01 言葉
異邦人。
俺は日本に来てから自分をそう思ってる。
イギリスのキングス通りとテームズ川の中間、チェルシーに建つ祖母の家で育った。
父はキングス通りの小さな店舗でアジア雑貨を売っている。
京也の父とは大学時代の友人だ。それが母の兄。
京也には三つ違いの妹がいる。
まだ中学生だったその子に母は何かと世話を焼いた。
京也の母が家を出て、『女親の愛を知らないから』そう言っていた。
──俺よりそっちの方が大事?
時々ついて行った。
毎回行かなければよかったと思った。
父も祖母も温かかった。
俺は慣れない日本で戸惑っているのに。
それまで一年に一度は日本に来ていた。
言葉に不自由はない。
でも微妙なニュアンスと流行り言葉、それに仲間言葉も解らない。
ずっと取り残された気分だった。
高校でジェイに会ってからは少しマシになった。
バカみたいにとんがってるジェイは、好きな音楽も同じだ。
ジェイはゴシックパンクのあるギタリストに憧れてて、弦を引っ掻いて鳴らすのが気に入ってた。
「仲間言葉がわかんない? なら、俺達だけの言葉作ればいいじゃん」
そう言って俺の背中を叩いて大笑いした。
少し息をするのが楽になった。
「バンド組もうぜ」
ジェイはどこからともなくベースとドラムを連れてきた。
パンクのコピーから始まった。
目茶苦茶な演奏でも誤魔化しがきいた。
それでもリズム隊の粗が目立つ。
歌いにくい。
それなら無理やり巻き込んでやればいいか。
俺のスタイルが決まった。
恐怖のどん底に落としてやるよ。
ラフ画はジェイ。本名不詳。
でもいい奴。




