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虚飾の水鏡  作者: 麻生あきら
第二章 暁人

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8/10

01 言葉

 異邦人。

 俺は日本に来てから自分をそう思ってる。


 イギリスのキングス通りとテームズ川の中間、チェルシーに建つ祖母の家で育った。

 父はキングス通りの小さな店舗でアジア雑貨を売っている。

 京也の父とは大学時代の友人だ。それが母の兄。


 京也には三つ違いの妹がいる。

 まだ中学生だったその子に母は何かと世話を焼いた。

 京也の母が家を出て、『女親の愛を知らないから』そう言っていた。


 ──俺よりそっちの方が大事?

 時々ついて行った。

 毎回行かなければよかったと思った。

 父も祖母も温かかった。

 俺は慣れない日本で戸惑っているのに。


 それまで一年に一度は日本に来ていた。

 言葉に不自由はない。

 でも微妙なニュアンスと流行り言葉、それに仲間言葉も解らない。

 ずっと取り残された気分だった。


 


 高校でジェイに会ってからは少しマシになった。

 バカみたいにとんがってるジェイは、好きな音楽も同じだ。

 ジェイはゴシックパンクのあるギタリストに憧れてて、弦を引っ掻いて鳴らすのが気に入ってた。


「仲間言葉がわかんない? なら、俺達だけの言葉作ればいいじゃん」


 そう言って俺の背中を叩いて大笑いした。

 少し息をするのが楽になった。


「バンド組もうぜ」


 ジェイはどこからともなくベースとドラムを連れてきた。

 パンクのコピーから始まった。

 目茶苦茶な演奏でも誤魔化しがきいた。


 それでもリズム隊の粗が目立つ。

 歌いにくい。

 それなら無理やり巻き込んでやればいいか。

 俺のスタイルが決まった。


 恐怖のどん底に落としてやるよ。 



挿絵(By みてみん)

ラフ画はジェイ。本名不詳。

でもいい奴。

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