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001

 明けた日の午後、第五階層休息地、ペンタグラムの町にて。


 シュヴァルツは、黒いマントの下に一式の装備を隠して現れた。

 回復ポーションに状態異常を治すポーション、投げナイフに煙玉……。

 マントの開いた部分からは、黒い剣だけが顔を覗かせていた。



「おぉ……なんかこの町も久しぶりだな……」


 武器屋に防具屋、道具屋、鍛冶屋と……、必要最低限の準備ができる店が点々と並んだ町ペンタグラム。


 宿屋が大半を占めているこの町は、冒険者にとってダンジョンへ突き進むための通過地点であり、休憩場所となっている。


「さてさて、気は乗らないがやるしかねぇよな……」


 誰も聞いていない愚痴を独りで呟き、複数の冒険者とすれ違いつつ、ペンタグラムの中心である噴水広場へと向かう。


 この町の後ろの方には男女専用の宿屋もあり、知り合った冒険者同士がその日限りの交わりを行ったりもする。


 まぁ、年齢制限で今の俺には無縁の場所だが…………。


「さてさて……、アイシャとシズクはどこかな」


 シズクがこの間のアイシャの恰好をしてくれれば、いい感じにこう……ボンキュッボンに胸が……。いや、あの落ち着いた雰囲気だと逆に合わないかもしれない。


 あれはアイシャだからこそ似合うってものか。


 噴水広場では、四人パーティの冒険者と数人の冒険者たちが腰かけたり話し合いをしていた。


「――――え、あれ⁉ なんでシュヴァルツ君がここにいるの⁉」

「おお、アイシャか」


 驚いたアイシャに手を振りつつ傍まで近寄る。


 ついでに、装備という名の服装チェックもしておこう。


 上半身は黒い長袖の下着を手首まで伸ばしており、その上から青い半袖の上着、腕には防御用の鉄製のプレートが巻かれている。


 ベルトには瓶に入ったポーションが数本。手にはグローブと、腰の両脇に剣が二つか。


 太ももの露出は相変わらず丸見えであり、俺としては眼福眼福……。


 まぁ、この間に比べれば多少はまともな装備になっているようだな。


「あのさー、なにをそんなにジロジロ見てんのかなぁー?」


 腕組みをしたアイシャにジト目でこちらを見つめられる。


 寄せても寄らない胸はそっとしておいて……。


「前と違って、少しは装備を整えてきたんだなって思ってな」

「くぅぅうー! なにぉぉ! っていうか、そーもーそーもぉー!」


 言いながら詰め寄ってくるアイシャ。


「な、なんだなんだ……」


 アイシャの動きを制止するように、両手で前面をガードする。


 至近距離にも関わらず、前に出した手に胸は当たらない。


「なんで君が五階層に、ここの町に居るのかなー⁉」

「まぁ、それは話すと長くなる……」


 本当に長くなる……。あと、少しいい香りがする……。


「ん……あれ? しかもそのネックレスは?」

「あ、ああ。ギルド長から貰ったんだ」


 首からぶら下げていたネックレスをアイシャに見せる。


「ぼ、冒険者になったのがついこの間の君が……、ギルド長から……それもCランクのネックレスを与えられたって⁉」


「だからそう言ったつもりなんだが……」


 あわあわと震えだすアイシャ。


 まぁ、こんなので本当に冒険者のランクが決められるなんて、一昔前なら笑われてただろうがな。


 無茶する奴が多かったせいで、こんなルールが出来た。真面目にせっせと冒険をしてきた俺からすればいい迷惑だ。


「え……噴水広場で任務をする冒険者と待ち合わせって……それじゃ、今日の任務ってもしかして……」

「ああ、俺がその冒険者だ。よろしくな」

「そ、そんなぁ…………(そりゃ、私が君から逃げてたってのはあるけど、一人で勝手に昇級されるなんて……)」


 なぜか肩を落とすアイシャ。

 なにかゴニョゴニョと呟いていたが、まったく聞き取れない。


「すまない、なんて言ったんだ?」

「な、なんにもないですぅーだっ! ふんっ!」


 なんでこいつは毎回怒っているんだ……。

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カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
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