03 炎
「アキ、お願いがあるんだ」
訪れたアキの部屋で僕は切り出した。
僕はアキの顔が見られなくて、俯きながら言った。
「僕がルアードを抜けたら、君がルアードで歌ってくれないか?」
アキからは何の返事もない。突然言われても困るよね。
「アキならできると思うんだ。きっと。君なら任せられる。⋯⋯アキにやってもらいたい」
「⋯⋯」
「僕の⋯⋯、後任を。⋯⋯頼むよ」
顔を上げて、やっと目を合わせた。
嫌悪感に満ちた顔で僕を見るアキがいた。
「どういう事だよ?」
苛立ちを含んだ声でアキが言う。
ソロの話が出てる。メンバーは了承した。
戻るかどうかわからない。ひとまず海外を見て回って来る。
後任の話もみんなには話してある。
そうアキに伝えた。
「お膳立てされて人気バンドに移れって? 確かにうちは空中分解寸前だけど、だからって恵んでもらうなんて真っ平だ」
アキは僕の胸ぐらを掴んだ。
目の前に強く燃えるような怒り。
時折チラチラと見えていた炎のゆらぎを僕は知ってる。
──ああ、そうか。
「アキは僕が嫌いだよね? からっぽで、何もなくて」
「はあ?」
「でも、僕はアキが、⋯⋯羨ましい。今も僕をそんなに強い目で見てる。沢山の感情が渦巻いてる。⋯⋯僕にはないんだよ。そんな僕から、溢れる感情を持ってるアキに代わったら、ルアードがもっと良くなる気がする」
「なんだそれ」
投げ出すように僕を掴んでいた手を離す。
「良介も秀之も、抑えてる気がするんだ。僕が⋯⋯いるから」
「お前の色しかない所に入るなんて、ごめんだよ。もう帰ってくれ」
腕を取られ、外に追い出された。
駅に向かい電車に乗る。東京の東側から西側へ。
途中、秀之に公衆電話で連絡を入れた。
「離れる前に、秀之にお願いがあるんだ」
ラフ画はここに出てませんが、瀬川竜二です。
このシーンのリメイク前のマンガ版を活動報告に載せてます。
よろしければどうぞ。




