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ダンジョンへGO

「クワーマン、そこに置いてある右腕の部品を取ってくれ」

「わかっただべ」

ドラロンの工房内。

木製のテーブルの上に無造作に置かれたサランラップの芯くらいの太さと長さほどの

部品を手に取りドラロンに手渡すクワーマン。

「ありがとうよ。こいつをここにつけて・・・」

手術台くらいの大きさの作業台の上には

胸から上だけで骨格状態のオートマターが置かれてある。

その右上腕として取り付けるドラロン。

「よし、いい感じにはまったな。さて、そろそろお昼にするか。

おーい、ガンガー・・・いけねぇ~。またここにいないことを忘れていたぜ。

面倒くせぇから呼び戻す・・・わけにはいかねーか」

『戦闘服と武器の使用をご許可いただけますでしょうか、マスター』

作業台で横たわる作りかけのオートマターを見つめながら

「ガンガンを作ってからもう500年になるか・・・」

初めてじゃねーかな。自分からああいうことを言い出したのは。

魔族には子供が出来ない。魔族の中には鬼信長のようにホムンクルスを作ってまで

自分の子を持とうとするやつもいる。

ガンガンは俺様が心血を注いで作ったオートマターだ。

ある意味、俺様の娘みたいなものかもしれないな。

「ここは一つ娘の成長を見守るってことで多少の不便は我慢だな」

クワーマンの肩をポンと叩くドラロン。

「クワーマン、お前さんお昼は何が食べたいよ」

「おら、りんごとハチミツとろ~り入ったナポリタンが食いたいだべ」

「却下だ」

ガーンとショックな表情のクワーマン。

「JBも一緒に中国行ってるからチャーハンも食べれない・・・か。

 新規開拓ってことで何か美味いものを探しに行くか。

 クワーマン、お前も手伝え」

「わかっただべ」

廊下を歩きながらドラロンはある魔族のことを思い出していた。

中国といえば、あの馬野郎は元気にしてっかな。

ガンガンのことを老子とか呼んでえらく心酔してやがったが。

「まあ、魔族にも色んな奴がいるってことよ」

   ●

「300年ぶりでしょうか、ガンガン老子」

「赤兎馬さんもお変わりありませんですわね」

「ガンガン老子、私は魔族ですから見た目も死ぬまで変わりませんよ」

「そうでしたわね」

「ガンガン老子もお変わりありませんな」

「私はオートマターですからマスターが変更しない限りはこの容姿ですよ」

「おお、そうでした、そうでした」

「ふふふふ」

「はははは」

笑い合うガンガンと赤兎馬。

フラフラと近寄ってくるヤンチャオ。膝まづいている赤兎馬の背中越しに

「ちょっと待ってくれ、あの型・・・なんであの型を知ってるんだ」

赤兎馬はゆっくりと立ち上がりヤンチャオの方を向く。

「300年前のこの地にて我を打ち破り、カンチャオに武術を伝えたのが

 今お前の目の前にいるガンガン老子だからだ」

驚愕の新事実!なんだろうけど、俺っちは今いち話の展開についていけてない。

もちろん、ピチ4の面々も置いてけぼり状態だ。

ばばばーん!と衝撃を受けているのは超林寺の関係者ばかり。

リンリンがボソッと言う。

「酔いどれ天女には気をつけろ・・アル」

「まさか・・・そのガンガンとかいうゴーレムが酔いどれ天女だというのかよ」

「いかにも、そして不敬であるぞ! ガンガン老子をゴーレム呼ばわりするとは!」

赤兎馬は怒りの表情を浮かべ、ヒヒーン!と鳴いた。

すると中庭全体に大きな魔方陣が展開され、そこにいた全員を転移魔法で

ある場所へ転移させてしまった。

「ここはどこアル・・・」

ランランが不安そうに回りを見渡す。

一般的なダンジョンゲームのような通路、レンガ作りの壁。

ちょっと大きめの体育館くらいの広さの空間の中央に転移させられたらしい。

「ダンジョンのようだが・・・皆無事か?」

モモのすけがピチ4の仲間の安否を確認している。

「サゴチッチがいないキー」

「どこか別の場所に転移させられたワンか?」

モモのすけが冷静に全体を見渡す。

俺っちとリンリン、ランラン、顔の落書きがまだ消えないヤンチャオ

ケンケン老子とイケメンマッチョ二人、受付の男。

「サゴチッチ以外は全員同じ場所に転移させられているということはだな・・・」

モモのすけは笑いながら

「サゴチッチの奴、多分ペットと間違われたんじゃね」

   ●

超林寺の中庭に一人取り残されたサゴチッチ。

「どういうことカッパ・・・なんで俺だけ取り残されたカッパか・・・。

 はっ! もしかして、あの馬頭やろう、俺のことをペットと思ったカッパか!

 畜生! 俺はペットじゃねぇカッパ!

 水辺の俺は無敵なんだカッパアアアアアアアア!」

   ●

「モモのすけさん、ガンガンもいないっすよ」

「本当だ・・・ガンガンがいないのはちとマズイな・・・」

ケンケン老子の後ろにはあの二人組み。

右はグラサンおしゃれヒゲ。左はお肌すべすべポニーテール。

毎回説明するのも面倒だから3人は常にこの立ち位置にいると思って欲しい。

突然、ダンジョン内に響き渡る声。

「そこはチャンリンシャンドリームダンジョンの12階層だ」

グラサンおしゃれヒゲが天井を見ながら

「どこから声がするんだ!」

「お前達は我が師であるガンガン老子をあろうことかゴーレム呼ばわりし侮辱した」

お肌すべすべポニーテールが

「俺はガンガンさんをゴーレム呼ばわりしてないじゃん。

 だから元の場所に帰して欲しいじゃん」

「黙らっしゃい! 連帯責任じゃ!」

「そんな・・・」

狼狽する受付の男。

「最下層の15階層までたったの4階層だ。助かりたくばダンジョンの最下層・・・」

ダンジョンの最下層の石で出来た玉座がある間で拡声器を持ってしゃべっている赤兎馬。

「助かりたくばダンジョンの最下層、15階層まで来るがよい」

拡声器を取り下げ床に置く。

「ささ、冷たいですがガンガン老子、この椅子にお座りください」

「私はこのままで結構です。赤兎馬さんがお座りください」

「いや~300年前から変わらぬ謙虚なその姿勢。

 この赤兎馬、ますますガンガン老子を尊敬いたします」

   ●

またトラブルに巻き込まれてしまった・・・。

しかし、ガンガンが超林寺の創設に深く関わっていたとは驚きだ。

街の人々がことあることに言っていたあの台詞

『酔いどれ天女には気をつけろ』

はガンガンのことだったとは。

戦闘力もなく吟遊詩人としての秀でた才能もない凡人中の凡人の俺っちが

こんなダンジョンに転移させられたら確実な死亡が待っているが、

今の俺っちにはこれがある。

ドラロン作の狐と狸ではない赤い腕輪と緑の腕輪。

「モモのすけ、どうするキー?」

「このまま先へ進んで最下層まで行くワンか?」

普段はヒョウヒョウとしているが、ここ一番では冷静な判断を下す男。

それがモモのすけである。

「ガンガンがいない時点でNGだ。

 それと現時点で俺達はダンジョン探索の準備が不十分だ。

 先に進むより何とかしてダンジョンを脱出することを考えよう」

「モモのすけさん、俺っちに任せてくれっす」

「何だレニー、突然のダンジョン転移で恐怖のあまりおかしくなったか?」

「ちげーよ! そして失礼だな!」

俺っちは両腕にはめてある赤い腕輪と緑の腕輪をモモのすけに見せる。

「この緑の腕輪の上に赤い腕輪を重ねると

 ドラロンの工房の玄関限定だけど転移できるんっすよ」

「マジか!レニー、お前いいもん持ってんな~」

モモのすけが全員に声を掛ける。

「お~い、みんなこっちに集まれ。レニーの転移魔法で脱出するぞ」

「お前さん転移魔法が使えるのか、すごいじゃねーか」

落書き顔のヤンチャオが右手でサムアップする。酒くさいけど。

リンリンが安堵の表情で

「吟遊詩人も役に立つやつがいるアルな」

何気にひどいことを言ってるが可愛いから許す。

「大丈夫なのか? 本当に吟遊詩人ごときに転移魔法が使えるのか」

ケンケン老子が上から目線の口調と顔で俺っちを見下してくる。

お前だけダンジョンに取り残してやってもいいんだぞ!

「まあ、任せてくださいっす。よし、全員俺っちの周りに集まったっすね。

 それじゃ~展開するっすよ~」

ドヤ顔で右手にはめた緑の腕輪の上に赤い腕輪を重ねる俺っち。

そして・・・何も起こらない。

「あれ?転移魔法が発動しない・・・」

切れ気味のリンリンが

「やっぱり吟遊詩人は使えないアル」

リンリンさん、それ差別発言ですよ。

可愛いくても許されないことっていっぱいあるアルよ!

ダンジョンに響き渡る声。

「あー、言い忘れたが転移魔法は使えないから。

 それから上の階層への出口はふさいであるから。

 がんばって最下層まで来るように、以上!」

早く言ってくれよ~。今、すげぇドヤ顔で転移魔法を使おうとして失敗して

すげぇ差別発言受けたところだよ~。

しかし、これで脱出する術がなくなった。

危なくなったらこの腕輪でちょちょいと転移すればいいとか思っていた。

何度もこの腕輪で転移して難を逃れていたこともあり油断していた。

転移魔法を封じられるシチュエーションもあるってことを考えてなかったぁ~。

考えが甘かった~。

ミルキーを10個くらい口の中に入れてマックスコーヒを飲むくらい考えが甘かった。

角砂糖5個を口の中に入れてコップ1杯のメープルシロップを飲むくらい考えが甘かった。

モモのすけは少し思考した後、ケンケン老子に近寄り

「お前ら超林寺のモンクは確かダンジョンのガイドをやってたな。

 ここから最下層まで安全にガイドしてもらおうか。

 もちろん、高額なガイド料は今回は無し、無料でな!」

モモのすけはヤンチャオの方を向き

「ヤンチャオとかいったな。お前さん、超林寺で一番の使い手ってことは

 ここのダンジョンのガイドもやってたんじゃねーのか?

 出来るだろ?」

ヤンチャオは下を向き弱々しく

「それは無理だ・・・我々は11階層から下、

 つまり12階層からはガイドをしたことがないのだ」

モモのすけは眉間にしわを寄せ

「なぜだ、なぜ12階層からガイド・・・」

ドスン、ドスンと地響きのような、何か大きく重たいものがこちらに向かって

歩いてくるような振動が伝わってくる。

ケンケン老子の顔が恐怖で泣きそうな顔になっている。

「12階層から下はいるのだ・・・あれが」

「あれって、いるって、何がだ」

俺っち達がいるホールにつながっている数個あるうちの一番天井の高い通路から、

あれは姿を現した。

姿を現したあれを見る俺っち。

「何で自走式ドラムDG3がこんなところに・・・」

って、あれはDG3ではない。DG3のモデルになったモンスター。

アフリコ大陸の北部に流れるナブル川に生息し、全長最大5メートルに達する。

頭は恐竜のモササウルス、体はコモドドラゴンの凶暴肉食モンスター。

ケンケン老子がつばを大量に飛ばしながら恐怖顔でそのモンスターの名前を叫ぶ

「ナブルモサザウルスが!」

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