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006

「あーあ、酒が不味くなっちまったなぁ……。久しぶりに歓楽街にでも行くか、それとも家に帰って寝るか……」


 独りでぶつくさ言うビオリス。


 道の端にぽつりぽつりと点在する灯りにビオリスの顔が明るくなっては暗く染まっていく。


「――――ま、待って! 待ってー!」

「……ん?」


 ぱたぱたと、そしてぽよぽよと胸が揺れ動く小さな人影。


「や、やっと追いついた……はぁ……はぁ……。ふぅ……」


 後ろから走ってきたのは、先程まで涙目になっていた看板娘のマリアだった。


 膝に手をつきながら息を整えるマリア。「はふぅ」と汗を拭う上を向いた顔には、男を誘う妙な色気を感じる。


 それを無意識でしてしまうのだから、女という生き物は本当に恐ろしい。


 そんなことを頭の片隅で考えつつ……。


「なんだ?」

「ふー、はー……。えっと、あの……その……!」


 マリアはその膨らんだ胸の前で手をもじもじさせ、ビオリスを見上げる。


 ビオリスはその胸元にしか目が向いていないのは言うまでもない。


 膨らみが二つあれば見つめてしまうのが男というものなのだから。


「さっきはその……あ、ありがとう……」


 じー……。


「ビ、ビオリス?」

「ん……あ、ああ。分かった分かった。あんまりおっさんをからかわないでくれよ。そんな恰好で言い寄られちゃ、路地裏に連れて行きたくなっちまうから」


 我に返ったビオリスはそのまま空を見上げた。


「あっ……きゃっ……」

「はぁ……、少しはしっかりしてくれよ、酒場の看板娘さんよ……」


 濡れ透けたピンク色の下着が宙に描かれる。


 おっさんだろうと若者だろうと、どうして男は女性の体に目がいってしまうのだろうか。


 どうしようもない考えを巡らせるビオリス。見上げた天には星が無数に瞬いていた。


 きらめく星々の光――――しかし、その空を遮る巨大な構造物がこの町には存在する。


 今、彼の目の前に見える構造物、冒険者たちから「ダンジョン」と呼ばれる危険な場所。


 天へと高くそびえ立つ天空の迷宮エアリアル。


 渦巻き状になったその先端は絶えず雲間に隠され、地上からエアリエルの天辺を見ることは叶わない。


 その先には何があるのか。この頂上には何があるのか。


 人間もエルフもドワーフも、獣人だろうと、その希望と夢に満ちた高みを目指す。


 エアリエルの一階から九階までのダンジョンは、階層ごとに存在したモンスターを倒し攻略済み。


 しかし、どういうわけかモンスターたちは絶えず湧き生まれる。


 そのおかげで冒険者たちは自身の身の丈に合った階層で鍛錬に勤しむことができている。


 このエアリエルの中は外へと繋がる通路は一切なく、全何階層あるのかは不明。地上で暮らす者たちは誰もその全容が分からない。


 ――――階層のボスモンスター未討伐領域、第十階層。


 マップはおおかた把握されているのだが、十階層から十一階へとつながる階段の前には巨大なゴーレムが待ち構え、魔法も武器も効かない難敵であった。


 天を目指す冒険者たちはゴーレムを討伐すべく、上級冒険者たちを集めた。


 編成された大人数のパーティ。だが、ゴーレムを倒すことは出来ず、精鋭二十五名は敗走した。中には生きて帰らなかった者たちも――――――

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カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
― 新着の感想 ―
[良い点] 6/7  きらめく星々の光――――しかし、その空を遮る巨大な構造物がこの町には存在する。 ここすき。 [気になる点] 魔法も物理も効かないのはキツいw
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