マリ
少々1ページの文字数が少なすぎたかなと思う今日この頃です・・・。
家に帰ると、マリが血だらけで立っていた。
そう、血だらけで。
って、えぇ・・・・ち、血だらけ?
「ど、ど、どうしたんだおまえ」
よく見れば相当グロい映像だ、ていうか母さんは何も言わなかったのだろうか、て・・・
母さんが床で、こちらもまた血だらけで倒れている。
ん・・・?
マリが持っているのはナイフ・・・。
え・・・・。
この展開は、まさか超バッドエンドではないのか。
マリがナイフで母さんを突き刺して、こうなったと考えれば、全ての辻褄が合ってしまう。
「おまえ、ま、まさか」
マリはくるっと振り返ってこっちを見た。
ぞくっとした。さすがに血だらけの顔で振り向かれたらグロすぎる。
さらに手には血だらけのナイフ。
ゆっくり口を開いて、急に明るい表情になったかと思うと、
「もー、コックが暴れるからさー、ザクッて刺したら凄い勢いで血が飛んで、2人で血だらけになっちゃって、しかもお母さんが血だらけの私の顔見て泡吹いて倒れちゃって。」
「え、ああ、なんだ。」
一気に脱力した。
母さんは、そう言う事に凄い弱い。
生きたままの食材を捌けるようになったのも、マリが来てからだ。
マリは、親を失った子だった。
あれは、8年前、俺が9歳の時だったかな・・・。
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私は、初めてイサの家へ行った時を思い出していた。
きっかけは、葬式で逃げて森の奥に行った時だっけ。
昼間なのに、大雨で空は薄暗かった。
そう、両親の葬式中に、逃げだした時――――――
「・・・うぅっ・・・うぁあっ」
私の泣く声は、降りしきる雨によってかき消されていく。
全てを失った悲しみに、同調しているのか、追撃をかけているのか、分からない。天から大粒の水が降り続けている。
葬儀の会場を飛び出して一人森の奥の洞穴の中で、現実を受け入れられずうずくまっていた。
「どうして・・・・うぅっ・・・・」
心配して探しに来る村人はいない。
恐らく、抜け出した事に気付いていないか、こんな奥にはいかないだろうと思いこんでいるらしい。
両親は、盗賊から村人の命を身を挺して守り、そして―――。
2人の姿は勇敢だった。
すばらしかっただろう。
娘として誇りに思える事かもしれない。
だが・・・
残された現実は残酷だった。
私にとってどのような経緯で親が死んだかなんて関係がなかった。
最もこの世で愛していたと思われる人間を、世界から奪われたことに変わりはない。
すると。
洞穴の外に獣人の姿が見えた。
コボルトだ。
かなり危険な魔物だから、見つけたらすぐに知らせろと言われていたか。
・・・ああ、ここで死ぬのか。
もういい。この世に長くいる事もない。
コボルトのサーベルが真上から振り下ろされる―――と、その瞬間。
コボルトのサーベルが止まった。
背後から槍か何かで突き刺されたようで、胸から槍の先が飛び出している。
そのまま倒れると、後ろに少年の姿が見えた。
「ったく、葬式とか堅苦しいもんに付き合ってられるかよ。コボルトの肉は食えねぇから、毛皮だけ店に売り払うかな。と・・・あれ?」
確か・・・イサとかいったか。
2つ上の少年だ。いつもたいして交流はない。
「お前、葬式は。村の人も全員出てたはずだが・・・まあ俺も出てないんだけど」
「もう良かったよ・・・あのままコボルトに切られて死ねばそれで良かったのに」
そうだ、ここにいても絶望を味わい続けるだけだ。
「え、悲しい事言うなよ。って・・・俺も2年前はそんなんだったけな・・・。」
イサの父は2年前に失踪した。
ある日、討伐隊として森に出かけた時、敵の魔物によって隊は散り散りになった。
なんとか体勢を立て直し、魔物達を掃討しきったが、イサの父はリーダー格と思われる魔物と戦っていて、その魔物共々何処かへ失踪してしまったそうだ。
「私には・・・何も無いんだよ、もう。」
「孤児院っつったらもっと向こうの村だな。親戚もいないんだろ。どうだ、お前、家に来ないか。」
―――え。
唐突なその言葉に、初めは何を言っているのか分からなかった。
「そんな状態で死ぬなんて、人生もったいないぜ。お前の、生きる意味を、この世へ留まる価値を、俺と探してみようとは思わないか。」
思考がはっきりしてなかったのか、何なのか、つい頷いてしまった。
ただ――――――適当だけど、人を思っているであろう少年の言葉に、何処か惹かれていく自分がいた。
「行こうぜ。希望を探しにな。」
洞穴から出ると、空は晴れ晴れとし、生い茂る木々の隙間からうっすらと虹がかかっていた。
「イサ、ありがと、本当に。」
「は?急になんだよ・・・。」
少し照れているのか、とぼけているのか分からないがイサは急に静かになった。
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↑これは視点が変わる合図です