02 隙間
メジャーデビューして五年。
転機が来た。
「ソロになってみないか?」
そんな話が出てきた。
相変わらず歌うだけの僕なのに?
僕の声は自分ではわからないけど、何だか不思議なんだそうだ。
僅かに不安になるような、それでいて切なげ。
でも、そこがいいんだとか。
それでもこの嫌な顔と声だけで、ソロなんてどうにかなるものなのか?
顔の広い秀之が、友人を何人も紹介してくれた
作詞もいくつかやってみた。
ギターも弾けるようになって、作曲の真似事もしたり。
少しずつ僕の空間に入って来た。でも、まだまだ埋まってない。
空虚な荒野が広がってる。
「京ちゃん、俺達の事は気にしなくていいよ。せっかくのチャンスだ。やってみてもいいんじゃないか?」
良介が言う。
「俺と秀之が作り上げた『京也』は、あくまでも『ルアードの京也』だ。自分だけの京也を見せてはどう?」
自分だけの京也。
そんなものあるの?
からっぽな僕。がらんどうな僕。
ルアードで歌う僕をやめたら何になる?
「僕には何もない。何もないのにどうすればいい?」
「何もないわけ無いよ。初めて会った時は、そんな京ちゃんの現実味のない空虚さが目を引いたけど、今はもう違う。沢山の人と出会って、関わって、随分と変わったよ」
「そうなのかな⋯⋯。僕は変わった?」
あ、でも確かに、ちょっとは埋まったかも知れない。
誘われたあの時に比べたら、生きてる感じがする。
ふと気づいて、口元が緩んだ。
「ほら、それ。前は自然に笑う事も無かったよ」
口元に手をやる。
そうか。そうなんだ。
からっぽで笑えてなかったんだ。
知らなかった。
「あ、ありがとう。良介」
僕の言葉に良介は首を傾げる。
「あの時、誘ってくれてありがとう。何もかもが嫌でどうでも良かったんだ。⋯⋯あのままなら今どうしてるか、わからないよ」
良介は微笑んで、ただ頷いた。
ラフ画は良介。正統派イケメン。
京也、僕とか言ってますが、26歳です。




