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後輩と婚約者(現在)

と言っても、身体が弱いって言うのは本物のエヴィルレーラの話で私は健康そのものですけどね。


そう、私は健康そのものだ。


けれど虚弱ということを理由にして様々な家からの婚約の打診を断っている。それも当然だ、だって私は女なのだから。女性相手の婚約も、結婚も出来るはずがない。


………一応父上と兄上と話し合った予定では、私は将来兄上の補佐として領に残る予定だ。

恋人が出来れば……男性しか愛せない存在として相手を愛人として囲うことも許可されている。

貴族男性として愛人を囲うことはよくある話だ。その相手が男性というのも、無くはない。



公では領主の弟と、その愛人という扱いにはなるが裏では父上がこっそり作ってくれた遠縁の娘として好きな相手と結婚できるようにもなっている。


結婚する際に女性の方の身分も私の養女にするからどちらにせよ私の娘でいなさいと、父上は照れながらも仰ってくれた。



ーーーーならば初めっからエヴィルレーラの代わりではなく、養女として迎え入れれば良かったという案も実はあった。

そうすれば母上の前でだけ男装をして、あとは女性として生きて行けたかもしれない。


だが、貴族の女性になると……否が応でも政略結婚の可能性が高くなる。

特に、私の性別が女だとバレた場合今目の前に居るこの方が年齢的にも身分的にも私の結婚相手の最有力候補になる。

王家から婚約の申し出されると、断ることが困難になる。


そして王家に嫁ぐこととなれば、普通の令嬢よりも高度な教育や教養が必要となり生涯自由がほぼ無くなる。


ーーただでさえエヴィルレーラの身代わりで苦労をかけるのに、君にそんな負担までおわせたくないと父上は仰ってくれたのだ。



私も幼心で、王子様のお姫様なんて大変そうで嫌だと思ったので優しい父上の気遣いに感謝してエヴィルレーラとして生きている。


その後も引き継ぎなどの話をして、昼食は無事に終わった。


幸いにもエヴァロン殿下と私の関わりはなくて済みそうだ。個室を出るとまだ食堂にいた生徒がザワザワと騒ぎ出した。


まあ、侯爵子息が二名に王子とその側近候補だもんねえ。


普通に目立つ面々だ。


ーーーーと、その時視界の隅にテオリアとその婚約者が見えた。


ルツェリア嬢はまるで小動物のように怯えていて、その向かいに居るテオリアの表情はとても険しい。

ーーーああ、まだダメなんだなあテオリア。


あの顔は恐らく上手く話せなくって凹みきっている顔だ。

だがルツェリア嬢は完全に誤解して怯えきっていた。


テオリアは笑顔というものを覚えた方がいいと常々思う。

私がテオリアを見ていると、私の視線に気づいた兄上もテオリアを見て…眉をしかめた。

そして我らに続いて殿下たちもテオリアを見て…同じように眉をしかめた。


「……彼は、令嬢に威圧をしているのか?」


「……彼はとても不器用なだけですよ」


「とてもそうは見えないが…」


「誤解されやすいんです」


どうやら四人ともテオリアがルツェリア嬢をいじめているように見えているようだ。

……将来上に立つ彼らに、テオリアが睨まれるのは良くない。


仕方が無いので四人に断りを入れて離れてテオリアとルツェリア嬢の仲裁に向かうことにする。


「やあテオリア。今日は婚約者と食事を取っているのかい?」


「エヴィ先輩」


「イブリンデ先輩!!」


声をかけたことでルツェリア嬢には助けを求めるように名を呼ばれテオリアにはギロリと睨まれるが……二人の内心は同じだ。


どっちも助けて!と言っている。


「婚約者が大事だからって、そんな怖い顔をするもんじゃないよ?」


「……余計な口を挟まないでください」


座っているテオリアの肩に手を置いてなだめると余計に態度は強硬化してルツェリア嬢は萎縮した。

関係ない人に助けを求めてはいけないと叱られたように感じているだろうがそれは違うんだルツェリア嬢。

テオリアは今、大事な婚約者と暴露されて恥ずかしがっているだけなんだ。

テオリア、お前は恥ずかしがってないで開き直れバカ。


「大事な後輩のことなんだから口を挟むよ。全く君はもう…」


歯を食いしばり、人を殺しそうな顔で私を睨むテオリア(大事って言われて照れてる)


そして、頬を染めて私を見るルツェリア嬢。


そして、きゃあ!と黄色い悲鳴が上がる周囲。


……ん?これはミスしたか?

テオリア以外の人には大事な後輩がルツェリア嬢だと勘違いされてる気がする。


「イブリンデ先輩…!」


キラキラした目で見ないで欲しいよルツェリア嬢!?

あーもう、これはどうしたらと思っていると……それまで様子を見ていたエヴァロン殿下が動いてしまった。


「もうそろそろ休み時間も終わりだ。そろそろ解散をした方が良いんじゃないか?」


「……そうですね、それがいいでしょう」


「…そうですね」


「あ、あの王子殿下、イブリンデ先輩、ありがとうございました!……テオリア様、また後ほど…」


逃げるように去っていくルツェリア嬢と周囲の人々。

悪い流れをぶった切ってくれたことに感謝はしつつも、エヴァロン殿下がテオリアを見る目は非常に厳しい。


「……私が口を出す謂れは無いのだろうが、それでも君の婚約者への態度は如何なものかと思うぞ」


「……申し訳ありません」


「謝るのは私ではないだろう」


「……はい」


「…テオリア、お前後でゆっくり話をしような?」


「う……はい」


にーっこり笑いながら怒るという器用なことをしながらテオリアを見るとテオリアは私の怒りをきちんと理解したのか、無表情でしゅんとなった。


可愛いが、今回のは色々と酷い。ぺしっとかるくテオリアの頭を叩くと兄と殿下たちを食堂の外へと促す。


「エヴィ……友達は選んだ方がいいぞ」


最後に、兄上にまでそんな注意を受けてしまった。

いやもう本当に…テオリアあああああ!!



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