004
…………。
「え?」
「ね、もう待てないから……」
ゆっくりと体を引き寄せてくるクラリス。
「ちょ、待て待て……!」
「いや、もうダメ……昨日からだから、もう我慢できないの……」
全裸のクラリスが、座っている俺の上に跨って――――――
金髪の美少女に抱きつかれた……。
「もう待てないって、まさか……。お、おい……クラリス、なにをする気だ⁉」
「はぁ……はぁっ……これでも、必死に我慢したんだからっ……」
小さな口から漏れるクラリスの息が当たる……。
そんな艶っぽい声と顔でこっちを見つめないでくれ……。
「お、落ち着け……、お前はまだ――――」
「もうダメ……もう待てないの……」
クラリスの小さな顔がゆっくりと……ゆっくりと近づいてくる。
「おいおいおいおい……!」
くっ……昨日のダメージが残ってるのか、クラリスを押し返せない……。
クラリスの潤んだ唇が少しだけ開いて糸を引く。
「ちょっと待て、俺には――――――ッ⁉」
――――かぷっ。
「チュゥウ……ゴクッ……ゴクッ……」
クラリスに首を噛まれ、俺の血が吸われていく。
「なんだ……ただの吸血衝動か……」
「ごきゅっ……ごきゅっ……」
クラリスの翼がぱたぱたと、嬉しそうに背中で動いているのが見える。
「あんまり吸い過ぎないでくれよ……」
「んんっ……ごきゅんっ……!」
「返事と一緒に飲まないでくれ……」
疲れの溜まった体から血を吸われるのは辛いが、こんな美少女に噛まれるなら本望か……。
――――――バンッ!
「うん?」
「シュヴァルツ君っ!」
唐突に目の前の扉が開いたと思えば、そこにはアイシャが立っていた。
「おお、アイシャか」
「は、はわわっ……! はわわっ⁉ はうあうぅ⁉」
ベッドの上で俺に抱きついたままの裸のクラリス……。
状況証拠によってアイシャが顔を真っ赤にしていく。
「は、はわわ! こ、これはどどどどどういう……⁉」
目を隠そうとしているが、隙間からこちらを覗いているのが丸見えだ……。
「……あら、男女の部屋にノックも無しに入るなんて、礼儀がなってないわよ?」
アイシャへと、口元を拭きながら話しかけるクラリス。
アイシャから見れば、俺の上に裸のクラリスが乗っている状況。
こんなの、ヤッてる最中にしか見えないじゃないか……。
「すす、すみませんっ……失礼しました!」
扉から急いで出て行こうとしたアイシャだが、すぐに身を翻してこちらに振り向きなおした。
「――――じゃなくてっ! ククククラリスさんっ、なにしてるんですかっ⁉」
「久しぶりだったから……その、我慢できなくて……♡」
口元を押さえて、頬を赤らめるクラリス……。
明らかにアイシャのことをからかっている……。
「ひ、久しぶりって、まさか……⁉」
「うん、彼から分けてもらうのが……♡」
クラリスは人差し指をいやらしく咥え、淫魔の雰囲気を漂わせる。
「わ、わわわ! 分けてもらうってそんな……あ、あ、あ、あれをっ⁉」
「あれって言われても、なにか言ってくれないと分からないわ」
「あ、あわわ……あわわわわ……!」
クラリスの微笑に、アイシャが激しく動揺する。
さすがにアイシャが可愛そうなので、クラリスの頭を軽く叩いて注意した。
「クラリス、若い子をからかうもんじゃないぞ……」
「あら、私は本当のことを言っただけよ?」
むぎゅっと抱きつきながら笑うクラリス。
「まだヤッたこともないんだろ……」
「え、あ、そ、それはそのっ……!」
あ、これは言わない方がよかったかもしれない。
余裕を見せていたクラリスも、俺の言葉に慌てだしてしまった。
「この態勢で恥ずかしくないのに、なぜ処女ということが恥ずかしいんだ……」
「は、恥ずかしいわけじゃないっ! ただ、最初は好きな人としたいだけだもん! 誰とでもするような破廉恥な女じゃないんだもん……」
顔を真っ赤にしたクラリスが俯いて意気消沈した。
語尾が時々「もん」になるのはアイシャと一緒だな……。
「うぅ……私はその辺のサキュバスとは違うもん……」
「す、すまん……」
涙目で言われると強く言えない……。
「あ、あのね……?」
「ん、どうした?」
「ビオリスが寝ている間に、やろうと思えばできたのよ? でも、それはなんか順序が違うというか、それだと私が襲ってるみたいで嫌だったし……無理やりしてビオリスに嫌われたらって思うとできなくて……だから一人で済ましたというか……」
俺が寝ている間にそんな葛藤が……。
……ん、一人で済ました?




