人になってからはあまり触る事がなかったせいか、いつの間にか虫全般は苦手なものになっていた。

現に今も、見るのは平気だが触るのには抵抗があるので、眺めているだけだ。


 ティム君は、捕まえたカマキリを木で編まれた虫かごに入れて、次の虫を探しに行った。虫かごは木の下にある長椅子に置いてあるので、そこに腰掛けて中にいるカマキリをじっくりと眺めてみた。虫かご越しであれば、特に抵抗感はない。

遠目から見ただけだとカマキリのように見えたが、俺の記憶にあるそれとはちょっと造形が違った。なんせ鎌が2枚刃になっているのだから。


カマキリを眺めていたら、目の前を何かが通った気がした。

「うわっ!」

何だろうと思う間もなくそれは俺の額辺りに直撃し、頭の方に移動して行く感覚がする。

とっさの事だったので、当たった何かに手を伸ばした俺は鳥肌が立ち、自分でも血の気が引いて行くのが分かった。

俺の声が聞こえたのか、ティム君達がこっちに駆けつけてきた。

「頭に何かが!は、早く取ってください!」

「ちょっと待ってろ、今取ってやるから。まずはしがみくのをやめて少し離れろ!」

パニックになり、思わずティム君の腕を掴んでいた。頭には、虫の歩くような感触が髪越しに伝わっていた。


・・・・・・


「ほら、取れたから落ち着けって」

ティム君に頭をぽんぽんと撫でられている。

「はい……すみません、ありがとうございました」

視界が滲んでいるし、叫びすぎて喉が痛い。あんな不意打ちを受けたのだから、それも仕方がないと思う。

前世なら、顔がひきつるくらいはしてもパニックになることはなかった筈だけど、精神は肉体に引きずられるのかもしれない。

頭に飛んできた物体の正体は、手のひら大はある蜘蛛のような虫だった。手を伸ばしたときには、多分あの脚を触ったのだろう。


 この後で、騒ぎを聞きつけた他の子供達が来て、からかわれたり慰められたりとあったが、細かく語っていくと俺の心に大きなダメージを与えるだけなので差し控えようと思う。

少しだけ付け加えると、家に帰ってから両親に帽子をねだり、そしてこの日を境にして外出時は帽子をかぶるようになった──理由は言うまでもないだろう。

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