01 顔
スタジオ帰りのコンビニ。
雑誌のコーナーにふと目を向けると、見知った女の顔があった。
『島田玲代不倫の果ての離婚』
「どうした? 京ちゃん。なんかあった?」
秀之は派手なルックスで口も悪いのに、その割に世話焼きだ。
心配げな顔で僕を見てる。
「この人、僕の母親。もう何年も会ってないけど」
雑誌の写真を指さす。
「え。マジで? ごめん」
──気にしなくていいのに。何とも思ってないよ。
実業家の父はただの金づる。自分が売れたから、もういらないんだ。
僕が大学に入って、成人したから離婚した。ただ、それだけの話。
高校に入る前から別居してたし。
だから、この女によく似た自分の顔は大嫌い。
この化粧映えする顔だから、バンド人気があるのは知ってる。
勿論、それだけじゃないのもわかってる。みんなとても真摯に活動してる。
歌うのは好きだ。
いろんな事を忘れさせてくれる。
良介の書く詩は、僕にしっくりして歌い易い。
秀之の創る曲も僕に合わせてくれてる。
そう、僕は歌うだけ。
やっぱり僕だけ、がらんどう。
それでもどんどん箱が大きくなっていく。
メジャーデビューもした。
裏で母親が手を回してると週刊誌に書かれた。
──勘弁してくれ。
リハーサル中に母親が来た。
「私のおかげよ」そう言って笑った。
思考が途切れる。
それから一気に頭の中で閃光が走った。
「みんなの力だ。今更母親ヅラしないでくれ!」
自分の形をした何かが色々叫んでる。自分を上から見てる感覚。
あ、僕はこんなに声を張り上げる事が出来るんだな。
でも何だか、他人事のよう。
ひとつ深呼吸。
自分の身体に戻った。
呆然とする母親を置いて、その場を後にした。
秀之は20代前半はずっとプリン頭でした。




