幕間 公爵視点
「ロザリーは楽しくやっているみたいだな、やはり植物院に行かせたのは正解だったな」
ロザリーからの手紙を読んでサンフェス公爵は笑みを浮かべていた。
「あの子が貴族に収まる器ではない事を察した貴方の眼力は素晴らしいですわ」
そう言うのはシルビア・アンヘルシア、ロザリーの母である。
「君も私の方針に頷いてくれた事を感謝してるよ」
「あら、夫を信じるのは当然ですし娘の幸せを案じるのも当然ですわ」
そう言ってシルビアはホホホと笑う。
サンフェスは本当にシルビアと結婚して良かった、とつくづく思う。
サンフェスとシルビアの結婚にはちょっとした一悶着があった。
元々二人には別々の婚約者がいたのだが結婚直前になって破談になった。
理由は相手側の浮気で二人は深くはないが心に傷を持つ事になる。
その二人をくっつけたのが国王である。
サンフェスとは同い年で貴族学院の学友でもあった国王はシルビアを紹介したのだ。
同じ傷を持つ二人は意気投合、結婚する事になった。
そして、生まれたのがロザリーである。
一人娘であるロザリーには幸せになってほしい、そこでサンフェスはロザリーの好きな事を徹底的にやらせる事にした。
その為に貴族の習い事を一連習わせてみたがどれもパッとはしなかった。
そんな中、使用人から『ロザリーが土弄りをしている』という報告を受けた。
サンフェスは直感的にコレだ!と思った。
本来 公爵令嬢が土弄りなんて褒めた事ではないし注意しなければならない。
しかし、サンフェスは注意する事無く動植物の本を買い与えた。
更に庭の一部をロザリーに与え好きな様にした。
ロザリーは喜んで花を植え育て綺麗な庭を作った、その延長線で新種の薔薇を作ったのだ。
ロザリーが『お父様見て! 見た事の無い色の薔薇が咲きましたわ!』と見せに来た時の笑顔を二人は忘れられない。
やはりロザリーはこの道に進んで正解だったのだ、と改めて確信した。
ロザリーの才能は国も認め貴族としては珍しい院への推薦も承認された。
おかげでロザリーの評価はうなぎ上りになっているらしい。
「まぁ、あの子は色恋沙汰よりも自然と戯れている方が幸せですわね」
「そのロザリーを受け止めてくれる人がいたら私達も歓迎しようじゃないか」
ロザリーがこれからどんな道を歩もうとも自分達は最大の味方であり続ける、サンフェスとシルビアはそう心に誓った。