リザード
数分後。
今までオークの巣窟になっていたはずの洞窟は、既にオークの死体安置所みたいになっていた。
「結局、どれが統率してたんだろうな」
同型モンスターでも、例えばオークなら持っている武器の質がいいとか防具をつけてるとか、そういう違いがある。
なぜなら、権力を示すのも兼ねて、仲間内でも誰がリーダーか分からなくなってしまわぬようにしないといけないからだ。
しかし。
「どれも一緒ね。これであんな統率がとれていたなんてありえないわ」
半分以上のオークをなぎ倒したカノも、姿が違う奴は見つけられなかったらしい。
「悩んでも仕方がない。戻ろう。」
レイザの号令でまた、来た道を引き返そうとした時。
「・・・?」
カノが振り向く。
「もしかして、もう一つ部屋があるのかも・・・」
しかし、それらしき道や部屋は見当たらない。
諦めて宙を仰ぐと。
「上だ・・・!」
洞窟の天井近くに、大きめの窪みがある。
レイザの対応は素早い。
「クラッド、弓でそこを狙って打ってくれ」
「おう」
クラッドが弓を引き絞り放つと、矢はまるで生き物のように窪みに吸い込まれていく。
同時に、「グギャァ」という呻き声が聞こえ、中から緑色の物体が現れる。
あれは・・・
「ライズリザード・・・!」
二本足で立つ緑色の物体。トカゲのような肌、凶悪な爪。棘の付いた尻尾。黒い翼を羽ばたかせこちらに飛び込んで来る。
明らかに今までの敵と違うのは、その技術だ。
奴等は人間並の知能を駆使し、鉄を鍛えて剣や鎧までも作り上げる。
細身の曲刀と白い円盾を構え、奇声を上げながら斬りかかってきた。
「キシャァアア!」
オークに比べかなり素早い。ギリギリでかわすと、雄叫びを上げ、黄金色の息を吐いてくる。
「毒息だ!避けろ・・・」
しかし、咄嗟に避ける事など出来ない。毒がまわり、全員の動きが止まる。
「くそっ・・・!」
リザードは再び奇声を上げ、今度はレイザに斬りかかる。
「ちっ!」
なんとか右手を動かし弾いたが、容赦なくニの太刀が打たれる。
剣がレイザの右腕をかすめ、血が吹き飛ぶ。
なんとか動ければ・・・
今度は仕留めるとばかりに、勢いよく三撃目が放たれ・・・。