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006

「これはなんだ?」

「君がどこに連れていくか心配だからね。私がお店を紹介してあげる」

「だからって手を繋がなくても……」

「い、いいから行こっ!」


 棒立ちしている俺は、アイシャに無理やり手を掴まれていた。


 足早に歩くアイシャ。


 引き締まったそのくびれに目が吸い込まれてしまう。


「お、おい……」

「な、なにっ!」


 なんでアイシャか動揺しているんだろうか。


 こちらに振り向く横顔も、少しだけ赤いような……。


「どこに行くんだ?」

「そ、それは……、着いてからのお楽しみですっ!」

「ふっ……、はいはい」


 今はこいつに合わせてやるか。


「ムッ……、その『仕方なく』みたいな顔はなんだー!」

「いや、別に?」

「その含みをもたせた笑い方が腹立つぅー……」

「ふっ……」

「ぬにゃー! 子どものクセにムカつくー!」


 俺の手を掴むアイシャが思いっきり握り締めてくる。だが、そこまで痛くはない。


 おっさんだった時に比べれば、女の子とご飯なんて……こんなご褒美は中々ない。


 歓楽街のお姉ちゃん達しか相手にしてくれなかったし、これはこれでアリだな。


「それで、どこに行くんだ?」

「ひぃーみぃーつぅーでーすーっ!」

「あいよ……」


 石畳の町をアイシャに手を引かれながら歩いていく。


 道具屋に武器屋、質屋などなど、色々な店が露店のようにして並んでいる。


 軽装の獣人にマントを羽織ったエルフ、若い人間にドワーフと、多種多様な冒険者が入り乱れる。


「お、アイシャじゃんかー!」


 前から声をかけてきたのは、アイシャと同じ獣人族の女性だった。


 茶色の髪はアイシャと同じだがショートヘア。半袖に短パンと、なんとも活発そうな獣人だ。


 お、胸のサイズはアイシャとは天と地の差だな。


「あ、お姉ちゃん……」


 気まずそうなアイシャの声。


 お姉ちゃん?


「ほぉー、あのアイシャが男の子と手を繋いで歩くなんてね~」


 にまにまとやらしい笑みで俺とアイシャを見つめる女性。


「こ、これは……その……べ、別にそういうのじゃないから!」


 必死に言い訳されると余計に疑ってしまうというのは、種族間が違ってもあることで……。


「へぇ~、今から二人でこれ?」


 女性は指先で穴を作り、その中に指を出し入れし始めた。


 このド直球にアイシャの頭から湯気が立ち上る。


「ばっ……ばぁーか! お姉ちゃんのばぁーか!」

「照れるということはやっぱり……にししっ」

「そんなんじゃないもん! そんなことしないもん!」


 大声で反撃するアイシャ。


 一方、アイシャの姉は余裕の表情を浮かべて腕を組んでいた。


 胸はアイシャとは違ってたわわに育ち、腕の中で揺られている。


「ふふーん」


 俺の前に立ち、にんまりとするアイシャの姉。


「な、なんだ?」

「中々かわいい子じゃーん。アイシャがそういうのじゃないって言うなら、お姉さんとする?」

「え……、するって何を……」

「こういうこと……」


 手を使ってさっきと同じ動きを繰り返すアイシャの姉。


「……ごくり」


 むしろありがたいんだが……。


「い、いいのか?」

「いいよー、お姉さんも今フリーだからねー♪」

「なー! お姉ちゃん、シュヴァルツ君から離れてー!」

「えー、両想いなんだよ? 二人とも合意の上なら――――」

「ダーメーでーすーっ! シュヴァルツ君はまだ子どもなの! からかわないでよね!」


 俺と彼女との間にアイシャが必死に割り込んできた。


「へぇ~、もしかして~……」


 彼女はジロジロと、薄い服装のアイシャを舐め回すように上から下まで見つめる。


「な、なによっ……!」

「アイシャも、もしかして誘ってたの~?」

「なっ……⁉」


 アイシャの肩がビクッと上がり、耳が空に向かってピンと立った。


「へぇ~、その反応は図星かな~」

「なっ……なにゃっ……なんっ……!」


 姉にたじたじのアイシャが固まってしまった。


「だってさー、そんな布切れを巻いただけみたいな恰好で町の中を、そても男の子の手を引いて歩くなんてさ~、えっちぃことする気満々なんじゃないの~?」

「ち、ちがうもん! アイギスお姉ちゃんみたいに変態じゃないもん!」


 露店の並ぶ町の中で、アイシャの声が響き渡る。


 当然、周りの冒険者たちや店主がこちらに振り向くわけで……。


「――――変態?」

「――――おい、あの獣人可愛くないか?」

「――――さっき、手でこんな動きしてたぞ」


「「「「ゴクリ……」」」」


 早くこの場から離れたい……。


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カクヨムの方が先に進んでいます!

冒険者歴二十年のおっさん、モンスターに逆行魔法を使われ青年となり、まだ見ぬダンジョンの最高層へ、人生二度目の冒険を始める

https://kakuyomu.jp/works/1177354054974837773
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[良い点] 34,35/35 ・うあー、泣かしたー。そしてなんだこにょ雰囲気わぁ [気になる点] オッサンだ。ほんと中身がオッサンだ
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