キャッツ王の秘密
「今日も我が国はミュージカル万歳だ、ニャー」
早朝の心地よい気温。自室のテラスに出ている猫メイクのキャッツ王。
庭を踊りながら清掃している数名の清掃員を見ながら
20年前のことを思い出していた。
偶然訪れたブロブロウェイウェイ国で公演されていたミュージカル
長靴を投げ捨てたキャキャキャキャ、キャッツの大暴走
猫に扮したキャストが歌って踊るミュージカルを見て
「なぜ我輩のミュージカルをやっている、ニャー」
と感激した、ニャー。
その日のうちにブロブロウェイウェイ国王を殺し、この国の王となり
国家総動員ミュージカル法を施工して20年。
朝日が差し込む部屋のテーブルの上には
縦10センチ横20センチ高さ10センチの直方体で下地は赤、
金の刺繍が施された豪華な宝石箱が置かれ、そのすぐ横に
1本の単三電池ほどの何かが転がってる。
キャッツ王は部屋に戻りテーブルの上に転がっている単三電池ほどの何かを手に取り
「ふむ、魔蓄管もこの1本が満タンになれば納品だ、ニャー」
そういって宝石箱のフタを開ける。
宝石箱の中には魔力が満タンに貯まった魔蓄管が縦に敷き詰められていた。
手にとっていた1本をその中の隙間に差し込み宝石箱のフタを閉めた。
「こういうのはインパクトが重要なんだ、ニャー」
キャッツ王の計画はこうだ。
20年かけ貯めた約20本の魔蓄管を手土産に魔王城へ登城する。
ミッキー様はきっとこう言うだろう。
「おお、こんなに沢山の魔蓄管を集めるとは素晴らしい。
おめでとう、キャッツ、今日から君は魔王軍の幹部だ」
魔王軍の幹部になったからといって特に何があるわけではないが長く退屈な魔族の魔生。
ちょっとしたステータスが欲しくなった今日この頃なのである。
コンコン、とドアをノックする音。
入ってきたのは猫メイクのスラッとした体型の初老の執事。
左目に丸いメガネのレンズを1個装着している。
右回転でクルクルと回りながら近づきキャッツ王の前にひざまづく。
「朝食の準備が整いました」
「うむ、わかった、ニャー」
「それから本日の午後より伯爵家ご令嬢のマーガレット様が
フランフラン国の貴族チャーマネント・ストーンデン伯爵とご一緒に
キャッツ王にご挨拶のため登城されます」
キャッツ王は両手を万歳して左回りに両手を回し右肩あたりの高さにきたときに
両指をパチンとならし、右回りに両手を回し左肩あたりの高さにきたときに
両指をパチンとならし、右回りに1回転してバックステップで3メートルほど下がり
そしてまた元に位置にステップを踏みながら戻ると
「あっ、忘れてた、ニャー」
●
人里は慣れた場所に5メートルほどの高い塀に囲まれたある施設がある。
塀の上にはらせん状に張りめぐらされた有刺鉄線。
刑務所のような殺風景な雰囲気に満たされたここは悪名高き
ミュージカル収容所である。
ある部屋の前で一列に待たされるローレル達。
先に部屋に入っている40代の女性の悲鳴が聞こえる。
「やめて!何をするの!やめ・・・」
数十秒後
「はあ~なんだかとても踊って歌いたい気分だわ」
女性の声で
「よし、そいつは適正があるみたいだな。A棟へ連れていけ!」
ドアが開き20代の男性が部屋の中へ連れて行かれる。
「何だ!何の注射だ!やめろ!やめてくれ!」
数十秒後
「まだだ・・・俺はまだミュージカルには屈しないぞ・・・」
女性の声で
「再教育が必要だな。そいつはB棟へ連れて行け!」
ローレルの番がやってくる。部屋の中へ連れて行かれるローレル。
真っ白な壁に真っ白な床、そして真ん中には電気椅子のような椅子が置いてある。
電気椅子の正面には警察署の取り調べ室にあるようなガラス張りの窓があり、
向こう側にはミュージカル警察のカサンドラ隊長が
鞭を右手の平にピチピチ当てながら部屋の様子を観察している。
カサンドラ隊長の後ろには二人の部下が両腕を後ろに組み直立不動で立っている。
無理やり椅子に座らされるローレル。
座ると手足と首がわっかで固定され身動きできない状態になる。
そして白衣を着た職員が注射器をローレルの右肩に刺す。
意識を失いガクンっとうな垂れるローレル。口からはよだれが流れている。
ローレルの脳内に映画サウンド・オブ・ミュージックのような歌と踊りの映像が
あふれ出している。美女と野獣のような、アラジンのような歌と踊りのオンパレード。
次から次へと映像が消えては流れ消えては流れ。
「はあ~なんだかとても踊って歌いたい・・・」
と言いそうになった瞬間
『ローレル、はぁはぁ・・・わしに構わず歌って踊れ・・・』
ジェペットじいさんのあの言葉がローレルの意識を元に戻す。
「誰が・・・誰がミュージカルなんてやるもんか!
皆が皆、ミュージカルが好きだと思うなよおおおおおおおお!」
部屋の右上隅に設置されているスピーカーからカサンドラ隊長の声がする。
「再教育が必要だな。そいつはB棟へ連れて行け!」




