代表戸締り役相内マホトの行くな!行くな!超えるな!~無限連打編~48日後・・・
皆さんこんにちは。涼森里穂です。今回この小説が初めて投稿になります。この小説は連載になっており、1話打ち切りの50シーズンを予定しています。というわけで、適当に考えといて!
「ドゥワァ!センナナヒャク!!」
駅のプラットホームを駆け抜ける青年がそう言いながら相内マホトの目の前を通り過ぎた。
その後すぐに、電車は到着しドアが開いた。
埼玉北武オカピズの投手である相内は一昨日に一軍合流を言い渡され、今日は名古屋ワイバーンズ本拠地のナゴヤドームで先発する。高卒6年目であるが未だにプロ初勝利を手に入れていない。今年こそ1軍定着するぞ、そう意気込んで相内は電車へ乗り込んだ。
セ・パ交流戦、相手本拠地ナゴヤドームに乗り込んでの3戦目。先発の相内が先頭の大島にいきなりホームランを浴び、その後2つの四球を与えて迎えるは4番ビシエド。真ん中高めに行ったストレートはレフトスタンドへと運ばれた。その後も制球は定まらず、0回1/3、7失点で降板となった。
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年は100敗だな」の声。
試合は3回が終わり、8-2。ベンチから声援を送るチームメイトたちに背を向け相内は帰路へ着いた。試合はデイゲーム13時開始だったのでまだ時間があった。特にやることもなかったので後輩の佐藤流星に電話をかけた。
「お疲れ、佐藤。今大丈夫か。」
後輩に心配はかけたくないと思い、明るいトーンで訊いた。
「大丈夫ですよ。今日2軍はオフなので。寮のみんなで相内さんが打たれこまれる姿見てました。」
佐藤はかなり上機嫌に返した。
「なんだお前。結構嬉しそうじゃねぇか。こっちはこれでもショック受けてんだよ。」
「じゃあ今夜は僕の運転でドライブに行きましょう。相内さんの今季1軍初登板祝いも兼ねて。今どこですか。」
「今名古屋駅だ。6時頃東京駅着くから待ってろ。」
そう言って電話を切った。あまり佐藤は気を使わないタイプだったので、まさかの気遣いに相内は不意を突かれてしまった。そうしているうちにのぼりの新幹線が到着し、相内はそれに乗り込んだ。
相内はグリーン車の一番後ろの席をとっていたので、背もたれを倒し少し目を閉じた。
「俺も新幹線みたいに300キロ出せればなぁ」
つい独り言を呟いてしまった。自分ではあまり気にしていないつもりだったが今日の結果は相当辛かったようだ。
「どうすりゃいいんだ・・・」
相内は悔し涙を流し続けた。
「・・・さん、・・・内さん、相内さん!」
どれくらい経ったろうか、相内ははっと目覚めた。
「さ・・・佐藤?ここはどこだ。私はだれだ。」
「何言ってんすか、相内さん。ここは僕の車で、今から高速道路に乗るとこです。」
「あぁ、そうか。そうだな。」
「えーっと、東京方面は右だな。」
料金所を抜け分岐を右に入った。
「相内さん、携帯鳴ってますよ。」
「ほんとだ。ヤベ、監督からだ。切っとこ。」
相内は監督からの電話を拒否した。
「相内さんそんなことしていいんすか。監督からでしょ。」
「どうせ2軍落ちの通知だ。もうどうなってもいい。」
いよいよ本線に合流する。
「東京方面は右だったから・・・、こっちか。」
佐藤は本線に合流することなくハンドルを大きく右に切った。
「おい!そっちじゃ・・・」
相内は逆走しているのを注意しようとしたが、遮られた。
「見てください!相内さんのストレートより出てますよ!149km/h!・・・ん?・・・うわっ!前から車が!!!」