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本物の王子様


「ああ、そうだテオリア。今日は昼は一緒に取ることはできないんだ」


「……そうですか」


「そんな残念そうな顔はするんじゃないよ。明日はまた一緒に食べよう?」


「そんな顔してませんけど。先輩、目が悪いんじゃないですか」


「そうかもしれないね」


懐かれてるとはいえテオリアが素直になれないのは私に対してもだ。

だが、私は多分テオリアの心象をきっちり読取るから特に問題は無い。


ショックを受けて無表情になったテオリアに明日の約束を取り付けると、怒った表情で喜ばれた。


二年の教室へ向かったテオリアを生暖かい眼差しで見送り……三年の教室に向かおうとすると、すぐに二名の令嬢が私の両サイドに歩み寄ってきた。


懐かれている、とはいえ学年が違うテオリアと共に通学し、昼食まで取っているのには理由がある。


それは単純に私にもテオリアをそばに置くメリットがあるからだ。


「エヴィルレーラ様、おはようございます。良き朝ですわね」

「おはようございますエルヴィレーラ様。大丈夫ですか?タイロン子息になにか酷いことをされたりしませんでしたか?」


「おはようございますティアナ嬢、リリネット嬢。テオリアはああ見えていい子ですから大丈夫ですよ」


「おはようございますエルヴィレーラ様」

「おはようございますエルヴィレーラ様」


わらわらテオリアが居なくなった瞬間群がってくる令嬢、令嬢、令嬢…。

その一人一人に丁寧に挨拶を返しながら、内心ではあとため息を着く。



全方向に意地っ張りで酷い態度を取るテオリアは婚約者だけでなく、多くの令嬢に恐がられていた。


故に、彼が一緒に居ると……令嬢が寄ってこないのだ。


婚約者が居ない侯爵家の次男(実際は女だけど)など、理想の婿だ。

教室に行くまでも、教室に行ってからも


私は授業が始まるまで令嬢たちに囲まれたままであった。





三年になって初めての昼食。

それは五学年の兄と共に……新入学した第二王子と、その側近と取ることが事前に決められていた。


今年卒業で第五学年の兄は今、生徒会長をしている。

身分など関係ないという謳い文句であるが……やはり身分は重要で、生徒会は高位貴族が行うものとなっていた。


兄の学年と、その下の学年では侯爵家である兄が最上位の貴族であった。故に兄が生徒会長を務め……これからの一年で王子殿下に引き継ぎをし来年からは王子殿下と側近たちが生徒会を回していくことが事前会議にて既に内定していた。


今日はそのための顔合わせで、私は侯爵家として兄のおまけで挨拶をすることとなっている。


「やあエヴィ。進級おめでとう」


「エセル兄上もおめでとうございます」


「今日の体調はどうだ?」


「もう子供じゃないから平気ですよ」


私と違って将来侯爵家を継ぐ予定の兄上は、様々な人との交流が盛んだ。故に同じ学園に通っていても週に二回会えるかどうかだ。


だがそれも、ほかの兄弟に比べて頻繁にあっている方らしいが。


「待たせたな、イブリンデ子息達」


食堂の一番大きな個室で兄とじゃれていると第二王子殿下と、その側近候補の二人が入室してきたので即座に臣下の礼を取る。


学園は身分は関係ないが、人目のないところではさすがに許可もなく馴れ馴れしくする訳にはいかない。


「お久しぶりですエヴァロン殿下。ご入学おめでとうございます」

「お初にお目にかかりますエヴァロン殿下。エヴィルレーラ・イブリンデでございます」


兄は会ったことがあるようだったが私は初めましてだ。丁寧に挨拶を述べると殿下が椅子に座りながら「楽にしてくれ」と言ってくださったので頭をあげる。


「学園では身分は気にしなくて良い。とりあえず座って、共に食事でも取ろう」


「かしこまりました」

「お言葉に甘えて、失礼致します」


殿下の次に兄が、兄の次に私が、私の次に側近たちが座り王子殿下の使用人が食事を運んでくる。


メニューは食堂で出されているものと同じだった。

使用人が殿下の分の食事の毒味をしていくのを見ながら王族も同じものを食べるんだな、と思う。


「時間もないのでさっさと話を進めよう。引き継ぎは今日からはじめるのか?」


「…そうですね、今日も新入生歓迎会の準備などがありますので今日からでも生徒会に来ていただけると幸いです」


「そうか、わかった。側近候補であるこの二名も連れて行って構わないのか?」


「もちろん構いません」


「よろしくお願いしますイブリンデ子息。カーチャ・ネイルです」

「レクロン・トリヴァーです。よろしくお願いします」


サラダを食べる私の前で側近二名と兄上が交流をしていく。

そして兄が生徒会は何をするのかを説明しつつ、三名に資料を渡した。


説明もするが、資料でも渡すのだろう。

兄は優秀な男だからその辺もそつなくこなしているようだ。



しばらくして、当然ながら当然の質問がエヴァロン殿下から出される。


「…そういえばエヴィルレーラ・イブリンデ子息は生徒会役員では無いのか?」


「……弟は魔力は強いのですが非常に虚弱でして……この歳まで生きていることが奇跡のようなものなのです。ですから身体に負担をかけるようにことは当家としてはさせることは出来ません」


「…そうであったのか。なるほど、だから側近候補のリストからも外れておったのだな。悪いことを聞いた、許せ」


「気にしないでください。むしろ殿下をお支えすることが出来ず申し訳ありません」


申し訳なさそうな顔をする殿下の内心は分からないが、私も本当はお力になりたかったと言うように言って見せれば「その心意気、感謝しよう。だがそなたも守るべき国民だ、無理はさせられぬ」と笑顔で返してくださった。



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