幕間 アーネリア・ネリアバ公爵令嬢
アーネリア・ネリアバは所謂『公爵令嬢』である。
頭も良く、公爵令嬢としてのプライドも高く、貴族としてのマナーや身の振る舞い方は文句が無く隙が無い。
幼い頃から両親に『国の為に生きよ』、『王家に仕え将来の王太子妃になるのだ』と言われ続け努力してきた。
そんな彼女から見れば同じ公爵令嬢であるロザリーは異質な存在だった。
初めての出会いは王家主催の同年代の令嬢達のお茶会だった。
会場の隅で1人しゃがんでずっと地面を見ている少女がいた。
ちょっと気になり声をかけた、何を見ているのかと。
『アリを観ておりました』
彼女の視線の先にはアリの行列がいて巣に食べ物を運んでいた。
『巣の中には女王アリがいて外に出ているアリは女王アリの為に食べ物を運んでいるんですよ、その代わり女王アリは子供を産んでいるんですよ』
それは当たり前じゃないか、とアーネリアは言った。
『一見すれば女王アリの為に働くのは当たり前、でも見方を変えれば働きアリ達のおかげで女王アリは生かされている、と思うのです』
その言葉にアーネリアはハッとした。
『私達も民に生かされている、そんな事を思うんですよ』
これがロザリーとの最初の会話だった、と言ってもその後特に接点は無かった、何故ならロザリーは社交の場に滅多に出てくる事が無かったからだ。
しかし、アーネリアにとってこのロザリーとの会話は今も頭に残っている。
そして、今になって響いて来ている。
きっかけは王太子との婚約だった。
最初は嬉しかった、始まった王妃教育も厳しい物ではあるけどついていった。
が、徐々にだが違和感を感じ取るようになった。
王太子が自分に見向きをしていない、どっちかと言うと常に一緒にいるメイドの方が親しい雰囲気を出している。
婚約者となったアーネリアとしては面白くないので言葉は濁しつつ王太子にそれとなしに距離感を保つ様にと言ったが良い返事は無かった。
更には王家一族が集まるパーティーの場に婚約者である自分が呼ばれなかった、と言うかそんなパーティーがあった事さえ知らなかった。
取り巻きの1人に教えられたアーネリアは王太子に厳重に抗議をした。
王太子は後々にちゃんと紹介する場を設ける、と言ったがアーネリアの不審感は上がりつつあった。
そして、決定打となったのが同盟国を呼んでのパーティーだった。
そこで王太子の友人である別の国の王子から王太子とメイドの関係をチクられたのである。
その時は表向きは『あら、そうでしたの』とホホホと笑って過ごしたが内心は氷点下まで下がり更にマグマが沸々と上がって来ていた。
つまり自分は当て馬だったのだ、しかも国公認の。
今までの公爵令嬢としてのプライドはバキバキに折られ粉々になってしまった。
取り巻き達は同情の言葉を発するがアーネリアの耳には届いていない。
そんな時に思い出したのはロザリーの事だ。
彼女は貴族学院に通わず王立植物院で働いている、という。
アーネリアはロザリー宛に手紙を書いた。
『久しぶりに会いたい』と。




