破壊と再生の輪廻… そしてまた人類は生きる道を選ぶ
この惑星は、人類と呼ばれている生物の中で、地球と呼ばれていた。
もちろん、決して彼らはこの星の支配者ではなく、底辺でうごめく生物に過ぎず、脆弱なエレメントの一つでしかない。
しかし、人類は文字や言葉を使いコミュニケーションも図れるし、移動手段の発明や、あくまでも彼ら目線に於いて、膨大な計算能力を持つコンピュータの開発などをして、まるで支配層のように振る舞い、地球という星の時間軸に存在していた。
その彼ら人類の、叡智を超える存在として太古から密接に関わっていた、異世界の住人達。
すなわち地球の真の支配層で、人間たちから『神』と崇められていたり、或いは『悪魔』などと怖れられている姿の見えない存在が、人類への大規模なアップデートを行うことを決め、その手段と方法や時期、参加者などを選んでいた。
きっかけは他ならぬ、多くの人類達が各々の信奉する神々への祈りだった。
そしてまた、信仰をもたない無神論者たちでさえも、環境や経験から湧き出た願い事のベクトルが、平和を希求していた。
もし、人類が破壊ばかりの惨劇を続けてしまうと、神族、魔族にとってさえも、大きな影響を及ぼす。
闇が深ければ暁も近い。混乱が大きいほど、その後の世相は安定し、繁栄へと向かう。
まるで人類の歴史は、覇権で世界を治めてきた王族や為政者、権力者などが、世界を動かしてきたかのように語り継がれているが、
その認識は、大海を知らぬカエルの如く、あくまでも人類を主観的にみただけの、浅はかな視点でしかない。
神や悪魔と呼ばれるその生命体。いやむしろ、生きとし生けるものすべての時間軸と意志そのものである彼らが、絶妙なタイミングで地球という生命体を調整して現在があるのだ。
そして、その人類の祈りに呼応して、魔物と神々による淘汰がいよいよ始まった…
戦いのあとは、真の支配層による、新しくプログラミングされた価値観に基づき、個人、或いは家族、そして、もちろん国家単位で再生が行われる。
そのためには、人間でいうところの、頭脳と精神を司るもの。つまり人格だと錯覚しているビークルの中身を、新しくインストールする必要がある。
その、神と悪魔の使う力をイメージで言語化すれば、高次霊格という普通の人間とは比較のできない、並外れた意志の集合体を召喚し、それを選抜した人間に憑依させる。そして、彼らを再び現実世界へ戻すことで完了するイニシエーションで、それを人類は何度も経験してきた。
戦争、天災、疫病などはその最たるものであり、神の力か、悪の力かは別として、繁栄が臨界点に達すると、必然的に起こる反作用で、その調整をしているのは、もちろん彼らであるのは言うまでもない。
そうしてまた、次の新しい戦いという名の、調整が始まった。
まず神々と魔物たちは、
現存する人類の、世界で知られた英傑の中から13人と、その他に、無名の勇者77人を憑依者としてピックアップして、合計90人の人間たちに、高次霊格を召喚し、憑依させる競技会の開催を企てた。
会場はない。日時もそれぞれバラバラだ。
なぜなら、それはすべて夢の中で行われる。
選ばれた人間たちにも、まず記憶には残らない。無意識のうちにそれは遂行される。
神々と魔物たちは人間と違い、ありとあらゆる時空に入り込み操作をするのは、至極容易で簡単な作業なのだ。
そうやってこの星を支配してきたし、それはこれからもただ続いていくだけのことだ。