41:自信
「え……? でも、光魔法は特別な資質が必要で、普通の人には扱えな……」
「私は特別なんかじゃないんです……! 私が特別だったら、あのとき私は……!」
手を覆って泣き出したレナちゃんにおろおろしてしまう。ど、どうしたらいいの……?
落ち着いてください、と優しく声をかけて背中をさする。
少しして落ち着いたようで、グズとハンカチで涙を拭いながら「取り乱してごめんなさい」とレナちゃんは謝る。
「……私、幼い頃に魔法で弟を大怪我させてしまったんです……それ以来、魔法を使うのが怖くて逃げてきました」
やっぱりレナちゃんの弟が療養していたのは、そういう理由だったか。
魔法を使うと、弟を怪我させてしまったときのことを思い出してしまい、発動する直前で躊躇ってしまう。だから魔法が上手く使えない。
全部想像していたことだったけれど……困ったな。理由を知ってしまった以上、そんなトラウマに負けずに魔法を使おう! なんて、とても言えない。
実の家族を自分で傷つけてしまったレナちゃんの心の傷はきっと深い。何年経っても癒えないくらいに。
下手に魔法を使って魔力暴走を起こせば、レナちゃん自身も危ない。オスカー殿下のときのように、上手く収まる見通しだってない。
レナちゃんは光魔法が使える。と、なれば恐らくレナちゃんの魔法属性は光だろう。光魔法自体が稀有すぎてどんな魔法があるのかわかっていないのだ。そんな魔法が暴走したとき、どんな現象が起こるのか想像もつかない。
でも、レナちゃんには魔法が使えるようになってもらわないといけない。これは絶対だ。
彼女が光魔法を使いこなせない限り、きっと魔獣化する人が増え続ける。それによって魔獣の被害も増えるだろう。
それにはレナちゃんにはトラウマを克服してもらわないといけないけれど……こればかりはわたしたちが介入できる問題ではない。
「でも……私、魔法を使えるようになりたいんです……! ちゃんと使いこなせるようにならないと、きっと私、前に進めないと思うから……。それに、ここまで丁寧に魔法を教えてくれたディランさん、応援してくれたレベッカさんの気持ちに応えたいんです」
「レナさん……」
震えながら、真剣な顔をしてそう言ったレナちゃんはかっこいい。わたしがレナちゃんの立場だったら、きっとこんなふうに思えないし言えない。
こういう強さがあるからこそ、レナちゃんはゲームの主人公なんだ。
だからわたしは、そんなレナちゃんを応援したい。
「──レナさんのご覚悟、しかと受け取りました。頑張って魔法を使いこなしましょう!」
「はい!」
レナちゃんは力強く頷いた。
その瞳には強い光が灯っていた。
──結論から言って、レナちゃんはどんなに頑張っでも魔法を出せなかった。
レナちゃん自身は頑張って魔法を使おうとしている。でも、彼女の心がそれを拒んでいるようにわたしには見えた。
「どうして……」
俯くレナちゃんにかける言葉が見つからない。
何度も何度も挑戦しても、魔法は発動前に掻き消えてしまう。
それでもレナちゃんは諦めなかった。毎日魔法を発動させようと、何回も何回も呪文を唱え続けた。
だけど……残念なことに、その努力が報われる気配は一向にない。
「レナさん……今日はもうやめましょう? これ以上続けるのは負荷がかかり過ぎます」
「……いいえ。大丈夫です。あと一回だけ」
毅然と、もう一度呪文を唱えるレナちゃん。
その姿は健気を通り越して……どこか痛々しい。
レナちゃんが無理をしているのはわかっている。だからきっと魔法が発動しない。
……恐らく、これはレナちゃん一人でどうにかなるような問題ではないのだろう。
レナちゃんが自分を信じられていない。彼女が自分を信じられるようになるには、きっとレナちゃんの家族の協力が必要だ。
だけど……ご両親にそれを望むのは難しいだろう。
となると、望みは───レナちゃんの弟ルーカスだけだ。
ルーカスとはあまり接点がないけれど……こんなにレナちゃんが頑張っているんだから、彼との接点くらいいくらでも作ってみせる。
そして、レナちゃんに自信をつけてもらうんだ。




