再び気孔龍神波(きこうりゅうじんは)
(この先のホールにあれがいるのか・・・)
あれとは小型のナブルモササウルス。
ダンジョンの通路を抜けホールに出た俺っちとイケメンマッチョ二人は
右からアッツシン、タッカロン、俺っちの順番でかがみこみながら
岩陰に隠れホール内の様子を観察する。
薄暗いため、どこまであるのかわからないが、とにかく大きな池がある。
その中央に瓦礫が重なり出来た瀬があり、
その上に8メートル級のやつが寝そべっている。
(デカイ!何だあの大きさ・・・)
残りの2匹の姿は目視できない。多分、池の中に入っているのだろう。
タッカロンが俺っちの肩を叩き右側を見ろとジェスチャーで知らせてくる。
右側を向いて池の水際を見ると直径50センチくらいの丸い白い卵が4個
乱雑に置かれてあり、その回りを4~5匹の小型のナブルモサザウルスが
うろうろと衛兵のように警戒にあたっていた。
俺っちはモモのすけが言っていたことを思い出す。
『お前達3人は手ごろな大きさの石を持って
卵に投げつけたら全力で指定した場所まで走ってこい!』
周囲に手ごろな大きさの石が無いか探す俺っち。
あった!野球のボールくらいの大きさの石だ。
右手に持つ俺っち。イケメンマッチョ二人も手に石を持っている。
イケメンマッチョ二人とのあのやりとりを思い出す俺っち。
『俺達に万が一のことがあったら沢山のファンを泣かせてしまうからダメだ』
『君には沢山の泣いてくれる人・・・いるのかじゃん?』
『いるっすよ・・・父に母に、そして兄が』
『はーっはっは、それってデフォルトじゃん』
馬鹿にしやがって!本当に嫌な奴らだと思ったけど、今は生死を掛けた
この戦いに挑む仲間。何か信頼というか絆を感じるぜ。
もしかしたら、こいつらの顔を見るのもこれが最後かもしれない。
もちろん、助かるのは俺っちだけどな。
3人は顔を見合わせる。そしてタイミングを合わせ
「せーの!」
岩陰から立ち上がり石を卵目掛けて投げた・・・のは俺っちだけ。
イケメンマッチョ二人はその場に石を投げ捨てすでに走り逃げている。
ちょっとでも仲間かもと信頼した俺っちがバカだった!
「それが、それがお前達の超林寺のやり方かあああああああ!」
俺っちが投げた石が卵に当たりヒビが入る。
「グエッグエッグエッグエッ!」
怒り狂った小型のナブルモサザウルスが全匹こちらを向いて全速力で走り出す。
全速力で逃げる俺っち。
『いいかレニー。卵にちょっかい出した後はこの位置まで後ろを振り向かずに
全速力で走ってこい!』
「ハア、ハア、ハア」
ドックンドックン、心臓が耳から飛び出してきそうなくらい鼓動が聞こえる。
『この通路を左に曲がると長めの一直線の通路がある』
「ハア、ハア、ハア」
「グエッグエッグエッグエッ!」
『そこへナブルモサザウルスどもを誘い込め』
「ハア、ハア、ハア」
「グエッグエッグエッグエッ!」
全速力で走って逃げる俺っちのすぐ後ろまで小型のナブルモササウルスが迫ってきている。
あの角を左に曲がれば・・・あの角まで到達できれば・・・。
やばい足が限界・・・追いつかれる!大きく口を開けて先頭の1匹が俺っち目掛け
噛み付こうとする・・・間に合わない。
「キキーっ!」
猿がナブルモサザウルスの頭に飛びかかる。
噛み付かれた猿はポンっ!と音を立て消えてしまった。
これによりギリギリで左角を曲がることが出来た俺っち。
大きく口を開けたまま曲がりきれずに壁にぶち当たる先頭の1匹。
2匹目、3匹目と壁にぶち当たり、4匹目が上手にコーナリングして走ってくる。
壁にぶち当たった3匹も体制をたて直し猛ダッシュで追いかけてくる。
「伸びろ、如意棒キー」
俺っちの右側を細く長い棒が通り抜けていく。
上手にコーナリングをして走ってきた4匹目の眉間にぶち当たる如意棒。
グゲェェェ!グゲェェェ!と痛そうな鳴き声をあげ、
その場で悶絶するナブルモサザウルスの上を踏みつけながら2匹、3匹と迫ってくる。
両手を前に出し上半身をグルグルと右回転させているヤンチャオの横を
全速力で通り抜ける俺っち。
ヤンチャオの目が光る。
「気孔龍神波!」
右回転する螺旋状の闘気がダンジョンの通路内に解き放たれる。
大きな筒とストローがある。同じ強さで息を吹き入れた場合、反対側の口から
吐き出される息の強さはストローの方が強い。
最初に放ったときのホール、これは大きな筒にあたる。
今回の一直線のダンジョンの廊下、これはストローにあたる。
螺旋状の渦はダンジョンの壁にあたりながらどんどん強さを増して行く。
通路の中に誘い込まれた小型ナブルモサザウルスは竜巻に巻き込まれたように
右回りに回転しながらダンジョンの壁にぶち当てられる。
気孔龍神波の螺旋が落ち着くとそこには
10体ほどの小型のナブルモサザウルスの死体が転がっていた。
2体の小型ナブルモサザウルスがヨロヨロと置きあがり、ヤンチャオ目指して
襲い掛かってきたが・・・
ヤンチャオの右からリンリンが飛び出し、高速パンチを繰り出す。
「ハイヤぁ!」
ヤンチャオの左からランランが飛び出し、一撃必殺の前蹴りを繰り出す。
「ソヤサぁ!」
吹っ飛ぶ2体の小型ナブルモサザウルス。
リンリンとランランは声を揃えて
「なめんなアル!」
モモのすけの横で前かがみになり両手をひざの上に乗せ
肩を上下に揺らしながら息切れしている俺っち。
「レニー、よくがんばったな」
「俺の分身体がいなければ危なかったキー」
息切れしながら俺っちは
「あ、ありがとう、モンモン」
あの猿はモンモンの分身体だったのか・・・ん?まてよ、分身体があるなら
おとりは分身体でよかったんじゃね?
俺っちはちらっとイケメンマッチョ二人を見る。
涼しげな顔してケンケン老子と何か話してやがる・・・クソっ!
お前達から受けたあの仕打ち、一生忘れないからな!
「グエッグエッグエッグエッ!」
遠くで小型ナブルモサザウルスの声が聞こえる。
モモのすけが大声で叫ぶ。
「第二陣が来るぞ!皆、配置に付け!」




