チャーマネント・ストーンデン
「ソフィア様の誕生祝賀音楽祭まであと7日よ!」
おねえ系の細身のおっさん貴族が団員達に激を飛ばしている。
ここはドルチェ国の首都ベルリンゲンにある国立オッペケチェケラハウスである。
由緒正しき劇場で内装も超豪華。収容人数はざっと3000人と
ヨーグルッペ大陸でも最大級の劇場である。
ステージの上では歌劇のリハーサルが行われている。
「ちょっと、そこ!右のあなた!動きがワンテンポ遅れているわよ!
今年はあのチャーマネント・スートンデンがゲスト出演するのよ。
ばっちりやっとかないと彼においしいところを全部持っていかれるわよ!」
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ドルチェ国と雰囲気は似ているがアパートの窓に飾られている国旗は青、白、赤の
トリコロールカラーである。一番左の青はアルファベットのF。真ん中はFを反転した白。
一番右の残った部分は赤。そうここは隣国のフランフラン国(通称FF国)である。
延々と続く3メートルくらいの高さの赤レンガ作りの塀に添って
サイボーグ馬にまたがった郵便配達員がゆっくりと走っている。
どのくらいゆっくりかというと時速20キロってなところか。
頑丈な門の前に来るとサイボーグ馬から降りる郵便配達員。
「ふ~やっと門まで着いた」
門の右側にある呼び鈴を押す郵便配達員。
年配の男性の声で
「はい、何の御用でしょうか?」
「チャーマネントさん宛ての手紙をお届けに参りました」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
5秒ほど待つと
「カモーン!」
という威勢の良い掛け声と同時に門がゆっくりと内側へと開門する。
再びサイボーグ馬にまたがり敷地内に入っていく郵便配達員。
両サイドには綺麗に整えられた木々。30分ほど走ったところで
ようやく上級貴族が住むような豪華で大きな屋敷が見えてくる。
屋敷前の開けたところの中央に左手で上着の左を開けパーにした右手を天高く突き上げ
左目でウインクしているエルフの銅像が立っていた。
屋敷の玄関まで来た郵便配達員。サイボーグ馬から降りると同時に
玄関のドアが開き、中から黒い服を着た白髪で70才くらいの
ヒューマンの男性執事が出てきた。
「受け取りのサインをお願いします」
執事は左の上着の内ポケットからボールペンを取り出し受け取りのサインをした。
手紙を受け取ると執事は屋敷の中へ入っていく。
窓際に立ち外を見ているエルフの後姿。
少し緑がかった銀色の長髪に豪華な金の刺繍がほどこされた中世の貴族の服。
全身赤、ブーツも赤。シャアなの?ねえ、アズナブルなの?ってな赤。
コンコン、ドアをノックする音。
「入りたまえ」
先ほど手紙を受け取った執事が部屋の中へ入ってくる。
「旦那様、マーガレット様よりお手紙が届いております」
御年325才、ヒューマンに換算するには5で割って~65才であるが
振り返ったその顔は少々眉毛が太いがどうみても20代後半から30代前半。
「マーガレットからかい」
と笑顔を見せた八重歯からキラリンと光る爽やかレボリューション。
執事にゆっくりと近づき2メートルくらいの距離になったとき、
※BGMとしてあーちーちーあちのゴールドフ○ンガーぽい曲が流れています。
キレッキレに右、左、右、左と上着を高速で交互に開き
クルクルクルっとその場で右回りに3回転した後、両腕をパーにして上に突き上げ勢いよく
腰の位置までグーにして引き寄せ、腰を1回前後に振り左手をパーにして
執事に突き出し手紙をよこせのポーズを取りながら
「カカカカカモーン!」
何事もなかったかのように静かに手紙を手渡す執事。
手紙を開封し読むチャーマネント。
「ホットットな内容だ」
手紙を右の内ポケットへ入れると
「サイモン、私は今からマーガレットのところへ行ってくるよ」
「旦那様、7日後にはドルチェ国ソフィア王女生誕音楽祭の参加がございます」
「大丈夫、それまでには(必ず)戻ってくるから」
そういうとチャーマネントは転移魔法で転移してしまった。
部屋に残されたサイモンは無表情で言うのである。
「こりゃぁ~いつものように戻ってこねーな~」