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open the jam  作者: あうたーむ
序章
3/25

マリ

少々1ページの文字数が少なすぎたかなと思う今日この頃です・・・。

 家に帰ると、マリが血だらけで立っていた。

 そう、血だらけで。

 って、えぇ・・・・ち、血だらけ?

「ど、ど、どうしたんだおまえ」

 よく見れば相当グロい映像だ、ていうか母さんは何も言わなかったのだろうか、て・・・

 母さんが床で、こちらもまた血だらけで倒れている。

ん・・・?

マリが持っているのはナイフ・・・。

 え・・・・。

 この展開は、まさか超バッドエンドではないのか。

 マリがナイフで母さんを突き刺して、こうなったと考えれば、全ての辻褄が合ってしまう。

「おまえ、ま、まさか」

 マリはくるっと振り返ってこっちを見た。

 ぞくっとした。さすがに血だらけの顔で振り向かれたらグロすぎる。

さらに手には血だらけのナイフ。

ゆっくり口を開いて、急に明るい表情になったかと思うと、

「もー、コックが暴れるからさー、ザクッて刺したら凄い勢いで血が飛んで、2人で血だらけになっちゃって、しかもお母さんが血だらけの私の顔見て泡吹いて倒れちゃって。」

「え、ああ、なんだ。」

 一気に脱力した。

 母さんは、そう言う事に凄い弱い。

生きたままの食材を捌けるようになったのも、マリが来てからだ。

 マリは、親を失った子だった。

あれは、8年前、俺が9歳の時だったかな・・・。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

私は、初めてイサの家へ行った時を思い出していた。

きっかけは、葬式で逃げて森の奥に行った時だっけ。

昼間なのに、大雨で空は薄暗かった。

そう、両親の葬式中に、逃げだした時――――――


「・・・うぅっ・・・うぁあっ」

 私の泣く声は、降りしきる雨によってかき消されていく。

全てを失った悲しみに、同調しているのか、追撃をかけているのか、分からない。天から大粒の水が降り続けている。

 葬儀の会場を飛び出して一人森の奥の洞穴の中で、現実を受け入れられずうずくまっていた。

「どうして・・・・うぅっ・・・・」

 心配して探しに来る村人はいない。

恐らく、抜け出した事に気付いていないか、こんな奥にはいかないだろうと思いこんでいるらしい。

 両親は、盗賊から村人の命を身を挺して守り、そして―――。

 

 2人の姿は勇敢だった。

 すばらしかっただろう。

 娘として誇りに思える事かもしれない。

だが・・・


 残された現実は残酷だった。

私にとってどのような経緯で親が死んだかなんて関係がなかった。

最もこの世で愛していたと思われる人間を、世界から奪われたことに変わりはない。

 すると。

 洞穴の外に獣人の姿が見えた。


 コボルトだ。

かなり危険な魔物だから、見つけたらすぐに知らせろと言われていたか。


 ・・・ああ、ここで死ぬのか。

 もういい。この世に長くいる事もない。

コボルトのサーベルが真上から振り下ろされる―――と、その瞬間。


 コボルトのサーベルが止まった。

背後から槍か何かで突き刺されたようで、胸から槍の先が飛び出している。

 そのまま倒れると、後ろに少年の姿が見えた。

「ったく、葬式とか堅苦しいもんに付き合ってられるかよ。コボルトの肉は食えねぇから、毛皮だけ店に売り払うかな。と・・・あれ?」

 確か・・・イサとかいったか。

2つ上の少年だ。いつもたいして交流はない。

「お前、葬式は。村の人も全員出てたはずだが・・・まあ俺も出てないんだけど」

「もう良かったよ・・・あのままコボルトに切られて死ねばそれで良かったのに」

 そうだ、ここにいても絶望を味わい続けるだけだ。

「え、悲しい事言うなよ。って・・・俺も2年前はそんなんだったけな・・・。」

 イサの父は2年前に失踪した。

 ある日、討伐隊として森に出かけた時、敵の魔物によって隊は散り散りになった。

 なんとか体勢を立て直し、魔物達を掃討しきったが、イサの父はリーダー格と思われる魔物と戦っていて、その魔物共々何処かへ失踪してしまったそうだ。

「私には・・・何も無いんだよ、もう。」

「孤児院っつったらもっと向こうの村だな。親戚もいないんだろ。どうだ、お前、家に来ないか。」


 ―――え。

 唐突なその言葉に、初めは何を言っているのか分からなかった。

「そんな状態で死ぬなんて、人生もったいないぜ。お前の、生きる意味を、この世へ留まる価値を、俺と探してみようとは思わないか。」


 思考がはっきりしてなかったのか、何なのか、つい頷いてしまった。

 ただ――――――適当だけど、人を思っているであろう少年の言葉に、何処か惹かれていく自分がいた。

「行こうぜ。希望を探しにな。」


 洞穴から出ると、空は晴れ晴れとし、生い茂る木々の隙間からうっすらと虹がかかっていた。



「イサ、ありがと、本当に。」

「は?急になんだよ・・・。」

 少し照れているのか、とぼけているのか分からないがイサは急に静かになった。

+++++

↑これは視点が変わる合図です

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