ヤンチャオ参戦
露店が立ち並ぶストリートを3人の男が人ゴミの合間を縫いながら急ぎ足で歩いている。
キョロキョロしながら歩いている様子から誰かを探しているようである。
十字路で男たちは3方向へ分かれて探すことにする。
「お前は右を、お前は左を、俺は真ん中を探してくる」
真ん中に行った男は右、左とキョロキョロしながら焦り顔で
「ヤンチャオのやつ、こんなときにどこをほっつき歩いてやがる」
「なんじゃこの顔はー!」
100メートル先の露店からあがる大声に気がつく男。
手鏡を持ったまま小刻みに震えている男の背中から近づき
「おっ!いたいた。おいヤンチャオ、緊急事態だ、超林寺まで来てくれ」
とヤンチャオの顔を覗き込んだ瞬間
「ぶわぁはっはっはっはっはっは!」
●
「まだやりますか?」
リンリンとランランの二人から5メートルほど距離を取っているガンガン。
両手をおへその前に置き、優雅に立っている。
「引かぬアル、媚びぬアル、省みぬアル」
小鹿の誕生状態のランランが超フラつきながら前に出るが最初の一歩で
左足が右足に絡まり、その場に尻餅をつく。
「私達二人をこんな状態にまでするとは只者じゃないアル」
リンリンが驚愕の表情を浮かべて言っている。
確かに、たーしーかーにガンガンは戦鉄姫の異名を持つ
近接戦闘の超スペシャリスト。
しかし、その状態になったのは双星陣とかいう大そうな名前をつけただけの
只の肩車で自滅しただけで言うならば、リンリンとランランは、自滅のやつら、である。
「何事だ」
母屋の方から声がした。そこには老子っぽい男性と老子の後ろに2名の男性が立っていた。
あれはスペシャルライブでキャーキャー言われていたイケメンマッチョの二人ではないか。
俺っちから見て、母屋をバックに老子を真ん中にして右にグラサンおしゃれヒゲ。
左にお肌スベスベポニーテール。
これから先、この3人の立ち位置は
真ん中を老子にして
老子の右をグラサンおしゃれヒゲ
老子の左をお肌スベスベポニーテール
と覚えておいて欲しい。
今はライブではないからか二人は上着を着ていた。
受付から飛び出してくる受付の男。
「ケンケン老子! 超緊急事態です!」
老子は目の前で起こっていること目を動かして確認する。
中央には綺麗な円陣を描いて顔面が陥没し膝折れして
背中から倒れている5体の中国版ゴーレム。
右側は乱雑に倒れている中華版ゴーレム。
門の近くにはリンリンの横に尻餅をついて座っているランラン。
そしてリンリンランランと円陣のゴーレムとの間には両手をおへその辺りに添えて
優雅に立っている・・・あれは何だ、ゴーレムか?
「道場破りか?」
「いえ、いつもの入場料の件でして」
「ヤンチャオを呼べ」
「すでに探しておりますが、まだ見つかっておりません」
老子は表情を変えず
「あの酔っ払いめが。肝心なときにいつもおらぬ」
モモのすけがゆっくりと歩きながら老子とガンガンの間に入る。
「で、次の相手はどなたかな? そこのイケメンマッチョのお二人さんかい?」
「何者だ」
「俺か? 俺の名前はモモのすけ」
ピチ4の面々を順番に指差すモモのすけ。
「モンモンにワンゼブン、そしてペットのサゴチッチ」
「こら! ペットって言うなカッパ!
今度もう一回言ったらホントに水辺に行ったときに俺様のウォータカッターで
真っ二つにしてやるカッパ!」
俺っちを指差すモモのすけ
「レニーっす。吟遊詩人っす」
右周りに優雅に老子の方を振り向くガンガン。
ふわりと揺れるゴスロリスカート。丁寧なお辞儀をしながら
「レディー・ガンガンと申します。ガンガンとお呼びください」
老子は驚いた表情で
「ゴーレムにしては動きが滑らか過ぎる・・・」
モモのすけが右手人差し指で鼻下を擦りながらドヤ顔で
「ドラロン作の最高傑作、オートマターのガンガンよ。
戦鉄姫の名前くらい聞いたことがあんだろう?」
「知らぬ・・・知らぬが・・・ゴーレムではないのか。信じられん・・・」
「知らねーの? 超有名なんだけど。まあ、ここは中国。
ヨーグルッペからは遠いから仕方ないか。でっ、早速で申し訳ないが老子さん。
入場料無し、超林寺のガイド無しでダンジョンに入りたいんだが~許可してくれるかな?」
左手の平を左耳にあて、マイクを持って観客にいいとも~と突き出しているような
ジェスチャーをするモモのすけ。
「断る!」
肩の高さあたりで両手の平を上に向け、顔を左右に振りながらため息をつくモモのすけ。
「おいおい、状況がわかってるのか?
おいそこの二人? お前らは腰抜けか?
老子の後ろに突っ立てないでかかってきたらどうだ?」
「なめるなよ~」
怒り顔で前に出そうになるグラサンおしゃれヒゲを左手を出し静止するケンケン老子。
「お前達二人は戦闘に参加してはならぬ。顔に怪我でもされたら大変だ」
グラサンおしゃれヒゲは
「わ、わかりました。ふんっ、運のいい野郎だ」
「はんっ? どっちが運がいいのかな~」
何だろう、モモのすけからイケメン二人に対する嫉妬を感じる。
塀の向こう側から男達の声がする。
「走れってヤンチャオ」
「せかすなって。まだ酒が抜けきれてねーんだって」
ヤンチャオを探していた男が門をくぐって走ってくる。
「ヤンチャオを連れてきました」
「おお、見つかったか。これで一安心だ」
胸をなで下ろしている受付の男。
どうやらヤンチャオと呼ばれる男はかなりの達人らしい。
「はやく、走れってヤンチャオ」
「わかった、わかったから」
と騒がしく入ってきた男。
「うぇーい・・・ヤンチャオ様が来てやったぞぉ」
ヤンチャオの顔を見た一同は爆笑する。なぜか?
それは黒いマジックで沢山の落書きがされていたからである。
ヤンチャオの左隣に立っているリンリンは腹を抱えながら笑っている。
「ヤンチャオ、その顔どうしたアルか?」
「公園で眠っていたら悪ガキ共にマジックマジックで落書きされたんだよ」
マジックマジックとは?
描いたものが24時間消えません!
あの男はスペシャルライブ会場で酔っ払っていた、
入場ゲートでリンリンとランランの攻撃を避けていた男ではないか。
「で、誰が俺の相手・・・」
と言いかけたとき、母屋にいる老子とイケメン二人を見つけるヤンチャオ。
「っだよ~、超林寺のナンバーワンとナンバーツーのお二人さんがいるじゃねーか」
その場にあぐらをかいて座り込むヤンチャオ。
そして右方向に寝そべり涅槃のポーズと取る。
「俺が出る幕無いんじゃねーのぉ」
スネ気味に言うヤンチャオ。
「例の件、考えてやらぬもない」
ピクっと反応するヤンチャオ。
「本当ですか老子」
「ああ、本当だ。この状況を何とかしろヤンチャオ」
どうやってジャンプしたのかわからないが、ヤンチャオは涅槃のポーズから
シュパっと5メートルほど上空へジャンプし前方へクルクルと2回転して着地した。
さっきとは雰囲気がガラリと変わり俺っちでもわかるくらい
ピリピリとした殺気に満ちたオーラがヤンチャオの体から出ているのだが・・・
顔の落書きで台無しである。
「約束ですよ、老子!」




