公爵令嬢は見た!
あけましておめでとうございます、新作です。暇つぶしにどうぞ。
「婚約者候補から外れる事ってできますか?」
私は帰宅したお父様にそんな話を切り出した。
「いきなりどうしたんだ? ロザリー。 まぁまだ候補だから辞退する事は可能だがお茶会で何かあったのか?」
私、ロザリー・アンヘルシアにお父様であるサンフィス・アンヘルシア公爵が聞いてきた。
それも当然の話で今日はこのオーベル王国の王太子の婚約者候補となる貴族令嬢達を集めてのお茶会が開催された。
当然だが私にも招待状が来たので参加した。
「はい、どうやら王太子様には既に相思相愛の方がいらっしゃるようで……」
「それは本当か?」
「この目で目撃しましたので間違いありません」
私はお茶会で目撃した事をお父様に話した。
(うぅ……、緊張と飲み過ぎで調子が悪いわ……)
私は城内のトイレの個室に籠もっていた。
お茶会と言っても将来の王太子妃を選ぶ為の戦場、独特のピリピリした空気感がある。
そして、私はこのピリピリした空気が非情に苦手だ。
私はもう15歳、これから社交も多くなるのにこの見定めたりとか言葉の裏を考えたりしなきゃいけない事とかを思うと胃が痛くなる。
どちらかと言えば私は人よりも自然と戯れていた方が好きだ。
公爵令嬢としてはどうか、という声も聞こえなくもないがお父様もお母様も私の意思を尊重してくれている、今回だって『別に王太子妃にならなくてもいい』と言ってくれている。
(まぁ私に王太子妃の役目なんて務まる訳無いけどね)
そんな事を考えながら私はトイレから出て会場に戻ろうとした。
その途中で私は男女の声が耳に入って来た。
(あれ? この声は王太子様では?)
私は声が王太子様に似ていたので思わずその声がする一室の扉の隙間から中を見た。
そこには王太子様とメイド服を来た同年代の女性の仲の良い雰囲気が見えた。
(あら、王太子様には既に意中の方がいらっしゃるのね)
じゃあお茶会なんて開かなくても良いのに、とも思ったがしかしメイドを見てなるほどと思った。
城で働いているメイドは大体貴族でも身分が低い家の令嬢である事が多い。
つまり、彼女は男爵令嬢という事になる。
王太子と男爵令嬢、明らかに身分差のある恋だ、周囲が反対するのは目に見えている。
(だから、ここで密かに逢瀬しないといけないのね)
こんな所でしか会えないのはちょっと同情してしまう。
そんな事を思いながら私は立ち去った。
「……という訳でございます」
「ふむ、なるほどな」
私の話を聞いてお父様は顎を撫でていた。
これはお父様が何か考えている時の癖だ。
「……話はわかった。 公にされてない、という事は国王は知らないのか色々あるんだろうな、ちょっと調べてみよう」
この日はこれで話は終わった。