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虚飾の水鏡  作者: 麻生あきら
第一章 京也

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3/10

01 顔

 スタジオ帰りのコンビニ。

 雑誌のコーナーにふと目を向けると、見知った女の顔があった。


『島田玲代(あきよ)不倫の果ての離婚』


「どうした? 京ちゃん。なんかあった?」

 秀之は派手なルックスで口も悪いのに、その割に世話焼きだ。

 心配げな顔で僕を見てる。


「この人、僕の母親。もう何年も会ってないけど」

 雑誌の写真を指さす。


「え。マジで? ごめん」


 ──気にしなくていいのに。何とも思ってないよ。

 実業家の父はただの金づる。自分が売れたから、もういらないんだ。

 僕が大学に入って、成人したから離婚した。ただ、それだけの話。

 高校に入る前から別居してたし。


 だから、この女によく似た自分の顔は大嫌い。

 この化粧映えする顔だから、バンド人気があるのは知ってる。

 勿論、それだけじゃないのもわかってる。みんなとても真摯に活動してる。




 歌うのは好きだ。

 いろんな事を忘れさせてくれる。

 良介の書く詩は、僕にしっくりして歌い易い。

 秀之の創る曲も僕に合わせてくれてる。

 そう、僕は歌うだけ。


 やっぱり僕だけ、がらんどう。




 それでもどんどん箱が大きくなっていく。

 メジャーデビューもした。

 裏で母親が手を回してると週刊誌に書かれた。

 ──勘弁してくれ。


 リハーサル中に母親が来た。

「私のおかげよ」そう言って笑った。


 思考が途切れる。

 それから一気に頭の中で閃光が走った。


「みんなの力だ。今更母親ヅラしないでくれ!」


 自分の形をした何かが色々叫んでる。自分を上から見てる感覚。

 あ、僕はこんなに声を張り上げる事が出来るんだな。

 でも何だか、他人事のよう。


 ひとつ深呼吸。

 自分の身体に戻った。

 呆然とする母親を置いて、その場を後にした。


挿絵(By みてみん)

秀之は20代前半はずっとプリン頭でした。

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