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65:ゲーム開始前夜


 ルーカスにジャックの話を聞いて以降、彼がわたしに接触してくることはなく、平和な日々だった。

 もっとも──わたしの周りでは、の話だけれど。


 国全体で見れば、平和とは言い難い。毎日のようの魔獣被害の報告が上がり、それは減らないどころか、確実に増え続けている。アンディもオスカー殿下も険しい顔をしている時間が増えた。それだけ被害は小さくない、ということなのだろう。


 そんな中でも、わたしたちの学園の入学手続きは進み、わたしたちは明日から学園に入学することになる。

 レナちゃんの入学手続きも問題なく終わったようだ。レナちゃんが無事に入学できてほっとしている。


 レナちゃんとは一緒に学園に行くことになっている。お互いに制服を着て見せ合いっこをして楽しんだ。いやあ、こういうの楽しいよね!


 ……結局のところ、レナちゃんはあのお茶会以降、実家に戻ることなく我が家で過ごしている。学園入学してからもうちから学園に通うことになるだろう。


 というのも、ちょっとレナちゃんの家は今大変な状況なのだ。なぜなら、貴重な光魔法の使い手を隠していたうえに酷い扱いをしていたことが(ディランによって)告発されたからだ。皇家からは睨まれるし、周りからは非難されるし、社交界からも爪弾きにされるしで、とにかく大変な状態。だからレナちゃんはそのまま我が家で預かることになった。まあ、身から出た錆だから同情はしないけれど。


 心配なのはルーカスだけど、見た目によらず図太い彼は平気な顔をして相も変わらず我が家に出入りしている。友人からも敬遠されているようだけど、気にした様子はない。

 本人に大丈夫なのかと聞いたことがあるけれど、「平気です。大変なのは両親ですし、当然の報いなので、甘んじて受け入れています」とあっけらかんと笑った。


 強いなあ、と関心した。

 まあルーカスの場合、両親や友人よりもディランと魔法に対する関心が傾きすぎているから、周りの雑音なんか気にならないのかもしれない。


 あと、肝心のレナちゃんの魔法修練度は着実に上がり、光魔法の使い方もなんとなくわかってきたのだと嬉しそうに報告してくれた。

 ディランさんのお陰です、とチラッとディランの方を向いたレナちゃんの笑顔は本当に眩しくて……このまま二人が上手くいくことをわたしは祈っている。


 そしてわたし以上にルーカスが祈っている。祈るだけでなく、あれこれ画策もしているようだ。

 ほどほどにね、とルーカスに言ってみたものの、わたしのセリフが彼の耳に届いたかどうかは謎だ。


 とにもかくにも、学園に入学する準備は整った。

 あとはゲームのシナリオがどう進むか。

 ……まあ、シナリオうんぬんとか言われても、ほとんど覚えていないんですけどね……。ともあれ、レナちゃんの手助けは全力でするつもりだ。


 あとはそうだな……未だ現れないジャックのことも気になる。アンディからの情報によると、ジャック・マーティンという人物は今年度から学園に通う──つまり、アンディやディランと同学年ということになる。


 ゲームとは設定が違うけれど、これが意味するところはなんだろうか。やはりジャックは……ううん。考えるのはやめておこう。

 少なくとも、ジャック・マーティンという人物が存在するとわかっただけでもよかったと思うしかない。


 この国の状況を作り出した人物についてわたしなりに考えてみたけれど……やっぱりわからなかった。

 現在、わかっている人物の知り合いで共通するのは、わたしとレナちゃんくらいしかいない。わたしはもちろん、レナちゃんが黒幕なわけがない。

 となると、共通の知り合いは存在しないということになるわけで……。


 うーん……わからない。

 考えられるとしたら……アンディもディランもまだ黒幕に接触していない、という可能性。

 ゲームの舞台は学園だし、今はゲーム開始前。となると、ゲーム内で出会う学園関係者に絞られるわけだけど……いっぱいいすぎてわからないよね、うん。


 やはり、ゲームの知識がほぼないのが痛いなあ……。

 でも、ないものねだりをしてもしょうがない。

 明日はゲーム開始の日なのだから、わたしにできる限りのことをして、バッドエンドにならないようにがんばるしかない。


 今、わたしができることは──明日に備えて寝ることかな! 初日から寝坊なんて締まらないし、そんなことがアンディの耳に入ったらなんと言われるか……考えただけで恐ろしい。


 予習のために開いていたゲームのメモを机にしまい、いつもよりも早めにベッドにもぐる。

 せめて夢だけでも、いい夢を見られるといいな。


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