表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/84

003

「あの子、あれで働けてるの……?」

「一応はここの看板娘なんだがな……」

「あれで?」

「あ、ああ……」

「胸が大きければ、あんなんでも働けるのね……」


 クラリスの中で、マリアに対する評価がどんどん下がっていくのが伝わってくる……。


「ま、まぁ、気にしてても仕方がないし飯にしよう。クラリスは何がいい?」

「えっ……と。それじゃ、肉料理で美味しいのがいいかな」

「よし、肉料理なら良いのがある。おーいマリア、こっち注文いいか?」

「ハッ……!」

「うん?」


 元気のなかったマリアのケモ耳がピクッと立ち上がった。


「おーい、こっちだ」


 少しだけ元気になったように見えるマリアと目が合う。

 だが、すぐにまた耳が垂れ落ちた。


「はーい……」


 とぼとぼと、元気なく歩いてくるマリア。


「とりあえず酒……は飲めないから、水と……クラリスはジュースか?」

「ちょっと、子ども扱いしないでよ……」

「んじゃ、酒でも飲むか?」

「お、お酒はちょっと……苦手で……」


 クラリスは酒がダメなのか。

 サキュバスやヴァンパイアは、ワインくらい嗜むイメージだったんだがな。


「んじゃ、すまないが水を二つと牛の骨付き肉、鳥と野菜の串焼きを六本。あと、今日の店主のオススメの料理で頼むわ」

「……」


 メモとペンと持ったまま、こっちをじっと見つめるマリア。


「どうしたんだ?」

「……あ、いえ、すみません……。ご注文は以上ですか?」

「ああ」


 マリアがじっと見つめてくる……。


「おい、大丈夫か?」

「え、あ、はいっ! わ、分かりましたっ……」


 マリアが背中を見せて、注文を伝えに行く。


「…………」

「マリア、どうした?」

「い、いえ……!」


 途中でこちらを振り返ったかと思えば、駆け足で去っていくマリア。


「あの子、どうしたのかしら」

「分からん……」


 あんなに変な態度のマリアは初めて見る。

 なにかあったんだろうか……。


「――――なぁ、聞いたか?」

「――――ああ、八階層に行った冒険者が死んだらしいな」


 ふーん……、また誰か死んだのか……。


 一つ隣のテーブルで始まった会話に耳を傾けてみるう。


 こういう場所は、他の冒険者の話を聞くことができ、情報交換はしなくても、一方的に情報を得られる良い場所だ。


「――――八階層で、しかも一人だったらしい」

「――――八階層で単独って、よっぽどだね」


 八階層でってことは、確かにそれなりの冒険者だな……。


「はい、先にお水です……」

「おう、ありがとな」

「……」


 俺のことをチラ見して去っていくマリア。


「あの子、態度わるくないかしら……」

「ま、まぁ、色々あったんだろう。そう睨んでやるな」

「むぅ……私と同じくらいなのに、あの胸はなんなのよ……」

「ん、なにか言ったか?」

「な、なにもないわよっ!」


 クラリスも機嫌がよろしくないみたいだし……。

 マリアのやつも本当にどうしたんだろうか……。


「……」


 水を飲みながら、再び隣のテーブルの冒険者に耳を傾ける。


「――――あの大剣使いのおっさんがまさかなぁ」


 大剣使いの、おっさん……?


「――――ああ、まさか、ギルド認定されていた冒険者だったとはね。この間、ここの酒場で乱闘を鎮めたの、そのおっさんらしいよ」


 八階層で死んだ大剣使い……。

 ギルド認定されていた冒険者……。

 酒場の乱闘を鎮めたおっさん……。


「――――ゴーレム討伐にも参加していたらしいぜ……あのビオリスっておっさん」

「――――ッッブフォォオオオオオオッ!」


 衝撃の内容に、口に含んでいた水が勢いよく外へ……。


「ちょっと……ビオリス……」

「えっ…………」


 目の前に座っていたクラリスが水浸しに……。


「す、すまん……!」

「別にいいわ……、水なら乾けばいいだけだし……」


 俺はクラリスに謝りつつ、自分の口元を拭いた。


 いや、待て待て……。

 俺が死んだ? 八階層で?


「ビオリス?」

「…………」


 隣の冒険者の話、詳しく聞く必要があるな……。


 俺はクラリスに、

「ちょっと待っててくれ」

 と声をかけ、話をしていた冒険者二人のテーブルへ。


「なぁ、あんたら、ちょっといいか?」

「「うん?」」


 獣人の二人組がこちらに目を向ける。

 どちらも若い男の獣人だった。

 短剣にソードは持っているが、衣服はダンジョンに行く雰囲気ではない。


「その冒険者の話、俺にも教えてくれないか?」

「ああ、別に構わないぜ」

「うん、すでに広まってるみたいだし」

「あ、ありがとな……」


 金でも要求されるかと思っていたが、案外いい奴らだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ