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003

「こいつ、なんなんだよ!」

「知らねぇよ! こんな奴に勝てるか!」


 ハルギへと背中を向け、逃げ出そうとする盗賊。


 それに追随するように、二人の盗賊もシュヴァルツたちの居る方へと向かうが――――


 ハルギが両手で剣を握り締め、剣先を天井へと向ける。


「敵共を切断せよ、氷帝……」


 青い剣から冷気が漏れ出し、左右に白いモヤが現れる。


 モヤは次第に形を成し、ハルギの青い剣が氷の剣として、空中に横並びに複製されていった。


 上を向いていた氷の剣たちはまっすぐに、標的の背中を補足するべく切っ先を向ける。


「死に逝け……」


 ハルギの呟きと共に、氷剣は盗賊の方へと回転しながら飛んでいく。


「い、嫌だぁあああ――――――」

「グッ……!」

「ギャァッ……!」


 氷剣によって、逃げ出そうとした盗賊たちが地面に、鮮血とともに散っていく。


「――――止まれ、クソ騎士!」


 盗賊のリーダー、ビルドの手にはダガーが握られ、その反対の手にはジャックが捕らえられている。


「……」

「こいつが死んだら困るのはお前だろ? さぁ、剣を捨てろ!」

「……」


 ハルギはビルドの方を向いたまま、その場で立ち止まった。


「その剣を捨てて、地べたに這いつくばって、謝れって言ってんだ、クソ野郎が!」

「一時の感情に流されれば己を見失う……所詮は野蛮な生き物か……」


 呆れたようなハルギの呟き。


「っ……!」


 その言葉にビルドの手に力が入り、ジャックの首元が絞まっていく。


「あぁ? 今なんて言ったこの野郎⁉」

「もう飽いた……」

「はぁ⁉ こんなに人を殺しておいて『飽いた』だと⁉」


 ハルギはビルドの言葉に「ふっ」と声を漏らす。


「なに笑ってやがる!」

「お前より、彼の方が冷静らしい……」

「はぁ? なにを言って――――」

「周囲の者を吹き飛ばせ、エアーバーン」


 ジャックは口を塞いでいた布を外して詠唱をおこなっていた。


 そして、頭に血が上っていたビルドは、ジャックの唱えていたその魔法に気が付くことができなかった。


 この場において、ジャックの口が詠唱をしていることに気が付いた者は二人のみ……。


「うぉっ……⁉」


 ジャックの周りに猛烈な突風が巻き起こる。


「ぐっ……! こ、こんなものっ……!」


 ジャックを中心とした竜巻にも似た突風。


 その中心から少しでも逸れようものなら、風は猛威を振るってその者を弾き出そうと唸りをあげる。


「ぐぉぉおおっ……!」


 ビルドの踏ん張りもむなしく、その巨体は空中へと投げ飛ばされた。


「……バレッタ!」


 ジャックはバレッタの元へと駆け寄り、後ろで縛られた手を使い、なんとかバレッタを立ち上がらせる。


「(シュヴァルツ君、そろそろあの二人を……)」

「(まだだ……)」

「(でもっ……!)」


 血だらけになった洞窟内。


 シュヴァルツたちの方向へ逃げようとするジャックとバレッタ。

 それを追いかけるはビルド。


「――――すまないが、逃げられては困る……」

「くっ!」


 ハルギが逃げ道を塞ぐように、二人の前に立ちはだかる。


 シュヴァルツたちの居る場所までは、まだもう少し走らなければ辿り着くことができない。


「お前に用は無い、失せろ……」


 ハルギが青い剣を突き立てるのは………………二人の後ろに立つビルドだった。


「おい、剣を向ける相手が違うだろうが!」

「お前は不愉快だ……いや、そもそも盗賊という輩が不愉快極まりない……」

「馬鹿かてめぇ……! 不愉快なのはこっちのセリフだ!」


 二人を挟み、言い争うハルギとビルド。


「今すぐ消えろ……、もしそうしないのなら、この場で死に逝け……」

「面白ぇ……、その鎧から中身引きずり出してぶっ潰してやる!」


 ビルドが構える。彼はハルギを相手に拳で戦うようだった。


 武器を持たない格闘家と鎧の騎士ハルギ。


 二人の気迫に、左右に分かれたジャックとバレッタが、互いに離れるように後ずさる。


 シュヴァルツはその様子をじっと見つめていた。

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カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
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