ドグレッタの夢みた家
とある森。夕暮れ時、カーカーとカラスが鳴く日常の光景。
突然飛び去る10数匹のカラス。
その内の1匹が空中で大きな黒い鳥にハントされる。
木の枝に止まったハンターは・・・カラスである。
しかし、大きさが通常のカラスの2倍はある。大きなカラスはハントした
通常のカラスの首をつつき噛み千切る。
胴体部分を足で掴み、ポイっと投げ捨てた。
頭の部分を咥えると大きなカラスの左の首あたりから
3本のミミズのような触手がニョロニョロと
生えてきて咥えているカラスの頭部を絡め取った。
そして大きなカラスの左首に絡め取った頭部を融合させた。
大小2つの頭になったカラスはその場で小刻みに震える。
融合されたカラスの目に生気が宿り、口を開けカーと鳴く。
そして枝を蹴り翼を広げて双頭のカラスは夕暮れの空を飛んで行った。
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グランドキャニオンのような険しい渓谷の洞窟の中。
開けた空間には地下水で出来た大きな池があり、その上には中流貴族が住むような
大きくもなく小さくもない洋館が建てられている。
洋館の中のある一室。町工場の作業所ほどの大きさといえばよいだろうか。
天井はなく広々とした空間ではあるが、おしゃれな壁紙と
調度良い感じに配置されたアンティーク風な家具があるからだろう。
殺伐とした感じではない。
部屋の中央には石のレンガで積み上げられた高さ50センチ、
直径5メートルほどの丸いプールがある。
どうやら地下水を引き込んでいるようである。
アンティークのソファーの上にちょこんと座って本を読んでいるドグレッタ。
すぐ近くにはドグザーヌが馬が座っているときの格好で休憩している。
上半身の人間の部分はドグレッタが座っているソファーにもたれかかっている。
ドグザーヌが
「このような場所を用意していたのですね、お母様」
窓の外を見ているドグロック。
「ひんやりとして蛇ベースの私には快適な温度です、お母様」
本を読むのをやめ、ソファーの上に本を置き
プールの方へゆっくりと歩いていくドグレッタ。
「所長には内緒だがな。
色んなことが落ち着いたら、お前たちと家族水入らずで過ごしたいと思ってな」
プールの水を覗き込むドグレッタ。
「そのブールはドグミーナ用なのでしょう、お母様」
「その通りだよ、ドグザーヌ。
ドグミーナだけ家の中へ入れないのは寂しいからね」
「ピュロロヒュロ(お母様、ドグミーナです)」
「どうした?」
ドグミーナから念話が届く。
「ピュロロヒュロ(デストロイヤーと思わしき固体を確認いたしました。
でも、すごいスピードで飛行中なの。現在、追跡中だけど
ついて行くだけで精一杯)」
「よくやった、ドグミーナ」
「ピュロロヒュロ(ふふふ、お母様に褒められたわ)」
「ところで、ドグマへ連絡は取れたのか?」
「ピュロロヒュロ(多分・・・ベイベェーって言ってたから)」
「あのバカ息子が・・・まあよい。ドグミーナ、そのまま追跡し
デストロイヤーが停止したら、位置情報を知らせてくれ。転移魔法で飛ぶ」
「ピュロロヒュロ(了解、お母様)」
プールを背に振り返るドグレッタ。
「ドグミーナがデストロイヤーを追跡中だ」
座っていたドグザーヌが立ち上がる。
窓の外を見ていたドグロックがドグレッタを見てゴクリと一回喉を鳴らす。
「連絡が来次第、奴を捕まえに行くぞ」
人里離れた険しい渓谷の洞窟内ではあるが
ドグレッタが家族との生活を夢見て建てた家。
残念ながらこれを最後に、この家に家族が集まることは・・・無い。
ソファーの上に置かれた本には可愛らしい花柄のブックカバーがなされていた。
ドグレッタが何の本を読んでいたのはわからない。
花柄のブックカバーだけがドグレッタの心を内を表現していた。




