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悲しき歯車

「駄目だ、びくともしない」

10名ほどの魔法使いが色んな魔法を使い大岩を攻撃しているが変化がない。

鉱山の入り口を大きな岩が塞いですでに2日半が経過している。

午前中から降り始めた雨が更に絶望感を演出している。

鉱山の入り口の周りには中に取り残されている鉱夫達の家族や仲間が多数見守っている。

「誰か、誰かあの大岩を破壊してくれ」

「夫は無事かしら」

「とうちゃん生きててくれ」

72時間の壁、残り時間は12時間。どうすればいい。

村の長老っぽい男性が両膝をつき両手を合わせ神に祈っている。

「おお、神よ。あの大岩を破壊し中の者達を救いたまえ」

最寄の町にあるギルドへ大岩破壊の緊急の依頼を出したが

対応できる冒険者がいなかった。

それでも何か奇跡が起こるかもしれぬ、と魔法使いが10名ほど依頼を受けてくれたが

今のところ状況を打破できていない。

救援を望む者達の心の声。

(大きな岩を破壊してくれ)

(破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊)

(破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊)

キーン・・・飛行機が飛ぶときに鳴る空気を裂く音がする。

大岩の前にゆっくりと降り立つ

顔はパンダ、体はヒューマンだがパンダ柄の細マッチョ。

「破壊を呼ぶ声が聞こえた。我を呼んだのはお前達か」

「何だあれは・・・」

「我が名はデストロイヤー。破壊こそ全て。破壊こそ創造」

長老が叫ぶ。

「あの大きな岩を破壊してくれ! 仲間が・・・仲間が中に閉じ込められているのです!」

デストロイヤーは大岩の方を向く。

※俺っち作詞のデストロイヤーがBGMで流れてます。

※(俺様お前のデストロイヤー)

両手拳を握り締め腰の位置に持っていき気合をためるデストロイヤー。

「はああああああ・・・・」

※(完全無欠のデストロイヤー)

デストロイヤーの体を赤いオーラーが包む。

「ダイナマイトナックル!」

大岩に右拳をぶち当てる。大岩に腕の半分がめり込む。

※(文句があるなら言ってコイヤーアアアアアアアー)

「点火!」

めり込んだ右拳が真っ赤になりダイナマイトの爆発のような現象が発生する。

ドッゴーン!ひび割れ粉々に砕け散る大岩。

振り向きもせずそのまま飛び去っていくデストロイヤー。

雨が止み雲の晴れ間から日光が差込、鉱山の入り口を照らす。

鉱山の中から生き残った鉱夫達が現れる。湧き上がる歓喜。

長老は涙を流しデストロイヤーへの感謝を口にする。

※(コイヤーアアアアアアアー)

「おお、神よ、ありがとうございます」

※(コイヤーアアアアアアアー)

   ●

魔王親衛教会の所長室。

「ドグレッタ、五将星を招集してくれ」

「緊急事態・・・ということでしょうか?」

「まずはこの動画を見て欲しい」

可愛らしいパンダモンダグリズリーの4足歩行の乗り物が立ち上がり2足歩行となった後、

顔はパンダの体はパンダ模様の細マッチョへ進化する様子を見たドグレッタは

「なんじゃこりゃあああああああ!」

「うむ、わしと同じ反応で何か安心したぞ。で、こやつはデストロイヤーという」

「デストロイヤー・・・破壊者ですか」

「教祖様からナルハヤで捕獲するよう命令が出ておる」

なるほど・・・五将星を召集する理由もわからぬではない・・・か。

「最悪、6人目の投入もあり得るかもしれん」

ドグレッタの表情が恐怖でこわばる。

「なんでっすって・・・」

「あくまでも仮定の話だドグレッタ。五将星の範囲でカタをつけてくれれば問題ない」

「了解いたしました。では、五将星を召集しデストロイヤーを捕獲して参ります」

「頼んだぞ、ドグレッタ」

「全ては魔王様のために」

「うむ、全ては魔王様のために」

険しい表情で廊下を早歩きで歩くドグレッタ。

(最悪、6人目の投入もあり得るかもしれん)

所長の性格からして、あれは仮定の話ではなく本気で投入することを考えているはずだ。

教会にとって、いや所長にとって、我々はただの道具に過ぎぬことは重々承知している。

承知しているが、我々は 生きている のだ。冗談ではない!

6人目の投入の前にデストロイヤーを捕獲しなくては!

捕獲できなかった場合・・・6人目を投入された時点で確実に私は死ぬ。

「最悪の場合・・・全滅だ」

   ●

「モモのすけ!無事だったのね」

「アニー、心配かけてごめんよ」

アニーの孤児院の玄関先。モモのすけの両頬に両手を添えて無事を喜ぶアニー。

左手を頭の上に乗せ恥ずかしそうに微笑むモモのすけ。

「モンモン達を見かけないが」

「助太刀を頼むとか何かでベルリンゲンへ向かったわ」

「そうなの? 無事なことを早く知らせねーとな」

「そうね。何はともあれ良かったわ。

 ここじゃなんだから中に入ってお茶でも飲みましょう」

家の中に入っていくモモのすけを遠くの丘から見ている人物がいた。

ドグロックである。

「帰れる家、家族がいるというのはうらやましいことだ」

寂しそうにいい残し、ドグロックはその場から転移した。

ドグロックのあの言葉は何を暗示しているのだろう。

キメラとして生まれ人の心を持つ五将星の悲しき歯車が今回り始める。

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