俺の極”普通”の学生生活
俺こと、『七俊雪那』は"極"普通の人間だ。特にこれと言った才能もなく特技も特にない。少し人と違う点があるとすれば、親が海外で出稼ぎしているため一人暮らしをしているという点だ。変わっているっていうのはこれ程度だろう。一応、中学生の妹もいるがあいつは今、祖母の家で暮らしてもらっている。月に一回ぐらいのペースで俺に会いに来てくれている。そのため妹のことについては別になんとも思っていない。
学校での俺という存在を例えるならラノベ等の表紙で出てくる後ろの方にいる者、居るに居るが認知はされないような存在それが七俊だった。かといって別に友達の居ないってわけでもない。友人なら数人いるし仲良くしている。
しかし、そんな七俊の学生生活が一気に変わってしまった。
今は、一人の同級生ぐらいの美少女と同居している。
ここまではまだいい、いや、良くはないんだけど......。
何故か今俺は女子校に通っている。
──遡ること2週間前
なんてことない俺の普段の一日......。
俺は購買で買ったパンの最後の一切れを口に入れしっかり噛み飲み込んだ。
「ごちそうさまでした」
空になったメロンパンの袋に手を合わせた。パンの袋を机に置いたまま机に顔を伏せる形になり空を見上げた。
いい天気だ。今日は清々しいほどの雲一つない晴天。日差しが少しきついのが減点だがそれ以外は言うことがない。
こんな日の昼休みには昼寝をするにかぎr
「セッツー君!こ、これ見てよ!僕ついにやっちゃったよ!!」
目の前には前髪が目の下まで伸びており身長はそこまでないザ陰キャって感じのヤツが居た。この子は『耳鳴真木』君だ。サナキは俺の数少ない友達の一人だ。
普段は良いやつだし話していて楽しいんだけど......。オタクなんだよな〜。
自分の好きなもの話が始まったらサナキは止まらない。最近はなんだっけ?ぶい...ブイテイバー(?)的な物にハマったって言ってたな。
多分今回もそのことについてだろう。正直俺には流行りとかアイドルとかあまりわからない。その代わりにアニメとラノベ、漫画の話ならサナキに着いていける。
サナキと仲良くなったきっかけ自体がアニメの話だったからな。
「へー?何やっちゃったんだよ?まさか犯罪?確かにサナキならやりかねないが...... 安心しろ俺はサナキを信じるよ」
「してないよ!?セッツー君は僕をそんなやつだと思っていたの?」
冗談交じりの返しをしてやった。これも日常茶飯事なためサナキも簡単に返してくる。こういうふうに返してくれる。それがこいつの良いところだ。
「思ってないよ、で?何したんだよ?」
サナキは”あっ”っという表情をして直ぐ様自分の手にあるスマートフォンを俺に見せてきた。しかし、ロック画面がかかったままのためサナキが好きだと言っているブイテイバー(?)のイラストがあるだけだった。
「ワー、スゴイスゴイ」
「そうでしょ!ついにセッツーくんにもVtuberの話が通じるようになったかー」
「いや、サツキ。ロック画面見せて何がしたいんだよ?」
え?とサツキは驚いたように言った。慌てて確認するとロック画面のままだった。
「ご、ごめん!本当に見せたかったのはこれ!」
いつの間にかロックが解除されている。多分サナキはロックを指紋認証にしていたのだろう。すぐにロックが解除されている。
そして、見せてきたのはYuutubeの動画の一部だった。スパチャを投げられそれに反応するYuutuberの姿があった。こんなの別に珍しくない。そう思った。
「このスパチャ送ったの僕なんだよね〜 ついにラライブの時音ちゃんに反応してもらえたんだ!僕は嬉しくて嬉しくて! それでね──」
──数十分後
「あっ!もう、昼休みが終わっちゃう!それじゃあ、僕は席に戻るね それと今日は 僕同好会のみんなと話し合いだから一緒に帰れないや ごめんね!」
「お、おう」
そうじゃあ!と言ってサナキはさっささっさと自分の席に戻っていった。
ああ、ひどい目にあった。あの後も昼休みが終わるまで話を聞かされた。
てか、ブイテイバーじゃなくてブイチューバーだったか。まっいっか。
次は俺の好きは話をしまくってやる。
そんなことを考えながら次の時間の準備を使しようとしていた。
ん?
何やら長方形のハガキくらいの大きさの紙が俺の机の中に入っていたのだ。
それを手にとって見るとハート型のシールで封じられた封筒があった。
『七俊雪那 様』と書かれている。つまり、俺宛で間違いがないということがだ。しかし、誰がこんなものを?
その疑問が頭によぎって来た。だが、読まないわけにも行かないためシールを爪でペリッと剥がし中にある紙を取り出した。
そして七俊は手紙に目を通した。
その手紙には......。
〔『拝啓 七俊雪那 様』
突然の手紙すみません。
早速本題なのですが、今日の放課後に六甲魏魂まで来てください。
絶対ですよ。
待っています。]
とだけ書かれていた。
今日は暇なためどうせドッキリが罰ゲームかなんかだろうが暇つぶしとして言ってもいいと思っている。だが場所が問題だ、六甲魏魂はちょうど七俊と同い年である隣町の高校1年生が入り行方不明になった例がある。他にも俺が今通っている学校の先輩の代でも2人高一で中に入り行方不明になっている。他にも良からぬ噂を耳にしている。そういうわけだから、六甲魏魂は今立入禁止となりこの地域の都市伝説となっている。
たとえすべて、噂だったとしても迂闊に入れば自身の身に危険が及ぶのはわかっていた。
だが......。
──放課後
俺は今六甲魏魂に向かっている。
なぜかと聞かれると俺にもよくわからない。ただの好奇心だったのかこんな手紙を送ってきた奴を見返したかったのか......。
実は前に一度だけこのあたりを通ったことがある。だが、幼い頃だったため記憶が曖昧たった。それでも、その時も別段恐ろしいとは思っていなかったが、やはり不気味なものは不気味だ。
なんていったて、六甲魏魂は廃墟化した旧図書館がでありそれはもう100年近く放置されている。そんな状況だ。
目の前にある立入禁止のテープを跨がり通り越し六甲魏魂の中へ入っていった。
中は道がほとんど消え辺りも薄暗く雰囲気は最悪だ。まるで、知らない間にお化け屋敷の中に入ってしまった様な気分だった。
普通の人なら嫌だと思うのだろう。だが七俊は違った。
七俊にはなぜだか嫌な感じは全くしてこなかったのだ。
むしろ、落ち着く。そんな気分だった。
奥に進むに連れて暗さが一層に増してくる。
ザッザッザッ
カーカーカー
自分の足音とカラスの鳴き声この2つしか音がない。
それでも、七俊は歩み続けた。
ついに中に入るための扉の前まで来た。
この扉、開くのだろうか?そう思った。もう100年も放置されてきたのだ。開かなくても不思議ではない。
少し考え少しためらいながらもサビきり汚れたドアノブに手を掲げ開くか確認した。
ガチャ
「お?」
100年間誰も手を付けなかったというのに少し前まで誰かが使ってたかのように簡単に扉が開いたのだ。驚きながらも中に入りまた足を進める。
中は一層不気味だった。汚れきった本、散らばった大きい本に誇りだらけの床、更には倒れた本棚など、ザ廃墟って感じだった。
さて、中に入ったが俺を呼んだであろう人物はどこにも見当たらない。
やはり、ドッキリか罰ゲームだったのか?首を捻らせながらそんなことを考えていると──
ザッ
!?
今なにか気配を感じた。
七俊は辺りを見渡した。
だが、特に異変は無かった。
体から変な汗がポトリポトリと流れ落ちている。
だが、やはりどこにも音の正体らしき人物はいなかった。
気のせいかと思いまた一歩足を進めようとした瞬間。
サッササ
!!
明らかになにかいる。
確信した。
先程は聞こえるか聞こえないか程度だったが今回ははっきり聞こえた。
「お、おい! 誰だ!出てこい!」
恐怖が迫りながらもなんとか今出る全力の声を出した。
タッタッタ
こちらに向かってくる足音が聞こえた。
確実になにかが来る。
「だ、誰だ!!」
大声でいった。自分でも驚くほどの大きい声だった。
人間は本当に恐怖を感じたときは声が出せないと言うが七俊は大声を出し続けた。
「はははっ!そんなに大声を出さなくても聞こえてるよー」
中性的な声が真っ暗の小部屋から聞こえた。それと同時に声の主の姿が現れた。
声の主は髪はショートで一見女性にも男性にも見えるだが服装はかなりあざとい格好をしていた背中はほぼすべて露出してしまっている上ファンタジー感のあるコスプレとも思える謎の衣装を纏っていた。ちらりと顔から目線を下げた。で、デカイ......。胸はかなりのデカさだったEいやFぐらいか?アニメ基準にしかできないから実物はよくわからない。身長の方は俺より少し下ぐらいってところだった。
「あ、あはは、そんなに見られると照れるなぁ///」
彼女は少し恥じらいながらこちらに向かった。
「あっ、わ、悪い」
「うんうんー、いいよ。で?七俊君だよね?」
少女はそう問いただしてきた。
今の場所だと彼女と少し場所に距離があると思った俺は彼女に少し近づきながら答えることにした。
「ああ、そうだがお前は──ッ!?」
だが足元にあった古く汚れた本が散らばっていた。本に足をぶつけ、そのせいで七俊はバランスを崩されそのまま倒れてしまった。
ゴォン!!という音が聞こえ頭を打つと思ったが今の感触はそれとは真逆だった。顔はふわふわとした物に当たったおかげで怪我をせずに済んだ。それより少女は?と顔を起こしたそこには先程話していた少女の赤く染まった顔があった。
............。
もしかして、このふわふわしているものって......。
「わ、悪い!これは、わざとじゃ......」
「は、早く頭をどけて!!」
そう言って彼女は俺を慌てて突き放したのだ。
俺の体は一瞬にしてバランスを崩した。
咄嗟の事だったため体がすぐに反応しない。
このままだと無抵抗の中地面にぶつかる。
一瞬の出来事だったが七俊には長い出来事のように思えた。
ガァン、バサッッ
頭が地面にぶつかる。当たりどころが悪かったのだ。
目の前が暗くなっていく。普通なら痛いだけで済むはずが痛いだけでなく意識が遠のいていく。
そして、七俊はゆっくりと気を失っていった。
────
「はぁ、一応聞いてから契約しようって思ってたのに...。自分から契約しちゃうなんて 僕もびっくりだよ 起きたらびっくりするだろうな──」
そう言いながら少女がフッと笑っていた。