50:デジャヴ
いつになったら光の精霊をあの二人(一人と一匹?)は発見してくれるのだろうか……。
レナちゃんとルーカスの言い合いは止まることはなく、ときどきわたしやアンディまで巻き込んでくるので本当に勘弁してもらいたい。
一番堪えるのが、レナちゃんの氷のような目線と口調なんだよね……。わたしに向けられたものではないとわかっているのに、なぜか胸が痛くなる……。
レナちゃんはひまわりのように笑っていてほしいんだよ、わたしは。
「……いつまでこうしているつもりなの?」
うんざりしたように言うアンディに苦笑いする。
わたしもまったく同じ気持ちだよ、アンディ。だけど、光の精霊が見つかるまでは耐えなくちゃいけないんだ。
「ディランさんとリックが光の精霊を見つけてくれるはずなの。それまで耐えて」
「それなんだけど……どうやって光の精霊を見つけるつもりなの? 未発見の精霊で、リックも見たことがないんでしょう?」
「それは……」
どうやるつもりなんだろう?
そういえば、そのあたりの話は詳しく聞かなかった。ただ、ヴァーリックとディランならなんとかなるだろうって思い込んでいた。
「次、こういうことがあったらきちんと確認をするように」
「はい……以後気をつけます……」
なぜかアンディに指導されるはめに……。
それだけ仲間を信頼しているということで……だめですよね、すみません。肝に銘じます。
それにしても、光の精霊ってどんな姿をしているんだろう? 四大属性の精霊たちは小さな子どものえような姿をしていると聞いたけれど……中には大人の姿をした精霊もいるらしい。
やっぱり子どもの姿なのかなあ?
『見つけたぞ!』
ヴァーリックの声がして、ハッとする。
レナちゃんたちも同様で、言い合いをピタリと止めて周りをキョロキョロと見回す。
人の姿をしたヴァーリックがなにかを片手で摘んで現れた。それと同時に「先越された……!」と少し悔しそうなディランも現れる。
二人ともどこに潜んでいたんだろう? そんなに広い部屋でもないのに。まったく気づかなかった……。姿でも消していたんだろうか? というか、いつの間に部屋に入ったの?
レナちゃんは人型のヴァーリックに会ったことがなく、ルーカスに至ってはヴァーリックの存在自体知らない。突然現れた見知らぬ人物に目を白黒させている。
「リック、ディランさん」
『待たせたな、主! ……おっ、アンディもいるのか?』
「お邪魔しているよ、リック」
「あの……こちらはどなたですか? そ、それにディラン様がどうしてここに?」
チラッチラッとディランを見てもじもじしながらルーカスが尋ねる。
ディランはそんなルーカスの視線なんて気にも止めず、ヴァーリックに「それで光の精霊はどこ?」と詰め寄っている。
なんというか……どちらも相変わらずだな……。
『我のことなんて後でいいだろ。それよりも、これが光の精霊だ! ……たぶん』
たぶん? 今、たぶんって言った?
あとで詳しく聞かないと──と思いつつ、ヴァーリックの言う光の精霊をじっと見る。
それは黄金の毛皮……違う。羽毛に覆われていた。
人になったヴァーリックの片手に乗るサイズ。ちょこんと座り、ビクビクした様子でわたしたちを窺っているそれはどこからどう見ても──ペンギンだった。
……光の精霊ってペンギンなんですか?
見た感じ、ペンギンの雛のようだ。ペンギンの赤ちゃんってもふもふなんだよね。ぬいぐるみみたい。可愛い!
……じゃなくて。
「この子が……光の精霊なの?」
『たぶんな。我も会ったことがないから自信はない!』
自信ないのになんでそんなに偉そうなの?
まあ、ヴァーリックが偉そうなのは今に始まったことではないんだけれども。
「これが光の精霊か……思っていたよりも鳥だな」
ふむふむと呟いたディランに突っ込みたい。
思っていたよりも鳥って感想、どうかと思う。
「怯えているみたいだね。光の精霊は臆病な性格なのかな?」
冷静にそう言ったアンディにヴァーリックが『さあな』と素っ気なく答える。そしてレナちゃんにペンギンを近づける。
『話しかけてやれ』
「え? 私、ですか……?」
『貴様以外に誰がいるんだよ。さあ、早く!』
「はっ、はい!」
レナちゃんがヴァーリックの偉そうなオーラに飲まれてしまった。慌ててヴァーリックからペンギンを受け取り、恐る恐る話しかける。
「えっと……こんにちは?」
『……ヴ、ヴェ……』
レナちゃんが話しかけるとペンギンが反応する。
だけどまだ怯えた様子だ。
……ヴァーリックに捕まったときに怖い目に遭ったのかな……。
「大丈夫。怖くないよ」
レナちゃんが優しく声をかけ、ペンギンを撫でる。
するとペンギンは徐々に落ち着きを取り戻していく。
『ヴェ……ヴェーッ! ヴェーッ!』
短い羽をバタバタとさせ、レナちゃんにお礼を言うかのように頭を下げる。
そして、こう言った。
『……大変お見苦しいところをお見せして申し訳ない。某は光の精霊でござる』
ものすごくいい声で、見た目からは想像もつかない口調でそう喋りだした。
……なんかこういうパターン前にもあったなあ……。




