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もう終わりだよこの国は

作者: てこ/ひかり

 M75星雲の中央に位置していた惑星1589-87R・通称『サジタリアス・メルシャン大帝国』は、一時期広大な銀河を支配するほどの栄華を誇ったが、建国からわずか一億年目にしてあえなく滅亡した。


 万博を批判されたからだった。


 帝国は他の銀河系と比べても数歩先をいった科学力を誇り、また自国民の教養も高水準だった。軍事力も毎年上位にランクインし、自然に恵まれ、農業も工業も盛んだったが、しかし、万博の批判にだけは耐えられなかった。


 国民は皆質実剛健で、かつて闇の勢力との戦争にも打ち勝った人々だったが、万博の批判をされると彼らはたちまち膝を突き、天を仰いで涙を流したと云う。 


 一億年の歴史を誇る大帝国は脆くも崩れ去った。万博を批判されたことで、惑星の天候は荒れ、大地は枯れ山は海は死んでいき、給付金も無く、国民同士の争いが絶えなくなり、ついには滅亡への道を突き進んだ。


 度重なる自然災害にも、人災にも耐えてきた。隕石衝突も持ち前の科学力で回避した。宇宙温暖化でも滅亡しなかった。臭い物に蓋をしても滅びなかった。プロパガンダを垂れ流しても、困ってる国民をほったらかしにしても滅びなかった。しかし、だ。


 帝国の栄光はもはや見る影も無かった。長い宇宙の歴史上、帝国は万博を批判されて滅びた最初の国となった。


 かつて宇宙を開拓し、その叡智と勇気で銀河に平和をもたらした国の末裔が、万博批判をされるとたちまち飯も喉を通らなくなり、声は震え、高熱を出し、赤子同然になってしまった。政府は慌てて万博批判を法律で禁止したが、それも後の祭りだった。


 また万博を批判されたらどうしよう。


 人々は怯え、苦しみ、未来への夢・希望を閉ざしていった。諦念や絶望が空を覆い、雷が降り注ぎ、地震や火事が頻発し、やがて銀河随一の帝国は滅びた。諸君らの愛してくれた帝国は死んだ! 何故だ!?


 それはつまり、万博を批判されたからである。

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