表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/84

001

 第六階層から第七階層への階段が続く場所。ここは、モンスターたちとの急な遭遇を防ぐために、周囲の木と茂みが無くなっている。


 そして、そこから横道に外れた位置、指定された場所へと向かう。


「これか……」


 岩の裂け目から、確かに奥へと通じる道が存在した。


 狭い入口を一人ずつ入っていくと、中は少しだけ横幅が広がっていた。


 二人が並んで歩くには少し狭いくらいだろうか。


「二人とも、足元に気を付けろよ」


 俺が先頭を行き、二人が後ろを注意深く進んで行く。


 岩壁には点々と、俺たちを引き込むかのように、ランプの灯りが揺らめいている。


 ジャックとバレッタを連れ去った奴らは間違いなくここに居る……。


 岩の裂け目は徐々にその幅を広げていき、歩いた先には開けた場所が見つかった。


 空洞……広場か……?


「ッ――――⁉」


 俺は二人に「止まれ」と後ろ手に合図を送る。


「「ッ……!」」


 そのまま振り向き、口に指を当てながら二人に「静かに」と無言で告げる。


「「…………」」


 慎重に、足音を立てずに中の様子をうかがう。


 空洞の中には数人の冒険者が一定の距離をとって立っている。


「っ……!」


 ジャックとバレッタはすぐに見つかった。だが――――――あいつは…………。


 黒い鎧に身を包み、青い剣を地に突き刺したまま、まるで銅像のように止まっている者の姿。


 その下に、二人は拘束されて転がっていた。


 あいつはハルギ・ディーセスト…………。


 ゴーレム討伐隊の一人であり、裏ギルドの幹部と思われる人物。


 全身を包む黒い鎧が印象的であり、手に握る青い剣は奴の属性を反映している。


「はっ……これは厄介な奴が居たもんだ……」


 自然と額から滲みでる汗。


 十年前の敵が目の前に居るこの状況……。冷静に……冷静に状況を判断しなければならない……。


「ハルギの旦那ぁ……」

「……」


 裏ギルドのメンバーらしき男がハルギへと近づいていく。


「お目当てのジャックは連れて来ましたし、この獣人の娘は俺たちにくださいよぉ」


 ハルギの足元で、手足を縛られ、口も塞がれている二人。


 男の声にバレッタが涙を流していた。


「旦那ぁ、聞いてますかい?」

「……」


 黒い鎧は微動だにせず、ハルギは無言を貫いていた。


「旦那もさぁ、一発ヤればスッキリしますぜ?」

「……」


 男の言葉に、周りの連中が自然とバレッタの近くに寄っていく。


 ニヤニヤと、下心が見え見えの男たちはバレッタを凝視する。


「……んっ~! んんーっ!」


 武器を持った冒険者たち、若い者も居れば獣人やエルフも混じっている。


 バレッタは自分の身に迫る者たちに恐怖し、声にならない泣き声をあげていた。


「ね、旦那っ、獣人の若い体はあっちの締まりもよくて――――」

「口を開くな……」


 動かない鎧から発される低い声。


 その声音に、集まりかけていた彼らの足がピタリと止まる。


「え……今なんて……?」


 男は冷や汗をかきながら、ハルギから一歩だけ後ろに引き下がった。


「それ以上……その薄汚い口を開くなと言っているんだ……」

「だ、旦那、そりゃ――――」

「目障りだ、散れ……」


 ハルギの冷たい態度に、男はイラついたらしい。


「お、俺たちがそいつらを捕まえて来たんだぜ旦那ぁ! ちょっとは――――ひぃっ!」


 ハルギの頭部がゆっくりとその男の方を向く。それと同時に、男は小さな悲鳴をあげた。


「私は『ジャックを』と言ったのだ……獣人の小娘なんぞ頼んだ覚えはない……」

「こ、これは旦那にと思って……」

「要らん。お前たちの好きにすればいい……」

「あ、ありがとうございやす……!」


 緊張からか、男の笑う顔はひきつっている。


「んじゃ、さっそく」

「……だがな」

「えっ?」


 バレッタへと手が伸びていた男がピタリと止まり、ハルギの頭部を見つめる。


「ッ――――――!」


 次の瞬間、地につけていた青い剣が、男の首元を斜めに移動した。


 斬られた頭がゆっくりと宙を舞っていく。


「「「――――っ⁉」」」


 浮いていた頭部が、ごろっと地面に転げ落ちていく。


「んん~っ! んん~ッ⁉」


 バレッタの目の前に落ちた生首が、目を見開いたままその動きを止めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ