ピチ4と合流
チャンリンシャンドリームダンジョンの最下層。
赤い毛をした馬の頭部にヒューマンの体。
三国志に出てくるような武将が着ている鎧を着用した魔族
が石で作られた玉座の上に座っている。
簡単にいうなら三国志の武将の鎧を着た人がドンキなどで売られている
パーティ用の馬のマスクを被っているといったところかな。
彼こそが魔族の赤兎馬である。赤兎馬は目を閉じる。
ヤンチャオに良く似た辮髪の男性が赤兎馬に話している。
「赤っち、俺が死んだらこいつをお前が認める者に渡して欲しい」
赤兎馬は目をゆっくりと開ける。
「あれから300年が経過した・・・」
玉座の両後ろには宝箱が1つずつ置いてある。
赤兎馬はどっこいしょと言いながらゆっくり立ち上がる。
身長は2メートルくらいか。
「この椅子・・・尻が冷たいんだよな~。今日も誰も来そうにないし帰るか」
赤兎馬は転移魔法で転移した。
●
スペシャルライブが終わるとヴォーカルの二人はステージの奥へ戻っていった。
ダンサーの数名が左右のダンジョンの入り口に別れ重厚な木の扉を開ける。
しばらく様子を見ていたが誰もダンジョンに入って行く者はいなかった。
観客の全員はスペシャルライブを見に来ただけのようだ。
んっ? 段々畑の観客席の中ごろ右端に寝そべっている辮髪の男性が
マスクダンサーに起こされていた。
マスクダンサーの手を振り払って不機嫌そうに目を擦りながら出口に向かう辮髪の男性。
顔が赤い。どうやら酒を飲んで寝入っていたらしい。
来るときはゆるい下り坂であったが帰るときはゆるい上り坂。地味にきつい・・・。
入場ゲート近くに行くと先ほどの酔っ払いがピンクと赤に何か注意されていた。
怒った顔のピンクが何やら一瞬動いたような・・・あれは戦士の首を折った・・・あれ?
酔っ払いは何かぐちゃ~と避けてかわしたような動き。
赤が右足で前蹴りを繰り出すと酔っ払いは軽くジャンプして両足の裏を
赤の前蹴りの上に乗せクルリと1回転して入場ゲートの向こう側へ着地した。
何事も無かったかのようにフラフラと千鳥足で帰っていく酔っ払い。
マジ!もしかしてあの酔っ払い達人だったりする?
「ヤンチャオ~酔いどれ天女には気をつけるアルよ~」
ピンクの声に振り向かず左手を上げて応える酔っ払い。
足がもつれてその場に尻餅をつく酔っ払い。達人だったり・・・は気のせいか?
しかし、あのスペシャルライブ・・・
ダンジョンに入るときまた見なけきゃならんのかいな・・・。
イケメンマッチョに歌うま・・・敗北感でいっぱいだわ~。
●
チャンリンシャンのメインストリートを歩いている俺っち。
んっ? 今、数百メートル先をJBに似たエルフが通り過ぎたような。
でもちょっとふくよかというかぽっちゃりというか・・・やっぱり人違いだな。
まあ、ダンジョンに入るとき以外は元S級冒険者のJBの出番も無いだろうから
そのままにしておこう。
もちろん、俺っちもダンジョンには入りませんよ、絶対に。
ピコン! んっ? 何かフラグが立つ音が・・・。
露店の店主が買い物が終わった客に
「ありがとうな、帰り道は酔いどれ天女に気をつけてな!」
高級そうなレストランから出てきた客に見送りに出てきた給仕が
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。
酔いどれ天女にお気をつけて」
と言っている。先ほどもピンクが酔っ払いに言ってたけど
「酔いどれ天女に気をつけて・・・って何?」
ちょっと広い場所に出たところで前方に転移魔方陣が展開される。
ガンガンがピチ4の面々を連れて帰ってきたようだ。
「お待たせしました、レニー」
ガンガンはしゃべるときに唇が動かないので最初の頃は違和感を感じていたが
最近は慣れたのだろう、特に気にならなくなった。
「よう、レナード元気だったか!」
「相変わらず名前を覚えてくれねーな、モモのすけさん」
「わりーわりージョークだって。レニー、久しぶりだな」
「モモのすけが男の名前を覚えるなんて珍しいキー」
「本当だワン。モンモンなんて名前を覚えてもらえるまで半年くらいかかったワン」
「で、これからどうするカッパ?」
「超林寺っていうところに行く必要があるんだけど、
その前にお腹が空いたから何か食べてからにしないっすか?」
「いい案だカッパ。海鮮を希望するカッパ」
「ガンガンもそれでいいかな?」
「問題ありません、レニー」
「よ~し、それじゃ若くて色白の綺麗なおねいちゃんが沢山いる店でご飯食べようぜ!」
「モモのすけお前ってやつはキー」
「最低だワン」