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67:レナの選択


 特に問題なく入学式と学園初日を終えた。

 レナちゃんとわたしは予想通りに同じクラスになった。


 無属性は数が少ない。そしてレナちゃんの属性は光。光属性なんてレナちゃん以外にはいないから、無属性と同じ扱いにされるだろう──と予想していたのが的中した。


 うん、よかった。これでレナちゃんをより見守りやすいし、なにかあったときに対処ができるかもしれない。


 そしてわたしたちは、帰りに寄り道をして、今巷で人気(※ヴァーリック調べ)だというスイーツのお店に行く。入学祝いというやつだ。

 やってきたお店には、なぜかディランと人型になったヴァーリック、そして──変装したアンディが待っていた。よく見ると後ろの方の席にノアも座って、先にスイーツを堪能している。


 そういえば朝からヴァーリックの姿を見ないな……と思っていたけれど、まさかこんなところにいるとは……ディランはヴァーリックに付き合わされたとして、なんでアンディまでここにいるの? このお店に行くことは伝えていないはずなんだけど……。


「僕がいるのが不思議だって顔をしているね、レベッカ?」

「え? そ、そんなことないわ」


 取り繕ってみたけれど、アンディには無駄なんだろうなぁ……。

 わたしたちはそのままアンディたちのいる席に座ることになった。

 別にアンディやディランがいたって問題はないんですけどね? こう、レナちゃんと女子トークをしようと思っていたからさ、ちょっと予定が狂ったっていうか……。


「こうして僕たちが君たちを待っていたのは他でもない。レナ嬢に頼みたいことがあるからなんだ」

「私にですか……?」


 驚いた顔をするレナちゃんは不安そうにわたしを見る。

 うん、気持ちはわかるよ。いきなり皇子様に頼みたいことがあるって言われたら、なにをさせられるんだろうって思うよね。

 だけど、残念ながらわたしはアンディの頼みたいことというのを聞いていない。だから困った顔をするしかない。

 まあ、なんとなく想像はつくけどね……たぶん魔獣絡みかな。


「ディランからだいぶ光魔法を使いこなせるようになったと聞いているよ。すごく頑張っているね」

「ありがとうございます」

「そこで君に相談なんだけど……その光魔法で僕たちを助けてほしいんだ」

「光魔法で、ですか……?」


 困惑した顔をするレナちゃん。

 そういえば、光魔法で魔獣を浄化すれば元の聖獣に戻れるかもしれないという話をレナちゃんにしていなかったな。

 簡単にそのことを説明しつつ、なぜこんな普通のお店でそんな大切な頼み事をするのかと疑問に思う。

 皇宮に呼ぶなり、わたしの家でなり、頼み事をするに相応しい場所は他にもあっただろうに。


 一通り説明をし終わった頃に、ずっと黙っていたディランが口を開く。


「アンディ、ボクは反対だって言っているでしょ?」

「ディラン」

「そりゃあ、キミたちが焦る気持ちもわかるよ。でも、まだ人に試す段階じゃない。それに……どうせキミの独断なんでしょ」

「え? そうなの?」


 思わず聞き返したわたしにアンディは渋い顔をしつつも頷く。


「……その通りだよ。これは父上にも誰にも相談していないし許可ももらっていない、完全に僕の独断だ」

「どうしてそんなこと……」

「今のままで魔獣被害が出続けると、近いうちに騎士団が機能しなくなる。そうなる前に、できることをしたいんだ」

「でも、レナさんはまだ魔法を使えるようになったばかりだわ。特別な訓練だってしていない。それなのに、魔獣と対峙させようなんて無謀だわ」


 ましてや、誰からも許可をもらっていないのなら、レナちゃんを守るための騎士だってつけられないだろう。今のアンディに騎士団を動かす権限は与えられていない。勝手に騎士を使うことだって許可がなければできないはずだ。


「無茶なことは百も承知の上だよ。レナ嬢は僕が絶対に守ると約束する」

「まさかアンティ……あなたが直接出るつもりなの? それこそ無茶だわ!」

「他に方法がないんだ!」


 珍しく声を荒げるアンディにわたしも押し黙る。

 アンディがここまで追い詰められるなんて……わたしが考えていた以上に状況は悪いんだ。


「……大声を出してごめん。でも、本当に今の状況が続くとまずいんだ」


 感情を押し殺したような声でアンディは言う。

 レナちゃんは困った顔をしてわたしとアンディを見比べていて、ディランはブスッとした顔で押し黙っている。


「……事態が深刻だと言うことはよくわかったわ。だったら、わたしも付いていく」

「君が?」

「ええ。わたし単体では役に立たないけれど、わたしには最強の守護獣が付いているもの。きっと役に立てるし、レナちゃんだって守ってみせる。だからアンディ、あなたが出る必要はないわ。それに──ディランさんだって手伝ってくれるもの」

「は? ボク?」


 突然に引き合いに出されて目を丸くするディラン。しかし、すぐに眉間に皺を寄せて渋面を作る。


「なんでボクがそんなこと……」

「可愛い弟子のためですよ? それくらいして当然ですわ。それに、天才魔法士なら、レナさんの一人や二人、余裕で守れますよね? まさか……ディランさんともあろうお方が、守る自信がないとおっしゃるのかしら?」

「……言ってくれるね……」


 ギロリと睨まれたけれど、全然平易。だってレナちゃんとアンディのためだもの。

 チラリとレナちゃんを見ると、不安そうな顔をしていてはっとする。


 わたし、レナちゃんがアンディの頼み事を引き受ける前提で話をしていた。

 レナちゃんがどうするか一言も言っていないのに。


「ごめんなさい。もちろん、レナさんが嫌だとおっしゃるのなら、アンディの頼みを無理に引き受ける必要はありませんわ。騎士団のことは騎士団や国に任せればいいのです。わたしたちは国とも騎士団とも関係のない、ただの一般人なのですから」

「レベッカさん、ありがとうございます」


 レナちゃんは少しだけ微笑む。

 そしてアンディを見て、顔を引き締めた。


「……私でできることなら、お引き受けいたします」


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