008
「さてと、んじゃ宿屋に寄って、荷物をまとめて帰ろうか」
体の違和感もなくなってきた。足も普通に動いている。
モンスターに遭遇しても、まぁなんとかなるだろう。
「あ、ちょっと待って、ビオリス!」
「早く行こう。急いで戻れば町に着くころには夜だ」
「そ、そうだけどっ……」
広場から、岩に囲まれた脇道へと進む。
後ろからやってきたクラリスが隣に並び、両手を後ろに回しながらこちらを見つめる。
「どうした?」
「う、ううん。やっと、いつものビオリスに戻ったかなって思って……」
俺のことを心配してくれていたのか……。
「クラリス」
「ん?」
「その、なんだ……」
普段ならスッと「ありがとう」くらい言えるのに……、自分の弱みを見られた相手だと思うと言いにくいもんだな……。
「ビオリス、どうしたの?」
「いや、まぁ……」
くっ……いざ感謝の言葉を口にしようとすると言いづらい……。
まっすぐな瞳で見つめられると余計に……。
「えっとだな……」
「うん……?」
「……」
一旦、クラリスの頭に手を置いて落ち着いてみる。
綺麗な金色の髪が、サラサラと揺れている。
無言でそのまま撫でていると、
「え、えっ?」
と、慌てたクラリスが頭に乗せた俺の手を見上げた。
うん、これでいつもの関係だな。
「……ありがとうな」
「なっ……きゅ、急になにっ……?」
「アイシャたちのことを助けてくれたり、俺とパーティを組んでくれたり……。それに、クラリスの血を分けてもらったり……」
感謝の言葉だけじゃ足りないくらいだ……。
「べ、別に大したことじゃないから、気にしなくていいのに……」
「クラリスが気にしなくても、俺が気にするんだよ」
大人が子どもに助けてもらいっぱなしじゃ、恰好がつかないしな……。
「今度は、俺が守ってやらないとな」
「そ、そんなの……別にいいのに……」
「いや、なにか困ったことがあれば言ってくれ。クラリスの頼みならなんでも聞くぞ」
クラリスの体がピクッと反応した。
「な、なんでも……?」
「あ、ああ、なんでも」
「……なんでも…………」
…………。「なんでも」は、さすがに言い過ぎたか?
「えへ……えへへ……」
黙ったまま、ニヤニヤするクラリス。
「お、おいクラリス……」
「んへへ……えへへ……」
聞こえていない、だと……。
――――この日の晩、エアリエルの町まで戻って酒場で飯を食べ終え、クラリスの希望で俺の家に到着……。
散らかっている家中を二人で片付けた後、シャワーを浴びてようやく眠れるかと思いきや…………――――――
「ちゅ~……ちゅぅ~……」
「……」
ソファの上で血を吸われ、裸で添い寝され……。
「すー……んっ……」
すやすやと寝息を立て始めるクラリス。
小さな二つの膨らみが俺の体に当たり、足に絡みつくクラリスの柔らかな太もも……。
生暖かい温度が伝わって、我慢できずに自然と膨らむものがもう一つ……。
「すー……すー…………」
「……っ」
一週間……いや、青年の姿にされてから、一度もアレをできていない……。
なのに、金髪の美少女が無防備に裸体を晒してすやすやと、俺の上で眠っている……。
クラリスからほんのりと漂ってくる甘い匂い……。
「(ぁあああぁぁああああ……!)」
声にならない声が鳴る。
こんなの、男として我慢できるわけがないだろうがっ……!
「……っしょ」
「んっ……んんっ……」
俺の上で寝ていたクラリスを一度抱きかかえ、そっとソファに下ろして毛布をかける。
「……」
手に伝わってきたのは、ふにふにとした生肌の感触……。
あざが出来るほどの威力があるのに、どうして体はこんなに柔らかいのだろうか……。
静かに、バレないように、起きてしまわないように気をつけて――――――
「…………ふぅ」
…………。
クラリスが居るのに、やってしまった……。
昇天したあとに押し寄せてくる、虚無感と罪悪感……。
ま、まぁ……、クラリスも俺の隣で一回は事を済ませていたんだし、これでお互い様ということで……。
「もう一回、シャワーだけ浴びておこうかな……」
スッキリした俺はシャワーを浴び直してから、クラリスの足元で眠ることにした。




