カノ
こまめに水分補給しながら、晴れの村への道を歩く。
途中でまた標識が見えた。
「晴れの村まで2.2ロン」
らしい。結構歩いていたようだ。
その時。何処からか声がした。
「止まれ!」
誰だ?
止まれと言われて止まる犯人がいるか・・・って犯人じゃないけど。
「お前、何者だ!」
こっちが聞きてぇよ・・・。
「ここから先は・・・立ち入り禁止だ!」
唐突に右手の大木から赤い影が飛び出したと思うと、何かが俺に向かって打ちかかって来た。
咄嗟に槍を取り出し、相手の剣をはじき返す。
しかし―――。
「甘いわね。」
敵は俺のはじいた右腕の肘で、打ちかかった勢いを利用して俺を倒した。
そして、後ろに回していた左腕を抜き・・・
・・・ニ刀!?
「くっ・・・」
「相手の装備を見抜けなかった時点でアンタの負けよ」
陽炎のようにに俺の背後に回り、左の剣を俺の首に当てた。さらに右腕で素早く槍を遠くへ飛ばした。路の端へ転がる槍。
強い。
ショートの赤髪の少女は、飛ばした槍を見て、
「ん・・・その槍は・・・」
俺の槍がどうかしたのか。
「へぇ。そう言う事ね」
どう言う事だ。
全く状況の理解が出来ていない。何なんだこいつは。暗殺者か。
「アンタ、今回の討伐隊で唯一の槍使い。イサ・グレイドでしょ」
「知ってるのか。だったらその剣をおろせよ。俺は立ち入り許可されてるはずだが」
すると、少女は少しだけにやっとして、
「そんな弱くて討伐隊がつとまるのかしらね」
異様にいらつく。お前が強すぎる気もするが。
すると剣をおろし、道の端の方に落ちていた槍を手に取る。
そして、俺にその先端を向けて言った。
「私は皇国傭兵ギルド『クインロード』の副隊長、カノ・ホワイトよ。それじゃ」
て、行き先同じだろうが。
奴の武器をよく見ると、片方しか刃が付いていない。峰の方はのこぎり状になっている。何か意味はあるのだろうか。透き通るような白と、暗い紫の2本を吊るしている。
服はいかにも傭兵って感じではない。黒のシャツに赤いベスト。スカートのも赤と黒のタータンチェックなので、どうやら赤+黒で揃っているらしい。
「その服、制服なのか?」
「別に。色も格好も統一してないわ。」
無言でサニービレッジへの道を歩く。
ここらはさっきカノが言ったように、モンスターの被害を防ぐため立ち入り禁止になっているため、人は誰も通っていない。左右に木々が並び、茶色い砂利の道が続く。
景色が変わらないので結構飽きるものだ。
「『クイン』って言うぐらいだから人数は五人なのか?」
「あんまり人の私生活に首を突っ込まないでくれる。」
剣を向けられたので、余りこいつにむやみに話しかけないようにした。