ミュージカル警察
深夜0時、郊外のある一軒家。5人の男女が何か秘密の会合をしている。
「ジェペットじいさんの悲劇をまた繰り返してしまった」
そう語るのは朝のミュージカルでジェペットじいさんが倒れた際、
『ローレル、はぁはぁ・・・わしに構わず歌って踊れ・・・。
ミュージカル警察がどこで見ているかわからんぞ・・・』
と言われ、助けてやることが出来なかった中年男性のローレルである。
「このままでは我々は踊り殺されてしまうぞ」
60代の男性は心臓の辺りに左手をあて
「わしももう62才・・・いつジェペットじいさんのようにミュージカル中に
心臓発作を起こして倒れるかわからん」
40代の女性が
「ミュージカルが始まると強制参加しないといけなくなるのがキツイわ。
この前なんて朝食を作っていたらいきなりミュージカルが始まっちゃって。
終わって帰ってきたら目玉焼きが丸こげになっていたのよ!」
20代の男性が
「床屋の息子のガイザンを覚えているか?」
30代の女性が
「あのモヒカン頭のガイザンのことかい?確か国外逃亡をはかった罪で
ミュージカル収容所に送られたって聞いてたけど」
ガイザンは細身のモヒカン頭でいきっている感じの20~30才くらいの男性である。
20代の男性が
「昨日、満面の笑みでミュージカルを踊っていたのを見かけた・・・」
30代の女性が
「なんて恐ろしい・・・」
ローレルが付け足す。
「ああ、俺もガイザンを見かけたよ。
トレードマークのモヒカンはすっかり刈り取られていたな」
スキンヘッドになってさわやかな汗を散らして軽快なステップを踏んでいるガイザン。
60代の男性が
「若い人はよいが年を取った我々老人にはミュージカルは体力的にきつ過ぎる。
それとキャッツ国王はヒューマンでは無いという噂があるが本当かのう・・・」
ダダダダダ!バタン!部屋のドアを開ける男性。
「ミュージカル警察に囲まれているぞ!」
警察というよりは軍隊に近い制服、全身黒の集団が一軒家を取り囲んでいる。
左腕に赤い腕章、黒字でMのマーク。
左胸の上には赤い刺繍でMのマーク。
帽子の前方中央、額あたり?も赤い刺繍でMマーク。
集団の中央に隊長と思わしき女性がいる。
身長は150センチ、膝下まであるヒールタイプのブーツをはいている。
帽子を斜め右下がりで被っているため右目が隠れている。
特殊メイクではなく単に顔に猫系のメイクをしている。
金髪のロングヘアーは腰あたりまで延びているが髪先は綺麗にカールしている。
50センチほどの鞭を左手に持ちパシパシと右手のひらに当て、
斜めに被った帽子のつばを右手の親指と人差し指でちょいっとつまみ、その場で
タップダンスのようなステップを踏み、クルっと右に1回転してから鞭を一軒家の方に
ピシュっと向け号令を掛けた。
「突入せよ!」
一軒家の部屋の中では緊張が走る。
女性達はうろたえている。
「ミュージカル収容所へ連れて行かれるのは嫌!」
20代の男性が机の上にあるアイテムを置く。
高さ20センチのこけしのような男の子の人形。
フルートを吹くような感じに両手は配置されているがフルートは持っていない。
両手は人差し指と小指を立てた狐の形状をしている。
「大丈夫だ!この転移魔法アイテム 飛べる君 がある。皆近くに集まれ。
よし!発動するぞ!」
男性が飛べる君の頭を手の平で上から押す。
「・・・あれ?転移魔法が発動しない」
「まさか不発なの!」
バタン!ダダダダダダ!ミュージカル警察が乗り込んでくる。
一軒家の外では隊長と思わしき女性が鞭をパシパシしながら待っていた。
一人の隊員が女性に近づき報告する。
「カサンドラ隊長、全員確保しました!」
カサンドラ隊長と呼ばれた女性は隊員に対し、右と左に一回ずつステップを踏み
左回りに1回転した後、歌いながら
「貴様ぁ~っ!報告が~ミュージカルに~なっていないぞ~!」
持っていた鞭で隊員の右肩をシャオっ!って感じで叩く。
「申し訳ありませ~ん、カッサンドラたいちょ~、ぜんい~ん~
かくほ~しましたぁあ~」
その場で踊りながら歌いながら報告をする隊員。
カサンドラも踊りながら歌いながら
「それでよーいー。今後、ミュージカルを怠ったらならば~
貴様と~その~か~ぞ~く~も~収容所へ収監してやるからな!」
ローレルを筆頭に捕まった者達が6人全員一軒家の中から連れ出されカサンドラの前に
横一列に並ばされる。
クルクルと回りながら華麗なステップを踏むカサンドラ。
「おはようからおやすみまで~
ミュージカルしていない奴らがいると~
密告があった~」
一番端にいたローレルの前まで来るとカサンドラは鞭の先をローレルの顎下に付け
ニヤッと笑い歌うのだった。
「ぜんいん~しゅ~う~よ~う~じょ~送りだよ~」
女性達が悲鳴を上げる。
「いやああああああっ!」
横一列になったミュージカル警察が左右に軽くステップを踏みながら
ローレル達に近づいてくる。そして連行されるのだが
全員連れて行かれるかと思いきや、60代の男性だけは残っていた。
カサンドラ隊長は男性の前へ行き万歳をして左回りに2回転した後、
右手を胸元へあて、左手で男性の顎をペロンと触る。
「ご苦労だったぞ~」
「あ~り~が~と~う~ございますぅ~」
ローレルが叫ぶ。
「じいさん裏切りやがったのか!
はっ・・・もしかして、じいさんが飛べる君に何か細工をしたのか!」
「じいさん?裏切るう?」
男性はクルっと右回りに回転して帽子を被る。
その帽子には赤い刺繍のMマークが。
そして目の前にいるはずのじいさんは20代くらいの若い男性に変わっていた。
両手をくの字にして肩の位置まで上げ、ブランブランと手を振る。
幽霊っぽい動きっていうのかな?そんな動きをしながら
「俺はまだ25才なんでね。そしてミュージカル警察の隊員なんでね」
「ちきしょうおおおおおおおおお!」
ミュージカル収容所へ連れて行かれるローレル達。
そこはミュージカルを徹底的に叩き込まれ、
従わないものは二度と出てくることは叶わない地獄の場所である。
恐怖の顔を浮かべ天に向かってローレルは叫ぶ。
「頼む・・・誰か・・・誰かこの永遠と続くミュージカルを破壊してくれ!」




