評価と試練
高校2年生の 風間涼かざま りょう は、サッカー未経験の普通の学生。運動神経はあるものの、特に目立った実績はない。ある日、強豪校・鳳凰ほうおう高校サッカー部のエースである幼なじみ 朝倉颯斗あさくらはやと に、「お前、サッカーやってみろよ」と冗談交じりに言われる。
最初は断るつもりだったが、試しにボールを蹴った瞬間、思いがけずゴールを決めてしまう。その才能を見抜いた顧問の 片瀬監督 に誘われ、初心者ながらサッカー部に入部することに。
しかし、当然ながら技術も戦術理解もゼロ。周囲の部員からは「素人が入ってくるな」とバカにされ、特にキャプテンの 三浦豪みうら ごうからは厳しく当たられる。だが、涼は諦めない。
「やるからには、本気でトップを目指す。」
ついに始まった、風間涼の本格的なサッカー部での練習。
基礎練習を経て、彼はいきなり紅白戦に挑むことになる。
その実力は本物か、ただのまぐれか――。
鳳凰高校サッカー部 練習グラウンド
放課後、鳳凰高校の広大なグラウンドにて、紅白戦が始まった。
風間涼が放った、無回転の一撃――
それは、試合の流れを変えるほどの衝撃だった。
しかし――
バチィン!!
鋭い音と共に、ゴール前の守護神・松田の手がボールを弾き出す。
風間「……なっ!?」
涼の中で、確かに「決まった」と思った瞬間だった。
静寂がグラウンドを包む。
坂下「まじかよ、今のシュート……」
松田「……すげぇな。あの球、マジで“消える”かと思ったぞ」
Bチームの仲間たちもどよめく中、キャプテン・三浦豪が歩み寄ってくる。
三浦「お前……本当に初心者か?」
風間「あぁ。まだ何もわかんない。でも……勝ちたいって思った」
三浦「……」
後半のホイッスルが鳴り響く。
汗が飛び、息が荒くなる。
AチームとBチームの実力差は歴然だったが、涼の放った一撃は、その空気を一瞬変えた。
ボールを弾いた松田が静かに言う。
松田「……今の、無回転だったな」
横にいた坂下が、口を開いた。
坂下「狙って撃ったのか?」
高橋がニヤリと笑う。
高橋「さぁな。ただ――面白くなってきただろ?」
試合終了後
片瀬監督「今日の紅白戦、いろいろ見えたな。Aチームは想定通りだったが、Bにも面白い奴がいた」
監督の視線が、涼に向く。
片瀬監督「風間、お前のあのシュート――狙ったのか?」
風間「……ただ、思い切り蹴っただけで……でも、なんか、“来る”って感じがありました」
坂下が目を細めて言った。
坂下「直感か。でもな、それだけじゃ通用しないぞ。お前、ポジショニングも、守備意識も、全然ダメだ」
風間「……わかってます」
松田が肩をすくめながら笑う。
松田「でも、俺は嫌いじゃねぇよ。ああいうの、面白いしな」
三浦は黙っていたが、涼に近づいてポンと肩を叩く。
三浦「“素材”にはなりそうだ。甘くはないぞ、鳳凰のレギュラー争いは」
風間「……それでも、やります」
三浦はにやりと笑い、言葉を残して去っていく。
帰り道
部活後、部室を出て並んで歩く涼と朝倉。
夕日が長く影を伸ばしている。
朝倉「……お前さ、本当に初心者かよ笑。無回転とか反則だぞ笑」
風間「いや、偶然だよ笑。でも……蹴った瞬間、なんか“行ける”って感じがあった」
朝倉「“来る”って感覚、だろ?」
風間「……うん」
朝倉はしばらく無言だったが、笑って言った。
朝倉「だったらさ、明日から朝練しようぜ。俺が付き合ってやるよ」
風間「……朝練?」
朝倉「今のままじゃまた松田に止められるぞ。お前、悔しくないのか?」
風間「悔しいに決まってる!」
朝倉「なら決まりだ。明日、朝7時。グラウンド集合な」
風間「……うん、ありがとう!」
翌朝
まだ薄明かりのグラウンド。
涼は一人、ランニングを始めていた。
風間(昨日のあのシュート、止められたけど――“届く”って思えた)
汗を流しながら、前だけを見て走る。
そこへ、朝倉が自転車を押して現れる。
朝倉「おーい!、先に来てんのかと思ったらもう走ってんのかよ!」
風間「うるせぇよ!」
二人の笑い声が、朝のグラウンドに響いた。
登場人物
風間涼かざま りょう(主人公)
朝倉とは幼なじみであり、サッカーは素人。次第に自分の才能に気づく。
朝倉颯斗あさくら はやと
風間と幼なじみであり、チームのエースFW。最初は涼のことを冗談半分で誘ったが、次第に彼の才能を認める。
三浦豪みうら ごう
鳳凰高校のキャプテンでMF。努力家。他人にも自分にも厳しい。
片瀬監督かたせ かんとく
チームの指導者であり、涼の可能性にいち早く気づいた人物。
松田まつだ 大輔だいすけ
鳳凰高校の守護神。一見冷静で無口だが、仲間思いで面倒見の良い性格。大きなプレッシャーの中でも安定したパフォーマンスを発揮し、チームを支える。
坂下さかした 亮介りょうすけ
冷静で理論的な性格。周りのプレイヤーを冷静に指示し、試合を落ち着かせる役割を持つ。感情的にはならず、いつも一定のテンションでプレイを続けるため、ピッチ上でも頼れる存在。