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あの店は無くなっていた

「この頭部をくっつければ女神像の完成だ」

北方のある地方で行われている雪祭りのイベント会場。高さ10メートルほどの

雪で作られた首無しの女神像の上に今頭部が接着されようとしている。

4人の魔法使いにより浮遊魔法をかけられゆっくりと空中に浮かんでいる女神像の頭部。

この女神像の製作には設計から頭部装着までの今この時までに約半年を費やした。

設計者の男性の脳裏に色んなことが蘇る。

女神像?そんなの作ってどうする。お金の無駄。溶けて無くなるものにお金を使うのか!

沢山の批判を押し切り今日、この時にたどり着いた。

頭部が女神像の真上に到着した。ゆっくりと頭部が女神像に降りてくる。

「このままうまく行ってくれよ」

設計者の男性は心の中で何度も何度も復唱する。

(壊れないでくれよ)

(非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊)

(非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊、非破壊)

頭部が接着され女神像は完成する。

関係者の歓声と拍手。設計者の男性も感無量である。

キーン・・・飛行機が飛ぶときに鳴る空気を裂く音がする。

女神像の頭部の真上にゆっくりと降り立つ、

顔はパンダ、体はヒューマンだがパンダ柄の細マッチョ。

「破壊を呼ぶ声が聞こえた。我を呼んだのはお前達か」

「破壊など頼んだ覚えは・・・」

「我が名はデストロイヤー。破壊こそ全て。破壊こそ創造」

設計者の男が叫ぶ。

「その女神の雪像を破壊するのはやめてくれ!」

デストロイヤーは足元の女神の雪像を見る。

※俺っち作詞のデストロイヤーがBGMで流れてます。

※(神回さずけるデストロイヤー)

デストロイヤーは10メートルほどジャンプして逆十字になり

女神像の頭部へそのまま真っ直ぐに落ちてくる。

「はああああああ・・・・」

※(奈落の淵へのデストロイヤー)

デストロイヤーの体を赤いオーラーが包む。

「ダイナマイトボンバーヘッド!」

雪像の脳天にすっぽりとめり込むデストロイヤーの頭部。

つま先まで整った綺麗な逆十字が決まる。

※(懺悔があるなら言ってコイヤーアアアアアアアー)

「点火!」

めり込んだ頭が真っ赤になりダイナマイトの爆発のような現象が発生する。

ドッゴーン!爆竹が仕込まれたスイカが爆発するように四散する女神の雪像の頭部。

熱で女神像の胸辺りまで雪像は溶けてしまう。

振り向きもせずそのまま飛び去っていくデストロイヤー。

半年間の作業が一瞬にして水の泡に・・・。

設計者の男性は涙を流しデストロイヤーへの怒りを口にする。

※(コイヤーアアアアアアアー)

「悪魔め・・・ひでぇことしやがる」

※(コイヤーアアアアアアアー)

   ●

「いや~チャンリンシャン、久しぶりですね~100年ぶりですよ~」

ニコニコ顔のJB。デスパラ7の副リーダーで実娘のシャロンちゃんの爆弾発言

『私、今付き合っている人がいるし、その人の子を妊娠しているし!』

そしてその相手がJBが若い時に因縁のあったチャーマネント・ストーンデンで

あることを知らされ、こびと図鑑のこびとの顔になるくらい一気に老け込み

こちらの世界へ中々帰って来なかったJBが、今は元通りになっている。

「この通りの先にね。私が中華の道へ入ったキッカケになったお店があるのですよ」

ニコニコ顔で先頭を歩いているJB。

中華鉄権珍民共和国こと略して中国に来ることで中華ハイ状態になり

一気にこちらの世界へ戻ってきたようだ。

もちろん、シャロンちゃんの件は嘘であったことを伝えチャーマネントとは

まったく関係がないことを伝えるとJBは安堵の表情を浮かべていた。

俺っちは後にも先にもあんなに安堵の表情をしたJBを見たことがない。

今ここにいるメンバーはJB、ガンガン、そして俺っちの3人である。

ピチ4の面々とは連絡が取れ次第、後で合流することにして、とりま

ガンガンの転移魔法で3人で中国にやってきたのである。

で、何で俺っちが一緒に来たのかというと、いつもの巻き込まれ・・・ではなく

自分の意志でついてきたりするのである。

せっかくの異世界転生。色んな国を見て周りたいじゃない。

スーザンもついてくるか聞いたのだが

「行かないわ」

今頃、サイボーグ競馬場で88からもらったギャラ金貨50枚(50万円)を

半分近く溶かしていることだろう。

「わらわはあまり帰りたくはないのじゃがのう。

 家をあけ過ぎると父上の機嫌が悪くなって暴れるのじゃ。

 暴れるとな~家臣達が数名死んでしまうのじゃ」

彩姫は気乗りのしない顔をして転移魔法で帰っていった。

彩姫も彩姫なりに苦労しているのだな~。

「シュコー、シュコー、オラ、よくわかんないだべ」

「クワーマン、お前さんはランドセルの調整が済んだら俺様の助手をしてくれ」

と言いドラロンはクワーマンと一緒に工房へ入っていった。

「何かあったら例のボタンで私を呼びたまえ」

と言い残し、88は転移魔法でどこかへ消えてしまった。

危ない目に会いそうならドラロンからもらった腕輪を使ってちょちょいと転移すればいい。

「どうせ巻き込まれるなら行くとこまでいったれ!」

なーんて気軽に思った俺っち。

いや~やっぱこの先ディープにそしてデンジャラスに巻き込まれたね~。

   ●

「あれ?無くなってますね」

お店があった場所は骨董品店になっていた。

JBは近くを通りかかった人に

「あの~、ここに中華料理店があったと思うのですが」

「さあ、わからないね~」

何人かに聞いてみたが答えは同じだった。

「もう100年も前の話ですからね」

骨董品店に入り、店主に聞いてみる。

「ああ、あったよ中華料理屋が。ただ、もう100年前の話だよ」

「やはりここでしたか。無くなってしまって残念です。温故知新。

 何か新しい中華料理の発見があるかもと思っていたのですが」

残念そうな顔をしながら骨董品店を出るJB、そして俺っちとガンガン。

この物語、魔王を倒して随分と経った後、俺っちはふらっとこの骨董品店に寄ることがあった。

そのときに俺っちは中華飯店が無くなった理由を知ることになる。

JBが弟子入りしてから店は大繁盛したが

あっという間に店主の実力を抜いてしまったため嫉妬した店主は

もう教えることは何もないと嘘をつき1年でJBを追い出したのであった。

すると店の味が落ちたと客足がぱったり止まってしまったのだ。

すっかり自信を無くした店主は店をたたんでしまったらしい。

ここはJB中華飯店の中。

「JB、いつものやつ」「アイヨー」

現在、40才になった俺っちは未だにJBの作るチャーハンを食べている。

常連客のタイガックスの姿も見える。

目の前のJBは出会った頃と全く見た目が変わらない。

「本当、エルフっていつまでも若々しいよな~、うらやましいぜ」

「何か言ったかい?レニー」

「いや、別に~」

ちょっと横道にそれたけど、15才の俺っちに話を戻すぜ、ロックンロール。

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