表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/137

7:お兄様とお呼び


「後々のためにもとは、どういう意味かな?」

「そのままの意味ですわ。兄弟仲良く過ごせた方が素敵でしょう?」

「兄弟?」


 オスカー殿下は考え込むように腕を組む。そして、ハッとした顔をする。


「なるほど、わかった! 君は……」


 どうやらわたしの意図を理解してくれたようだ。

 そう、わたしはあなたたち兄弟に仲良くなってほしいのだ。それ以外の意図はない。ぜひわたしが皇妃になるために兄弟仲良しになってください。


「──兄がほしいんだな!?」

「その通りで…………え?」


 今、この人なんて言った?

 兄がほしいとかなんとか聞こえたような……。


「私に君の兄代わりになってほしいと、そういうことなんだな? そういうことなら、喜んで君の兄が代わりとなろう! 今日から私のことは『兄上』もしくは『お兄様』と呼ぶといい」

「え? いえ、そういうことではなく……」

「遠慮はいらないさ! 兄らしく、君のことを『レベッカ』と呼んでもいいかな?」

「それは構いませんけれど……ですが、オーウェン様、わたしは」

「お兄様」

「……オーウェンさ」

「お兄様」


 ニコニコとしているのに圧がすごい。

 なにがなんでも『お兄様』と呼ばせたいらしい……。というか、なんでそういう発想になるの? この人考えがまったく読めない……。


「……『お兄様』」


 しぶしぶと彼が望むように呼ぶと、デレッと笑う。

 この人、あのアンドレアス殿下の兄なだけあってかっこいいのに、そのデレ顔は残念以外のなにものでもないよ……。


「なんだい、レベッカ」

「騎士団の修練に参加しなくてよろしいのですか?」

「ああっ、そうだった。休憩の取りすぎだと怒られてしまう。レベッカ、また今度ゆっくりお茶でも飲んで話をしよう」


 じゃあ、と爽やかに笑ってオスカー殿下は修練所に駆けていく。

 まるで嵐みたいだった……。


「お嬢、殿下に気にいられたみたいっスね」

「どうしてこうなったの……?」

「殿下は変わってるからなあ。同じ匂いに釣られたんスかねえ」

「どういう意味よ……」

「へへっ、まあ、良かったじゃないっスか。殿下と仲良くなれそうで。そのうち、皇子様たちがお嬢を取り合ったりして!」

「そんなことあるわけないでしょ」


 ジト目でノアを見ると、彼はきょとんとした顔をした。


「え? 十分ありえそうですけど……お嬢、()()()()可愛いですし」


 中身は? とツッコミたいところだけど、自分が傷つきそうなのでやめておく。


「ないわ、ぜったいにない」


 キッパリ言い切る。

 なぜなら、その二人は攻略対象者だからね。彼らは六年後ヒロインに惹かれる運命なのだ。

 まあ、ヒロインが誰のルートに進むかによって恋愛対象になるかならないか変わるんだけど……。ヒロインがアンドレアス殿下とオスカー殿下のルートを選ばないことを祈りたい。


 いや、待てよ……ヒロインかその二人のどちらかのルートを選んだら、わたしどうなるの? 皇妃になれなくなるのでは……?

 いやいやいや。ヒロインがその二人のルートを選んだからといって、ハッピーエンドになるとは限らない。確か、あのゲームはハッピーエンド・トゥルーエンド・ビターエンドとエンディングがいくつかあったはずだ。


 それ以外のノーマルエンドだとヒロインが死ぬか国滅亡するんですけどね……ヤバイなこのゲー厶。


 それはさておき、皇子たちのエンディングがビターエンドだった場合、ヒロインと皇子たちは結ばれない。ヒロインが身を引き、行方不明になって終わったはずだ。

 つまり、ビターエンドならわたしが皇妃になれる可能性はあるということ。


 ……まあ、ヒロインが皇子のルートを選ばないのが一番いいんですけどね……。なにか画策するべきか……。


「なんか……お嬢って変なところで現実的っスよね……もっと夢見ていいんですよ」


 あれ? なんかノアに可哀想な子を見る目で見られてる気がする。

 ちょっとムカつくけれど、ここは抑えてにっこり。


「心配してくれてありがとう。でも、夢は見るものではなくってよ。そう……夢は叶えてこそよ!」


 ファサッと髪を払いながら、キメ顔でノアを見る。


 ……決まった。

 一度言ってみたかったの、このセリフ。

 ノアは感極まったように「おお……!」と呟く。


「なんて素晴らしい名言……! お嬢、一生ついていくっス! オレ、お嬢を見習って、一攫千金の夢、叶えてみせるっス!」


 うおおおお! と気合いの雄叫びをあげるノアを主人らしく鷹揚に見守りながら、わたしは思った。


 ……ねえ、これってやっぱりヒモ宣言だよね?

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ