赤兎馬の退屈しのぎ
「気孔龍神波!」
ギュルルルル!右回転の螺旋の闘気が
第二陣の小型ナブルモササウルスと
第一陣で死亡した死体
を巻き込み洗濯機の水流の中にある洗濯物のように右回りで回っている。
が、あきらかに第一陣で放たれた気孔龍神波と比べると威力が弱い。
生き残った4匹が襲い掛かってくる。
「ハイヤぁ!」
「ソヤサぁ!」
先ほどと同じく2体はリンリンとランランが撃退する。
「フン!」
アッツシンがナブルモササウルスの顔に右フックをかましたあと、
脳天に綺麗な左踵落としを決め1匹を撃退する。
「ハっ!」
タッカロンが右手刀をナブルモササウルスの頭に振り下ろす。
グギャンという骨が砕ける音がして地面に叩きつけられ絶命するナブルモササウルス。
イケメンということで忘れがちだが二人とも超林寺のモンクである。
実力はリンリンとランランと同等というところだ。
ヤンチャオが両手をブラリと下げ、肩で息をしながら
「はあ・・・はあ・・・1日に3発・・・それに連続で2発・・・さすがに限界だ」
モモのすけはヤンチャオの左肩を後ろから右手でポンっと叩き
「上出来だ」
モモのすけは万感鼻感中のワンセブンを見て
「ワンゼブーン、あと何匹くらい残ってる!」
目を閉じ鼻をピクピクさせているワンセブンは
「小型はあと10体、ホールで卵の周りをうろうろしているワン」
「全部は誘き出せなかったか・・・」
俺っちを見るモモのすけ。
「レニー、もう1回・・・」
「冗談じゃねぇ!誰がもう1回おとりになるかってんだ!」
モモのすけが真剣な顔をして俺っちに告げる。
「レニー、今この状況でお前に何ができる?言ってみろ」
周りを見渡す俺っち。
中年男のリーはおとりになれば確実に途中で追いつかれ殺されるだろう。
年寄り、かつ、あの走りにくい衣装のケンケン老子も同じだ。
リンリン、ランランは女性だし。
ワンセブンは万感鼻感とかいう術の最中。
モモのすけは指揮官だから仕方ないとして・・・モンモンは?
「モンモンの分身体は使えないんっすか?」
「あれは万感鼻感のアンテナ役として使っているからダメだ。
先ほどお前さんを助けたのは緊急事態だったからな。
あのタイミングでモンモンの分身体が助けに入らなければ
お前さんはあそこでナブルモサザウルスになぶり殺しにされていた。
俺たちは最下層まであと13、14、15と進まなきゃ~ならん。
この先何があるかわからん以上、戦力は極力温存しないといかんのだ」
消去法でいけば、あのイケメンマッチョ二人と俺っちしか
おとり役はいないってことか・・・。
イケメンマッチョ二人をじっと見つめる俺っち。
アッツシンがはぁ~んみたいな見下した感じで
「何だ、俺たちに何か言いたいのか?」
転生前のカズキだった頃、洋風レストランで
あきらかに客が注文を間違っているのに
「何だ、俺は客だぞ!」
俺っちが注文をとり間違えたと一方的に言われ
「代金はお前のバイト代から引いておくからな!」
と店長から理不尽に言われ泣き寝入りをしたことを思い出していた。
あの時の悔しさを異世界へ来た今この場で思い出すとはね。
だが、先ほどの生死を掛けたあの土壇場での二人の裏切り行為、
石を投げずに先に逃げたあの行為、転生前のレストランで受けたあの理不尽と
比べ物にならねーくらい悔しい。
クッソ~・・・俺っちに力があれば・・・。
あのイケメンマッチョ二人をこの場で張ったおす・・・
ごめんなさいと言わせる力があれば。
冒険者ランクすらつかない弱小レベルの吟遊詩人の俺っちはこれから先も
こういうことは頻繁にあるに違いない。
(俺っち自身が強くならねーと・・・)
「OK、わかったよ・・・もう1回おとりでも何でもやってやらぁ!ただし・・・」
覚悟を決めた顔でモモのすけの方を向く俺っち。
「今度は俺っち一人でおとりをやる」
強くなってやる・・・、ロックンロール!
●
「ところで赤兎馬さんはなぜ、あの人達全員をダンジョンへ転移させたのでしょう?」
エレガント立ちで赤兎馬へ1歩近寄るガンガン。
黒いゴスロリスカートがふわっと揺れる。
「さすがはガンガン老子、全てお見通しとは!」
「いえ、私は・・・」
「あの中にカンチャオの子孫がおります」
「ヤンチャオさんのことですね」
「そうです、そうです」
「先ほどガンガン老子が間違えてあけた宝箱の中に
小さな金属性のお猪口があったかと思います。
あれは我が友カンチャオから預かったものなのです」
「そうだったのですね」
「私が認めし者に渡すことになっておりますが・・・
あれから300年間、誰一人として私の前に現れず。
正直退屈しておりましたところ、まさかのガンガン老子のご来訪。
このタイミングだ!っと思い退屈しのぎを兼ね、あそこにいた者全員を
ダンジョンへ転移させてしまいました。
そのついでにヤンチャオがここまでくれば
カンチャオとの約束を果たすことができ一石二鳥であるな~と。
はははははは」
転生者はトラブルに巻き込まれ易い。
要は赤兎馬の退屈しのぎに俺っちは巻き込まれたってやつだったのね。




