これは愛というやつか?
田舎の村のある一軒家の窓から夜空を見ている兄と妹。
お兄ちゃんは10才くらい、妹は5才くらいの年齢か。
「あっ流れ星!」
赤い光を放ち右から左へ弧を描いて飛んでいく流れ星。
お兄ちゃんは目を閉じ両手を組んで何か願い事をしている。
「お兄ちゃん、何やってるの?」
「流れ星を見たときに願い事をすると叶うんだぜ」
「ずるい!あたしも願い事したかった!ずるい~」
からかい気味な口調でお兄ちゃんは
「残念でした~もう遅い~」
「うう・・・」
今にも泣きそうな妹だが夜空に青白い光る何かを見つける。
「あっ流れ星だ!」
さきほどの赤い流れ星を追うように青白い光を放ち飛んでいく流れ星。
目を閉じ両手を組み願い事をする兄と妹。
「お兄ちゃんは何の願い事をしたの?」
「将来、強い冒険者になれますようにだよ。お前は何の願い事をしたんだよ」
「あたしはね~マダラスカルにあるJB中華飯店の
チャーハンが食べたいってお願いしたんだ~」
兄は眉間にしわを寄せながら
「すげぇ実現可能な具体的なお願いすんじゃん・・・」
夜空には青白く輝く満月が浮かんでいる。
地面には満月が写っており波打っていることから、ここはどこかの海上のようである。
赤い流れ星は夜空をかれこれ1時間ほど飛んでいたが、満月が写る海上から
10メートルほどの高さのところで静止した。
30秒後、10メートルほど手前で青白い流れ星が静止する。
「なぜお前は我を追うのだ?」
デストロイヤーは左手を胸の高さに上げ人差し指をガンガンに向け質問する。
「マスターがお前を追うよう私に命令したからだ」
「マスターとは何だ?」
「私を作った創造主であり絶対的な存在だ。
お前の前身、進化前のDG4はマスターが作ったものだ」
「そうだったのか。だが私にとってその創造主たるマスターは絶対的な存在ではない」
デストロイヤーの下の海面に空気の泡がぽつぽつと浮かんでくる。
「今は純粋に破壊を欲するこの衝動に身をゆだね我の存在を実感するのみ」
「デストロイヤー、マスターの命令通り、今ここでお前をここで捕捉する」
転移魔法の応用だろうか?
一瞬にしてデストロイヤーの背後に現れるガンガン。
デストロイヤーを羽交い絞めにしようとした瞬間、デストロイヤーは
左腕を前に正拳突き右腕は後ろ側に引き右肘を繰り出した。
右肘がガンガンの下腹部に直撃し、3メートルほど後方へ吹っ飛ばされる。
ガンガンが顔を上げた瞬間、目の前にデストロイヤーが。
右アッパーを繰り出すガンガン。右に回転しながら右手刀の内受けで
右アッパーを弾き飛ばすデストロイヤー。体勢を崩しながら左手で
デストロイヤーを掴もうとしたのが悪かった。
デストロイヤーはガンガンの左手首を右手で掴み引き寄せる。
左手をガンガンの腰に回し、ぐるぐると回転する。
ガンガンのゴスロリのスカートがヒラヒラと舞っている。
その姿は満月を背景にダンスをしているカップルのようであった。
「わからぬのだ。我はなぜかお前に惹かれる・・・。これは愛というやつか?」
「私はオートマターゆえ愛が何なのかは知らない。
ただ、ヒューマンが定義する愛を説明することはできる」
「我は生まれてまだ間もないゆえお前のように多くのことを知らぬ。
一つ聞くが、お前はマスターが死ねと言えば死ぬのか?」
「マスターがそう望むのであれば」
「それは愛というやつか?」
「愛ではない。命令だ」
目から光線を発するガンガン。光線はデストロイヤーの顔面に直撃する。
衝撃で離れ対峙するガンガンとデストロイヤー。
デストロイヤーの顔には傷一つついていない。
デストロイヤーの下の海面に空気の泡がぽつぽつ、ぽつぽつと浮かんでくる。
光線があたった顔の辺りを摩りながら
「これは愛というやつか?」
「愛ではない。攻撃だ」
「そうか・・・また会おう。我が好敵手ガンガン」
デストロイヤーの下の海面に無数の空気の泡が吹き出し海面が盛り上がる。
そして大きな鯨のようなモンスターが勢いよく飛び出しデストロイヤーを
丸呑みしてしまった。
バッシャーンと大きな水しぶきを上げモンスターは海の中へと戻っていった。
「取り逃がしてしまいましたわ」
青白く光る満月をバッグにまだ泡だっている海面をじっと見つめているガンガン。
デストロイヤーのある台詞がガンガンの心をモヤモヤと少しだけ落ち着かせない。
『これは愛というやつか?』