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精霊と魔法の在る生活  作者: 桐無
幼少期
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11話 大きな力

 あれから兄の世話をタニアさんに任せて、俺は応接室で両親と対面している。さて、どこから説明したらいいだろうか。


机を挟んで2人と対面しているが、父は先程の魔法を見ているためか、考え込むようにしながら、じっと俺を見ている。

母はまだ事情が分かっていないためか、首を傾げながら俺と父を見比べていた。


まずはさっき使った魔法から説明して、両親を安心させたいので、そこから説明することにしよう。

「お父様、お母様、私は今までいくつか隠していたことがあるのです。これから順を追って説明しますので、不明点等ありましたら都度ご質問ください」

と、軽く前置きをした。

「あら、もう隠し事をするくらい、大人になったのねー」

などと、のんきな感想を頂いた。大人になったというか、中身は物心ついたときから大人なんですよ。


「まず始めに、私は精霊様が見えて、会話をすることが出来ます」

「あぁ、やっぱりそうなのか」

「そうなの、それならあれも納得ねぇ」

あれ、なんか意外な反応? もう少し驚かれるかと思ったのに、なんでこんな落ち着いているんだろうか。

「えっと、意外と驚かないんですね……?」

「庭で何度か見たことがあるからね。リーサが見えない何かと、聞いたことのない言葉で話している光景を」

「私が最初に見たのは、リーサちゃんがその指輪を拾った日だったかしら。バンソの鉢植えの辺りに何かが居るって言っていた日ね」

「そう……でしたか」

ばれないようにこっそりと話してたつもりだったんだけど、実は結構見られていたんだ……。


「それで、精霊様にお願いをすることで、魔法を使うことが出来ます。さっきレイお兄様を浮かせたのも、風精霊様にお願いしたのです」

「私はそれを直接見ていないけれど、レイ君を助けてくれたのよね。ありがとう、リーサちゃん」

「いえ、どういたしまして」

そうだ、さっき見ていたのは父だけで、母はそれを見ていなかった。きっと、それでも嘘はついていないと信用してくれているのだろう。

「あと、額や腕についた傷を治したのはこの指輪の力によるものです」

「あら、ただの指輪じゃなかったのねー」

鉢に埋まってたって騙してるので、そう思われていたのは当然だろう。

「この指輪は地精霊様から頂いた物なのです。私の魔力を使って、バンソの恵みを込めたと地精霊様は仰っていました」

「バンソの恵み……か。バンソの葉に傷を癒す効能があるのは知っているけれど、あれ程の効果はないはずだなんだけどなぁ……」

それはそうだろう。草を患部に当てるだけでどんどん傷が治るなんて、そんなのはあくまで漫画やゲームの世界の出来事だ、現実的ではない。

「それは多分、込める魔力次第で効果が上がるんだと思います」

初めて使ったので詳しくは分からないが、さっきの感じでは込める魔力の量を増やすと、傷の塞がりが早かった気はした。

「ちょっと、いいかな。さっきは魔術を使っていたけれど、それでリーサの魔力が切れることはないのかい?」

この状況でも、俺の事を心配をしてくれているのだろうか。

「私の魔力がどれくらいあるのか、正確なところは自分でも分からないのです。ですが、眠くなったり意識を失ったりといったことはないので、あまり消耗していないとは思います」

力の抜ける感じもそう多くはなかったし、あまり消費していないはずだ。


「ここまでが、先程の庭で起きたことの説明になります。それとは別にもう一つ、隠していたことがあります」

ここまでを年不相応にきっちりと説明した以上、俺自身の事も話さないわけには行かないだろう。

「私は、ここでない世界で生きていた記憶を持っています。魔法は存在せず、別の技術が発達している世界でした。その世界では、結婚はしていませんでしたが、お父様のように働くことでお金を得る年齢には達していました」

と、一息にここまで説明したが、さすがに受け入れられる内容じゃないよなぁ。

「うーん、さすがに受け入れ難い話ではあるんだけど、仮に僕達を騙すつもりならもう少しマシな嘘をつくだろう。それに、今までのリーサを見ていると信じるしかないかな」

まぁ、確かに騙すつもりだったら、こんな信じ難いことは言わないだろう。

「あら? 私は、最初からリーサちゃんを疑ったりなんかしないわ」

根っからの良い人なんだろう、これには素直に嬉しくなった。


「それで、リーサはこれからどうしたいんだい?」

どうしたい、とは……どういうことだろうか。黙り込んでいると、それを察してくれたのか、追加で説明をしてくれた。

「ここまでの話を聞く限りでは、リーサは僕達と同程度の判断や行動は取れると思う。ただ、この世界の常識に関しては、もう少し知っておいた方が良いね」

「この世界の常識……ですか?」

「うん、まずは自分がどれだけ大きな力を持っているか、自覚していなさそうだからね」

大きな力? 確かに両親やタニアさんが魔法を使うところを見た事があるわけではない。

魔法を使えること自体、それなりに力はあるんだろうとは思うが。


「まずはその指輪についてだけれど、それだけの魔具だったら一般的な家庭が半年以上は働かなくていいくらいの価値はある」

それが魔具なのか、正しいところは分からないが……と父は言った。

父の言葉に驚きつつ、首から下げている指輪をまじまじと眺めた。

「それを、リーサは魔力があれば作り出せるというんだから、それだけでも既に規格外と言える」

俺が作った訳ではないけれど、多分頼めば作って貰えるのだろう。

「実際に使ってみたら便利だなーとは思ってましたけど、それ程の物だったのですね」

若干呆れた顔をされた気はしたが、基準が分からないのだから仕方がない。


「それに昨日も少し話したけれど、精霊様が見えると言うだけでも、この世界では相当珍しいことなんだ」

「はい、それは分かります」

「しかも、それだけでなく会話が出来るとなると、世界中を探しても見つかるかどうかだと思うよ」

森に住む一族の人でも、気配を感じることが出来るという程度みたいだから、そうなんだろう。

「でもね……それよりも、別の世界の知識についてだけど、僕には詳しく分からないが、この世界に存在しない知識はそれだけでも欲しがる人は沢山いるだろう」

「確かに、大きく文化は異なりますので、この世界にはまだ存在しないことを知っている、とかはあるかもしれません」

「あとは魔力と魔術についてだが、僕は専門外だからあまり詳しいことは言えない。だけど少なくともリーサの使っている魔術が、普通の魔術ではないことは分かるよ」

普通は精霊が見えないんだから、この魔法の使い方は普通じゃないんだろう。

「魔力の量も、あれだけの魔術を使っていたのに何も問題がない事と言い、多分見る人が見ればすぐに分かるくらいの量はあるだろう」

「魔力って、そんなにすぐ分かるものなんでしょうか?」

「いや、魔術の扱いに長けた人でないと分からないよ。王宮にいる熟練の魔術師だと、遠く離れた場所でも感知できる方法はあるらしい」

「熟練の魔術師、ですか」

「多分、そう遠くない将来、リーサには王宮から使者が勧誘に来ると思う。魔術の素質があるというのは、それほどに貴重なんだよ。王宮に行くかどうかはリーサの意思を尊重するから、それらも踏まえてゆっくりと、これからどうしたいかを決めると良いよ」

王宮からの使者か、あまり権力とかは関わりたくないかな。

「この事について、誰に話すかということもリーサに任せる、僕たちからは言わないようにするよ」

俺の判断力を信用してくれていると、そう受け取って良いのだろう。


「分かりました。あの、それで……それまでは、私はここに居てもいいんでしょうか?」

今までは2人にとって、愛娘だったかもしれないが、こんな話を聞いた後では、認識も違ってくると思う。分かりやすく言ってしまえば、得体の知れない相手ということになるだろう。

「僕は勿論、リーサには家にいて欲しい。色々と聞いたけれど、それでも僕の可愛い娘なんだからね」

「私もよ。リーサちゃんの意思は尊重するけど、出て行っちゃうのは寂しいもの」

う、ちょっとだけ両親の暖かさに涙が出そうになった。これからは後ろめたさを感じることなく居られるんだと思うと、気分が楽になってくる。

「2人とも、ありがとうございます。それと、これからもよろしくお願いします」

椅子から立ち上がり、微笑みながら2人に向かって深くお辞儀をした。

多分、今までの中で一番良い笑顔が出来ていることだろう。

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