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精霊と魔法の在る生活  作者: 桐無
幼少期
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12話 誤解と蜂への確認

 俺は隠していたことの一通りを説明して、今後の方針も決まって安堵していたところに、父が緊張した面持ちで尋ねてきた。

「リーサ、一点だけ確認しておきたいんだけれど、火精霊様については、どうなっているんだい?」

火精霊様? 特に何かを言われた覚えはないので、何を意図した質問なのか分からない。

「どうなっているとは、何を指してのことでしょうか?」

「うーん、まだ分からないか。ちょっと待っててね、本を持ってくるから」

そう言うなり、本を取りに行ってしまった。きっと火精霊様に関係した本を持ってくるのだろう。


 父が部屋から出て少し経った後で、母が俺の座っているソファーに移動してきた。

「リーサちゃん自身のことについて大事なお話があるから、少し待っててね?」

大事な話って何だろうと思案していると、突然抱っこをされた。

今までと変わらない扱いをしてくれるのは嬉しいが、なぜ両親はどっちも、抱っこするのが好きなんだ……。

兄は活発で大人しくしていない分、あまり動かない俺がターゲットにされているんだろうか?




 父が戻ってくると、手には一冊の本を抱えていた。表紙には"火精霊の恵みとその代償"と書いてあった。

「僕なりに白化について調べてみたんだ。この本によると、火精霊様から人々が恩恵を受けることの代償として、白化した生物は若い内にその魂が捧げられる、という事なんだ」


聞き慣れない単語が出てきたが、文面的に理解は可能だ。だが、勘違いだとまずいので、一応確認しておいた方がいいだろう。

「白化とは、私の髪や目の色とかについてですよね」

「あぁ、そうだよ」


恵みについては、言葉の通り火から得られる恩恵の事だろう。しかし代償は、いまいち何を指してのことなのか分からない。

「そして恵みによる代償を、私のように白化した生物が支払う……ですか。代償があるとは思えないので、直接聞いた方が早いかもしれませんね」


 台の上に置いてある燭台に火を灯してもらい、火精霊様を見易いようにしてもらった。

精霊様の見えていない場所でも、対象を意識して呼びかければ会話は可能なのだが、その場合だと存在が希薄でぼやけた印象となってしまう。

なので、今回は会話をするための呼びかけなので、火の気配が強くなるようにと燭台に火を灯してもらう事にした。


『火精霊様、少しお尋ねしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか』

灯された火の中から、俺に向かって一匹の赤く光る蜂が飛んできた。初めて見たときには驚いたが、何度か見ていれば慣れてしまうものだ。

『どうした、リーシア嬢ちゃん。何を聞きたいんだ?』

火精霊様は火の性質によるものなのか、砕けた口調でそう問い掛けてきた。

『私のように白化した生物は、火精霊様に代償として魂を捧げられるという話があるのですが、それは事実でしょうか』

今まで話をした限りでは、代償に関したものは聞いたことがないので、憶測からくる人間の勘違いだとは思うが、一応確認はしてみよう。

『代償? 俺に限らず、他の精霊も何か代償を求めるなんて事はないから、安心しな』

『そうですよね。人間の認識では、精霊様に対する勘違いが色々あるようです。でも、これではっきりしました、ありがとうございます』

『いや、また何かあったら呼んでくれ。別に何もなくても、雑談だけでも良いけどな』

『はい、ではまたお会いしましょうー』




 ある程度は予想通りだったのだが、やっぱり精霊が何か代償を求めると言うことはないようだ。

本で見た他の精霊に関する代償にしても、きっと人間の勘違いなのだろう。

津波や竜巻には、確かに目に見えやすい代償のようにも見えるが、現実には地形的な原因があって発生するものであり、そこに精霊の意図は介在していないはずだ。

しかし、火の代償は白化した生物が若くして火精霊様に魂を捧げる……何とも抽象的で分かりづらいが、白化した人は早死にするってことかな。

白化──アルビノのことだろう──した場合の身体的な特徴と言えば、ちょっとした紫外線ですぐに火傷のような日焼けをするとか、癌になりやすいとかがあったはずだ。

後者はともかく前者に関しては、知識がなければ確かに火の影響という勘違いをするかもしれない。

この世界で紫外線に対する知識は、俺の普段着──手触りの良い生地で織られた服にスカート、それに上着が1枚で全身真っ黒という訳でもない──から考えると存在していないと予測はつく。

紫外線に対する知識というよりも、紫外線という認識自体が無いのだろう。


「元の世界での知識になりますので、細かい説明は省かせて頂きますが、本来であれば太陽の光によって様々な害を被るのは確かです。ですが、それは火精霊様への代償ということではありません」

さっきも確認した通り、代償の考え自体が完全な誤解である。そして俺は、魔法で紫外線を遮断している。

「それと、私は魔法で害のある光を浴びないようにしていますので、その……普通の人と同じだと思って頂いて問題はありませんので、どうか安心して下さい」

俺の言葉を聞いて安心したのか2人共、表情から緊張感が抜けている。

もしかして、今までふと気がつくと心配そうな表情で俺を見ている事が多かったのは、これが原因だったのだろうか。

そうだとしたら、誤解も解けたようでなによりだ。

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